自作の歌詞・詩(ポエム)・小説(ノベル)等のクリエイティブ系コミュニティサイト

ようこそ ゲスト さん

投稿した小説(ノベル)にコメントがもらえるコミュニティ

小説(ノベル)

[広告]

隠れていなくても隠れているふりをする鬼の為のエチケット (完結作品)

作: merongree


浩明が見た、と言いだしたもの、また私もそれを見たのだと彼が確信しているもの

断片的に話されただけでも、それは私がずっと見ていたものとほぼ同じだろうという
ことが何となく推察された
その全体像に対する彼の反応が私のそれと似ていたからだ 「何だろうねあれ可哀そうだね」みたいな感じのするもの
昼間やっている一昔前のハリウッド映画に出て来るような 銃やらUFOやらが飛び交う
男性的なシンボルみたいなものがあちこちに出て来る 少しばからしいものではなかった
それよりももっと陰鬱な感じのする 夜ゆうごはんを食べたあととかに流れている
経済的に困窮している外国のなかにある少数民族の暮らし
あれに密着してるドキュメンタリーのような真摯さと何と言うのか暗さのようなものが
その自分のものと思われない映像のどこにも影のように沁みついていた
「発達している」とエリーが自慢にするわりには 実際私の心の目でみるその映像
おそらく彼女の故郷と思われるその星の光景は素敵なものじゃなかった
どの建物もまるでドームのように大きなものであって集団で生活していて
どこの部屋にも天窓のように天井に穴が開いていて 雨は降らないのだろうかと思う
それから食べ物もまるで均等に配分されていることが分かり 色つやのないケーキみたいなものがまるで定規で計ったみたいに鋭利に切り取られてお皿に乗せられていた
食べたら塩味で顔がくしゃくしゃにありそうなどぎつい紅色をした花がいちりん
曇った牛乳瓶みたいなものの中に指し込まれてあり
エリーの潔癖症みたな性格からしてあの瓶が曇っているということはいいのだろうかと
変にこまかい心配などをしたりもしたのだったが
黄砂みたいなものに絶えず見舞われている社会なのだと
あるとき勝手に合点してしまってからエリーの生活における態度の細かい事まで何か
不思議と疑問に思わなくなってしまった
エリーの性格における「地球人と同じに見られるほど未発達なものが己の中にあるなんて耐えられない」というあの態度と「地球人は普通やらないと言われるようなミスを犯して目立つなんていう不始末は絶対にしたくない」
というあの頑なさ あれは、エリーに固有の性格というよりも、あの黄砂に見舞われている共同生活のなかで、総てが均等で総てが統制され、偶然の痛みなんていうものはなく総て薬によって出産すら計画的に排泄するみたに行っている、あの社会において全員が肌着のように自然に身につけているものじゃないかとも思われた

という推察もあくまで、その断片的に頭に浮かんでくる謎の遊牧民の生活ドキュメントのような映像が、彼女の故郷のものであるということが確定しないと考えられないことではあったのだが
私は自分の頭のなかで起こっていることだけに、自分の妄想が混じっているのではないかと絶えず不安になるのだったが、エリーがそれは自分のところの記憶であるということをごくあっさりと初期の頃に私に通達した 「私が宇宙人であるということをあなたがまだ疑っているみたいだったから」というのがその理由で、「こちらが身につけた言葉をあなたがどの程度理解できるのか疑わしかったので…」とわりとしつれいなかつ正直な根拠によって、

生い立ちとか星であったことなどを言葉で話してくるより、実際の星にある行為で分からせたほうがいいだろうという判断が彼女のほうであったらしく、
いきなり予告もなしに頭押さえつけられて噛みつかれたことがあった
彼女いわく、「唇や舌をふるわせて空気を振動させ、相手の耳の奥にある鼓膜を刺激してその信号を脳みそに伝達してうんぬんというデリケートな方法を取る必要がなかった。私たちのコミュニケーションでは、あなたがたが目だけでコミュニケーションをするみたいに(何のことやら不明)、
耳を使わないで行うコミュニケーションも一般的にある。多分、私の発音やらあなたの先入観などから、私が言葉をつかって耳に聴かせるように話したとしても、あなたの脳みそは正確にそれの言い表しているものを再生出来ないと踏んだ。だから一時的に脳みそを借りて、私の脳が再生しているのと同じパターンのことをやらせた。間にあるプロセスはやや暴力的だけれど、別に暴力そのものが目的なわけじゃない。それに自分があくまで地球人と違うということを知らせるためには、宇宙人らしい行為を示してみせることも有効だろうと思った。そのあとであなたが私を遠ざけるかどうかはあなた自身の問題」

