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友達のお父さんがカミソリ持っててアイデンティティを体験したのだそうだ (完結作品)

作: merongree

彼女の血を注射で血管のなかへ入れると痛みがなくなる
という話を彼女から聞かされてすぐに私は信じた
何となく聡明そうに見えるのと悲しそうに見えるのと
つねに生理のときみたいに顔がどこか青白く見えているの
そんな事が私にとっての確信の根拠だった エリーに、
何かでも酷いことを訊いてみたくなった
「タラであることって普段意識するもの?」「いや別にしないけど。」ふーん、って
「じゃあどんな時?どんな時にああやっぱりなあって思うの?」とたずねた
その星のなかでタラにたいする雇用の条件がほかの星の出身のひとに比べてかなり
緩くなっているのを新聞で見たときかなーといからえらい具体的ですねって思った
いやなんかそうなるとその星は戦争すると言われてるんだよ、と言われてどきりとした
ようするにタラの血が必要になるので生活が困っているタラが移住してきたりする
戦争の準備としてタラの血を確保できるようにうちの星は暮らしやすいですよと宣伝
しているみたいなもの みな分かっててタラの方も 生活に困りながらなびいていくと
「でもその保証を受けるためにはタラであることをオープンにしないといけないから
 面倒くさいし、まあ戦争に行きますってサインしたみたいなものになるよね。」とタラ
じゃなくてタラのエリー
「実際そういう日が来るの?」「そら、その来ないんじゃないか、っていう思いがきみらが中世にあると言われる所以だよwwww」と笑われた「来る、戦う日がくることは別に禁忌を破るようなことじゃない、天候の変化みたいにごく自然に私らの生活に訪れて来る。」と言った 戦争が当たり前、って何か宇宙は嫌なところだなあーと思ったが それでいていちいち彼らの戦いの話しなんか聞いてると 驚くほどスポーティーに争うということをやってのけているような気がしてくる 激情だったり憎悪だったり 真に私らが中世的とみなされている理由は 彼らが既に排除してしまったこれらの感情によって掴みあいをしているというところなのじゃないか 我々の動機がとても中世的でみにくいと言われているのだろうなという気がした
 そうした発達した文明の持ち主であろうと何だか 痛みなんていうものが怖いのかと そのことをおおっぴらにしてタラを確保しようとして 彼女たちを労働条件で優遇したりする そのことが何か不思議だなあと感じた 「痛いことはそれはそれであるとしてもさああー」と私、「痛いのが怖い、っていうのを明らかにすることは恥ずかしくないの??」「恥ずかしいって、何?」って言われた どうしようと思った 何かエリーとの話がうまく繋がらないとき 同じ感情がないのかなーと思うことは沢山あったけどこれの時 ああこういう事かあと思ったものだ 忌避してることはたくさんあるみたいなんだけれど…… まあ少なくとも痛いことが怖いことを明らかにすることは大多数の宇宙人にとって恥ずかしいことじゃない むしろ積極的に痛み止めを確保して戦争するほうがけんめいでスマート 何だかなあと思った……
 で、一番それを意識したのはどんな時、の話に戻すと「あのねえ、友達ん家に泊まりに行った時。」と言った 友達ん家にお泊りって宇宙人にもあるんだ……と変なところで親しみを感じた 「そこん家のお父さんがカミソリもって布団めくってた。」というから、一瞬で納得してすごく悲しくなった
 つまりこう言うことで 彼女の友達のお父さん すでにかなり病気だったみたい 生きているのが辛いぐらいに身体じゅう痛くって そしたら娘の友達がタラなんだと分かった「なんかわりとフツーにどこでも言ってたから、その子んちのお父さんが知ってるってのも変ではなかった。」とエリー でも彼女の親とか親戚とかは 幼い彼女が危険な目にあうのを恐れてそういうの隠せって言いそうなもんだけれど、と地球人のそれも日本人の、女としての、配慮を出してきてそう言ったんだけど「何が起こっても受け入れろ、それがタラであるという事だから、目を見開いてぜんぶみろ、ぜんぶ赦せ、」それがタラだっていうことをお前が選択して生まれてきたっていうことの意味なんだよ、みたいなことはずっと言われてたし、それに賛同してたの子供のときから、と彼女は言った……
 そしたら寝ているときに布団(寝るときに体温が奪われないようにするっていうのは宇宙人でもおんなじらしい ていうか大体こっちのやり方がオリジナルで、きみらが猿に近い生き物からテコ入れされた辺りから教え込んだんだよこっちの生活様式を、ってのがエリーの言)を足首から剥いでいる気配がして 彼女はあれっと感じたのだそうだ それでまだ浅い眠りだったからそっちを見たらすごく申し訳なさそうに でも一瞬目をあげた彼女にたいする敵意を目の中に光らせた友達のお父さん そのひとがカミソリと計量カップを持ってたたずんでた「じゅんびいーなーとか思ったよ、」と彼女 「既にメモリのついたカップとか持ってたから、あああれに私の血が入るんだなーって、黙ってそのひとがすることを見て居ようと思った。」と彼女 痛くないの…?「それって痛くないの?」とつい訊いた「え?もしかして?」「いやだから、タラのひとってカミソリで切られても痛くないの、血が出るときに」ああーとエリーは何か大袈裟なリアクションで頭をかかえてうつむき「それねー宇宙にいるときに500万回ぐらい聞かれたの。」