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ロックンロール (完結作品)

作: ぶるーりぃ

 アンプから漏れ出す音。
 スピーカーから流れるけたたましい声。
 煙草を吸いながら、俺はモノクロの目でそいつらを眺める。
 孤独を歌う、仮初を気取ったクソ野郎。消えちまえ。
 格好つけて独りを気取って楽しいかよ。
 忌々しいぜ、全くよ。似合わない歌歌ってんじゃねぇよ。
 全くよ、「僕は一人」なんて歌ってる時点でオメーは独りじゃねぇんだよ。
 しかもその次に何でラブソング歌ってンだよ?
 オメー、独りじゃねぇのかよ。
 あーイライラするぜ、全くよ。
 外に出て、思いっきり缶を蹴り飛ばす。
 やべ、缶がやばそうな禿のおっさんに命中しやがった。案の定、血相を変えておっさんは俺を睨みつける。
 ぶっさいくな面だなぁ。
 ずんずんと肩を怒らせて向かってくるおっさんから、何故だか逃げる気が起きなかった。
 殴られてみるのも面白いかも知れない。
 あ、俺ってMなんですか?

 ズキズキと痛む腹を押さえて、その場に這い蹲った。
 吐き気が絶え間なく襲ってきて、惨めにゲェゲェと吐く。意外に気持ちがいい。
 少なくとも、あのヘッタクソな自称ロックバンドのクソッタレな歌を聴くよりは何倍も爽快だぜ。
 おっさんは散々俺を殴って満足したのか、去っていこうとする。
 あー待てよ。そう言おうとしたけど、何か白けた。
 血の味がして、痰をペッと路上に吐き捨てる。ミスって自分の手にかけちまった。汚ぇなぁ、全く。
 どろりとした液体が手の甲を流れて地面に辿り着く。変な光景だぜ。
 俺は立ち上がると、フラフラの足をパンパンと叩く。叩くと同時に痛みがこみ上げてきて、思わず呻いちまった。
 こんな様、ミキちゃんにはとてもじゃねぇけど、見せらんねぇ。
 ミキちゃん、19歳。いちおー俺の彼女ね。つってもまぁ、なる予定なんだけど。
 ヒュウヒュウと冷たい風に撫でられると、痛みが倍増するって今頃になって気付いた。あー痛い痛い。
 何だかムカつくからお月様を大声で罵ってやる。あーすっきりした。
 すっきりしたのはいいんだけどよ、何でミキちゃんが知らねぇ男と歩いてんだ?
 しかも、すんげー楽しそうにしちゃって。何、あの笑顔。
 あんな笑顔、俺見たことないぜ?
 あーそういうことね。
「この★★★★が!!!くたばっちまえ!!!」
 俺は背中を向けるおっさんを思いっきり蹴飛ばした。
 あー確実に殺されるな、こりゃ。
 だって、おっさんの顔さっきよりやべーんだもん。まぁ、いいや。とことんやってくれよな。

 テレビからは相変わらずムシャクシャするようなニュースが流れてやがる。
 政治家のメール疑惑、会社社長の粉飾決算、児童虐待、殺人事件、バカ面ゲーノー人のスキャンダルに、いなくなったアザラシ情報ときた。 レッサーパンダまで立っちまう始末。
 最近は子供が狂ってんなぁ。
 世の中もおかしくなったもんだぜ。
 俺がガキの頃なんざ、みんな鼻たらして外を駆け回ってたもんなんだぜ。
 今時のガキは虫の捕り方も知らねぇんじゃねぇの?
 折れた肋骨が痛むのを我慢しながら、お茶を飲む。うーん、気分がいいぜ。
 俺ってさ、ロックンローラーなんだぜ。
 どうしようもないくらい、ロックしてるって思わねぇ?
 どこがって?
 全てがに決まってんだろ。
 シド・ヴィシャスだの、ジョー・ストラマーだの、ジョン・レノンだの、カート・コバーンだの、矢沢永吉だの目じゃないぜ。
 あ、でも俺は俺よりロックンローラーじゃないこいつらを死ぬほど愛してるんだ。
 まぁ、一番ロックしててカッコイイのは俺なんだけどよ。そこんとこ間違えんじゃねーよ。
 あぁ、全身痛いなチクショウ、あのオヤジちったぁ手加減しろよ。
 そうそう、ミキちゃんは俺のこと嫌いなんだってさ。
 クソッタレ。

※この小説(ノベル)"ロックンロール"の著作権はぶるーりぃさんに属します。

この小説(ノベル)の評価
評価項目評価数
キャッチー 1
おもしろい 2
合計 3
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この小説(ノベル)へのコメント (5件)

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'09年11月7日 01:01

この小説(ノベル)を評価しました:おもしろい

一人称で乱雑に書きなぐっているような勢いと、しっかりした話の流れが両立してあったので、短かったですが面白かったです。

具体的に言うと、
「現実には登場しないミキちゃん」が「目の前で殴ったり蹴ったりしてくるおっさん」並みに話の流れを引っ張ってるところとか、
「吐いて逆に爽快」なところとか。

最後に一つ。
あ、俺ってMなんですか?
で思わず笑ってしまいました。
お前散々人のことけちょんけちょんに言っといてMかよ、みたいな。

Techthrone

'09年11月7日 20:50

この小説(ノベル)を評価しました:キャッチー

殴られてみるのも面白いかも知れない。
 あ、俺ってMなんですか?

に対して
「俺はSですが何か?」と言ってしまった俺が一名w

まあ感想は、結構主人公の思想などがモロ台詞に出ているので
そのキャラ設定を活かせる作品になっていたかなと思います

バランスの取れた良い作品だと思いましたよ

まぁ言うなれば、「これ!」という主張がイマイチ解らなかったです

僕の作品もよろしくお願いします!

ぶるーりぃ

'09年11月8日 00:33

> 虹風さん
これ結構、書きなぐってるだけだったりしますw
けれどそれじゃ人に読ませるものにはそぐわないので、こうなってます。
あまり小説に関してだらだら中身を書くのもあれかな、と思っているので御礼に留めておきますね。
ただ、ミキちゃんは確固たる実在人物で、彼女だけは実話ですw
ありがとうございましたー。

> Teckthroneさん
これは、タイトルに全てが込められています。
キャラクターも思想も行動も何もかも。
汲み取っていただければ幸いです。
ありがとうございましたー。

*tak

'09年12月3日 00:25

この小説(ノベル)を評価しました:おもしろい

パンクな文章に惹かれて
つい全部読んでしまいました

おもしろいの一言です
ではでは☆

ぶるーりぃ

'09年12月7日 15:21

> taKyaさん
ありがとうございます。
面白いと言っていただけて何よりです。

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