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作:
snow_pocket
「お~い」、 「お~い」
誰かが外で叫ぶ声が聞こえる。夏の午後、蒸し暑さが少し和らいできた午後の時。すこしうつろうつろしていた僕の耳に届いた、その声で目が覚めた。『かっちゃんか・・・?』机の前の窓を開けると、短パンにランニング姿のかっちゃんが道路の端に立ってこちらを見ていた。
「かっちゃんか?」
「そうや、何してたん」
「本読んでたら、ちょっと眠ってたんや」
「トンちゃん、来ないか~」
「ちょっとまって。今行くから・・・」
急いで外へ出たぼくは、かっちゃんと同じランニングと短パン姿。
二人で、浅間(せんげん)さんへ行こうという事になった。浅間さんは、富士山本宮浅間大社とか言う、たいそうな名前があるのだが、ぼくらはみんな(いや大人たちも)親しみを込めて浅間さん と、呼んでいた。
「おかあちゃん、かっちゃんと浅間さん行って来るは・・・」
「夕飯までには、ちゃんと帰ってくるんだよ」
「うん、わかっとる」
返事もそこそこに、かっちゃんと二人浅間さんへの坂道を駆け降りる。
「なあ、お金持っとる?」
「う~ん、20円かな」
「おれは15円かな」
「ますのえさくらいなら買えるだら~」
15分くらいで、浅間さんへの坂道を下り終えた。坂をくだりきった右側に、浅間さんの “湧く玉池” はあった。富士山からの湧き水が溶岩台地の下を通り抜け、ふもとにあるこの池の奥から湧き出ている。その名の通りの沸く玉池なのである。
「おばさん、マスのえさくれる・・・」
「15円だよ」
「はい、15円」
かっちゃんとぼくはマスのえさを持って池の奥のほうへ歩いた。池の奥の方が、池の水面ぎりぎりからえさをあげられて、えさを取りに来るマスに触われるからだ。
「さあ、あげよう」
「うん」
えさを水面に投げると、どこからとも無くマスの姿が現われ、水面に波紋を起こしながらえさを食べたと思ったら、その姿をくるりと反転させ、また水の中に姿を隠してしまう。でも、少し大目にえさを撒き、水中に手を入れていると、マスの体を触れるのだ。
「うわ~」
「グニュリってしたぞ・・・」
「気持ちわりい~」
そんなことを言いながら、池の中にえさを入れては手を突っ込んで、あっという間にえさは無くなってしまった。
「帰ろうか・・・」
「うん、帰ろう」
池を後にして、家に帰る道は急な上り坂だ。正面には夕陽をあびた富士山が、で~んと居座っている。
「富士山でけーなー」かっちゃんが言う。
「うん、でけーなー」ぼくが言う。
20分ほど坂道を富士山に向かって登ると、やがてかっちゃんちに着いた。ぼくのうちはそのすぐ向こうだ。
「おもしろかったな~」
「うん、おもしろかった」
「じゃーなー」
「じゃー」
かっちゃんと分かれた僕は、三軒向こうの我が家に足を向けた。
「母ちゃんただいま・・・」
「ますにえさやってきたぞ」
「たのしかった?」
「たのしかった」
「もうすぐ夕飯だからね」
マキの燃える匂いと、ごはんの炊ける匂いが交じり合って、お腹がくすぐられるような気がした。貧しい我が家で、何かあると父ちゃんはすぐ怒るけれど、この匂いだけはとても好きで、素敵な感じがした。
「母ちゃん、腹減った」
---------------------------- 完 ----------------------------
※この小説(ノベル)"かっちゃん"の著作権はsnow_pocketさんに属します。
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snow_pocketさん、こんばんは!
思いがけなく、作品を見つけて嬉しいです(^^
故郷での幼馴染のかっちゃん でしょうか・・・
これから、チョット忙しくなったので、、後ほどユックリと拝見しますね。
楽しみです!
私のマイフレさんのライトノベル、雪月さんの作品も楽しいですよ。
ご紹介まで・・・。
実希さん、こんばんは。
あ~、見つかっちゃった?でも見つかってうれしい、かな。実希さん推奨の雪月さんのライトノベルさっき第一話だけですが、読んできました。いいですね。すこし病み付きになりそうです。でも、ライトノベル読み出すと(実は書く方はもっと?)、詩の方のコメント時間が足りなくなりそうでちょっと恐い気も。

実はsnow_pocketさんがライトノベルでデビューすると思っていたので嬉しいです^^
snow_pocketさんらしい日常を感じることができる作品だと思います。
子供たちも生き生きとしていて、読んでいて微笑ましくなりました^^
「母ちゃん、腹減った」、で締めるところがいいですね!
トドさん、おはようございます。
コメントありがとうございました。
投稿して一晩経って、もう一度読み返そうと開いたら、トドさんからのコメントがはいっていてありがたかったです。ちょっとまだ誤字があったりですね。ぼく個人としてはライトノベルデビューなんて、昨日までまったく考えていませんでした。なんとなく詩を考えていたら、子供の頃の事思い出したりしていて、最初は詩のつもりで書き始めたんですが、ちょっと長くなりそのまま “ライトノベル” となってしまいました。やはり、詩と違って時間がかかるので、きっとこっちにあまり入り込むと詩の方がおろそかになりそうで、少し迷っています。

こんにちは。
私もこちらに投稿したきっかけは「作っていたら長くなってしまった」からでした^^; 今のところ詩(?)の延長として考えています。
こちらは創りあげるまでが、大変です(でした)から、年に数回くらいが丁度いいのかもしれませんね。
楽しみながら綴れるといいですね!^^
こんにちは
snow_pocketさんのライトノベル、ようやく(いまさらでしょうか?)読みに参りました。
なんかいいですね、ノンフィクションとして語られたこのストーリー。
ほのぼのしてしまいます。
何か特別なことではなく、ごく日常なかで形作られたものだからですね。
フナのえさやりをして富士山見て、二人がおもしろかったといって別れるシーンが素朴でとても好きです。
おはようございます。
フレンド申請有難うございました。
宜しくお願い致します。
いいですね~!
とても素敵な所にお住まいだったのですね。
風景が目に見えるようです。
其れと お国言葉ってとても好きなんですよね。
柔らかくて 自然で その場所場所の 風習や特徴が
素直に描かれているような気がして。
子供の頃 近所のともだちと野山を駆け回っていた頃を
思い出しました。
こんばんは。
素朴なやり取り、あたたかいご飯の炊ける匂い…どこか懐かしい気持ちにさせてくれるお話でした。
snow pocketさんの子供の頃の風景ですか?
ほのぼのとした素敵な作品ですね。
雪月さん、 miwa さん、ひよくさん、 “かっちゃん” を読んでいただいてありがとうございました。また、雪月さん、 miwa さん、気付くのが送れ申し訳ありませんでした。きっと、子供の頃は誰しも同じなんでしょうね。男の子でも女の子でも。忘れられない思い出が、こころのどこかに残っているんでしょうね。
※ここでは2012年5月21日のデイリー表示回数ランキングを表示しています。