とか、腹の立つ外国人みたいな説明をしてくれた。そのときは言葉で。彼女において行われた試験で、私はそのぐらいなら彼女の言わんとしていることを、正確に脳みそと耳だけを使っても再生できると思われたらしかった。光栄と思うべきなのだろうけれど、こんなんだから宇宙人ってみんなホラーだったりテリブルだったりするイメージを付与されているのじゃないかと思われた。理解しないのは私たちが未発達なせい、という風に宇宙では決めつけられているらしいが、それにしても彼らのアプローチもだいぶがさつなように思われた。

「宇宙ではそもそも地球人なんて、程度が低すぎて何をしても可哀そうとか同情の気持ちが沸くなんて言う風には見られていない」と、繰り返し聞いた彼女の言葉を思い出した。彼女じしん、私と生活しているうちに少しは地球人に対していっていの譲歩というか、思いやりに似たものを示してくれるようになったという気がしなくもないのだけれど、初めは本当にそんな感じだった。脳みそを嬲るのにどうして噛みつく必要があるのかについては、肉体的なショックを一時的に浴びせかけないと、脳みその周りにかかっているガードのようなものが取れないからということだった。そうしてこのガードの堅さだけはどういう訳だか先進的な宇宙人並みであって、「うらやましいぐらい何者かの手で守られている」と、エリーはそんな風に私を攻撃してみての経験から、地球人一般を総括した。

浩明は頭が良かったと再三言ったと思うのだけれど、
どうしてか彼は、エリーが宇宙人であるということも(彼なりに何らかの尻尾を掴んでいたことは明白だったけれど)、攻撃されたことでエリーが意図してかあるいはそうでないかは私にはよく分からなかったが(ともかく言葉でもべらべらあのときは何か呟いていたようだし)私にやったあれのような、脳みそをじかに掌握して記憶を伝達するということを
されたのだということも瞬時に理解していたし、あまつさえその映像に出て来る布をぐるぐると巻いている登場人物が、彼女にとって親しい友達であろうと何となく雰囲気から理解し、
またその友達からいきなり棒みたいなもので殴りつけられる、という光景のこともまた、
エリーじしんが確かに受けた経験の映像だろうというところまで踏んでかつ
共同生活をしている私にはその記憶を既に与えているだろうということを推察してから
「お前彼女に殴られたことある?」
と、聞いてきたのだった
浩明の頭の回転が速くなるのは 私と同じような性質かもしれないけれど
こんな風に修羅場というか自分自身に危険が及ぶ機会のとき
自分もまた宇宙人でどこか別の星で一生を全うしようとしていて
その一生で身につけたことを引きずっているのかもしれないと考えることを
星ぶる、と私たちの世代から出来た言葉で言ったのだけれど
まさに浩明と私との共有点について考えるとき私は星的な考えに浸りがちだった
私たちの居た星もやっぱり似たような顛末で爆発してしまったのじゃないか?
だからその生きなおしをしているがためにこんな風にお互いを危険に晒すとき
自分たちに第三の危機が迫っていることをふと感じてお互いに親しいかのように
お互いの腹を探ろうとしてしまうのじゃないか?自分たちが本当に親密だったか、
こういう共通の危機を迎えないと改めて考えたり理解できたりしない事だから……

浩明はエリーの経験している光景のなかでも、かなりつらそうなものをみたらしく
またそのことに対して彼なりの正義感の昂揚があるらしいことを私は受話越しに感じた
彼は可哀そうなものであれば幾らでも愛することが出来た
私たち母子としても浩明は可哀そうにみえたのだったが 浩明はそれよりも尚更だった
私の母などは浩明から向けられる愛にたいして私よりも一層、憐憫の情みたいなものを
はっきりと示しているほどだったし
私からしたら浩明のあの無償の愛、奉仕への熱情みたいなものが、ある一定の年齢以上の
女性になると憐憫の対象となってしまうということに女というものの悲しさを感じた
浩明を恋愛対象として好きかどうかって億千万回訊かれたことではあったけれど
精神的に私と浩明は同性だったとつねに感じていた 同性愛として愛したかもしれなかったが それは恋に落ちるというようなジャンプをするものじゃなく、性別のように予め選択され与えられているものを少しずつ理解していく、というような過程を踏むものだった
浩明からも私は何となくそんなものだっただろうと信じる