痛いよフツーに、と彼女は言った「むしろ、我々の血を呑み込んだひとがどのぐらい痛くないのか、それを我々じしんは享受できない。我々どうしで血を輸血とかしあっても、その効果は生まれないから、我々にとってのタラはいないみたい。」みたい、ってのに宇宙を感じた 彼女たちは聡明で その特別な性質を持っていて追いかけ回される立場にありながら 己らを唯一絶対のとくべつな種族とは自分らで思わず もしかしたらほかに自分らに対して同じ性質を発揮する星のひとがいるんじゃないか そういう可能性を籠めて私たちにとってのタラはいないみたいと言っている 自分らを余りにも 余りにも それがいいのかそれを全員で是認できるのか、と危険に思われるぐらいに自らを 相対的にとらえているひとたちだった 「それでそのお父さん、どうした、殺した?」「え?」「私なら、勝手に、布団はぐって子供であるあなたの足から血とろうとみがまえてたなんて、腹が立ちすぎてピストルか何かで撃ち殺してやりたい気分だよ、どうした?そいつ?」「いや何もしなかったよ、」と彼女 「エリーは怒らなかったの?」「いや、だから、あのね、」と何か彼女は狼狽したような手つきで言った
「そのお父さん、止めちゃったの、私を傷つけるのを。」「ああ、」そうなのか、と思った「それでカミソリを私の目の前でおいて、わるかった、って何もしてないのに謝ってた。」あと、自分の子供には言わないで欲しい、って懇願されたので、何も言いませんっていう風に話したよ、と彼女は言った
「でもすこしざんねんだったりしたのね。」と彼女がいうからどうして、と言ったらうーん、と彼女「何かこれに耐えられたら、あとあとこのときの辛さがクッションみたいなものに代わって、私の心臓めがけてとんでくるピストルの弾をみんな呑み込んでくれるだろうな、大事な記憶に代わるだろうな、って布団めくられたところからそのお父さんの顔見た時、『私はこの記憶を好きになれる』っていうふうに感じたのよ。」とめずらしく彼女が 自分の心から出ているらしい虹色にかがやいているような記憶をべらべらと まるで植物がしおれるみたいな速やかな速度で話した 「……」「べつにね、友達のお父さんを犠牲にしなくても良かったんだけれども、」と彼女 「いつか、タラである以上はそんな風に私の血を誰かが不意打ちで盗みに来る、そんなことは知れ切ったことで理性では分かっていたし赦そうとも思ってた、でも誰かっていうのは問題でぜんぜん余りにも共感できないような相手だとしたらやっぱり、私そのひとのことを撃ち殺してただろうなと思うの。でもあのお父さんの黄ばんだような、病気で衰えていて、かつ私にいっしゅん敵意を見せたり、娘のことをわざわざ言ったりするぐらい全身で私の血を望んでいることを明らかにしたひとだったら、何かもうねえプロポーズされてるぐらいに、嬉しいと言ったらおかしいのかもしれないけれど、『この記憶なら赦せる』って感じた。あの経験はしょうじきしたかった。だから何も言いません、って辛い気がしたけど二度言ったの。血を取られるのど同じぐらい嫌な手ざわりのある記憶を、自分に痕跡として残すことがあのとき必要だったのね、」と彼女は言った
 それでそのあとどうしたの、って言ったらほどなくそのお父さん死んじゃったって言って やっぱり痛く苦しい思いをさんざんした後だったみたいだからって 彼女は小さいながらに気持ちをしぼって 浴槽で血を出して瓶に詰めてお葬式(宇宙にもあるらしい 特に肉体を持っている星のひとたちの場合はとても盛大だとか)のときに持って行こうとしたんだけど 親に見つかって止められた、という彼女 「もしそうしたいのなら、あなたが生きていないと意味がないのよ」って言われたって ああー言い事いうな宇宙人のおかーさん(お父さんとお母さんがいっしょくたになってるけど見た目は女性らしい)と、思ったんだけど微妙にちがった「たぶん、あのお父さんはもう知ってたんだと思うけどね、生きてる私らの身体からとって、せいぜい1時間のうちに注射して血管に入れないと、意味がないものなんだって。」と彼女 だから瓶にいれて持ち歩いても、時間が経ってしまったら使い物にならないから、その血を瓶にいれていても誰かのために使えるなんていう事はなく、私が、助けたいひとの側にいないと駄目なんだなあーってそのときに知らされたのって彼女は言った ていうか自分で自分の身体を傷つけることを 彼女の親は止めなかったのかって思ったけど「本当にね1時間以内とか、時間の制約があるって知らなかったからね。」と彼女は知識的なことを音楽のように口ずさむばかりで 痛い痛いといいながらお風呂場で自分の足を傷つけたとき 親が入って来たとき 必ずあるんだろう悲鳴とか悲しみ 恥ずかしさではないけれど絶対に見られたくないと思うような動揺 そういうものがまるでかけていて「どうしてそんなに簡単に、いや重大な決意があったにしても、自分の身体を傷つけてしまえるの、しかもそれは誰にも見せたらいけないことだよ、」と自分でも理屈がとおらないと思うような動揺で彼女の肩をつかんでゆすぶった 彼女は「え?え?」とほんとうに理解できない顔でみてきた その目に銃痕みたいに風が吹きぬけている隙間のようなものがありやっぱり宇宙人とは戦えないと思った ピストルで撃っても何にも持って見返してくれない こんな半透明な目を敵にするのは余りにも苦しすぎる

※この小説(ノベル)"友達のお父さんがカミソリ持っててアイデンティティを体験したのだそうだ"の著作権はmerongreeさんに属します。

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