でも私と近いはずのエリーだけれど、エリーは彼にとってはそんなものじゃなかった
(エリーは性別という、あの何しか持っていないという損傷がなかった。両性だったんだけれども)
浩明はほとんど一目ぼれみたいな態度でエリーに接近したし そのあとで小細工したり
はてにはいきなり殴りつけるほどに憎悪していたみたいだけれど
このときの謝らなくちゃコールのときには惜しみない彼女への思いやりとかいたわり
そんなものが溢れていて このとき勢い込んで彼女を愛そうとしているようにみえた

余りにも哀れな前歴を持っているひとが 恐ろしいことや残酷なこと
刑罰のあるような過ちを犯すときに たまにはそのために一層好きになるという
ことが第三者の視点からするとあるのだ
まして生活にたいする侵略というのは、浩明の持ってる前歴からしてもいちばん
彼にとって赦しがたい罪であったりしたので
エリーをいきなり殴るところから始まりそれで彼女の恐ろしくつらい過去を
(といっても私がみたのは家の形やらバターたっぷりにみえるケーキやら花瓶やら、ちょっと見外国の日常風景と思われるぐらいに大人しいものばかりだったのけれど)
経験するみたいに感知したことで彼女への憎悪がそのまま彼女を救済する願望みたいなものに変質してしまっていた
でも受話器越しに流れて来る彼の声からはその変質の愛の手ざわりみたいなものが感じられ
私はそれが浩明のまったき純愛というよりは彼に起こったアクシデントのようにみなして
普通に浩明を心配する気持ちになった

エリーがトイレでごんってどっか壁に身体をぶつける音がした
エリーがこけた??と思って私はつい彼女が転がって来るように身体をドアから離したけど
ドアは相変わらずしまったままでそれから信じがたいことではあったのだけれど
彼女がむせる音が聴こえて来た
むせてる時もたぶん袖口で口を覆ってその音が漏れないように工夫しているらしく
つながった輪みたいなその音のあとでジャーーというけたたましい水音が聴こえた
吐いてる、という言葉がじんわりと嫌な汗みたいに滲んできて 私の頭の中を汚した
日常生活を共にしていても エリーが吐いているなんてのを私は見たことがなく
体調がわるくなるなんていうことも見たことがなかった
だからまずむせているという行為のいびつさに最初の衝撃があった
エリーのあの身体なら 何かの必要があって吐かねばならないものがあったとして
エリーが吐き出そうとしたときにそれを拒んだりしただろうか?
トイレのなかにいて鈍い音で身体を打ちつけたエリーはどうみても 見えなくても
明らかに自分の意図と自分のもっている完璧な身体の機能とのあいだで四苦八苦していた
彼女の七転八倒はだから あのドームみたいな建物 あの均等なケーキ あの血のしたたるような色合いをした牛乳瓶のなかの植物 そんなものを含んでいる彼女の愛している
文明社会が、彼女が産まれて来る以前にすでに完成させていた、その社会の住人のもつ
身体というものが、彼女がいま持っている意志を駄目なものとして却下して 理屈に合わないものとして拒絶しているということが明らかだった
私は地球人が彼女に 同情にも値しない下等な生き物だと言われることに怒ったり
不平を言ったりしたんだけれど
彼女がそんな風に彼女が誇りに思っている文明に反して 拒絶される様はみたくなかった
彼女が他人であればこんなとき どうしてお腹を切り裂いて取り出さないんだとか冷静に
言ったのじゃないかと思われたけど
彼女はなお吐き出そうとして苦しんでいた カシャンという鍵がぶつかる音のあとでずると彼女が身体を便器にもたせかけて咳きこむのが聴こえて来た
静かになったと思ったらあの一億ケタ同士の足し算、と私が形容した、浩明を殴った後で
彼女が浩明のうえでぶつぶつぶつぶつ言っていたあの声
あの星の声が聴こえて来た
それがむせる声の間に聴こえてきて途切れた トイレの水がジャーーとまた流れた
「本当に用を足しているわけじゃないんだよ、」と私はデパートのトイレの横で、まだ開いてない部屋に入りそうになった彼女の袖を引いてささやいた事があった 「ああして水を流すことで、排出している音を隠そうとしているの。排出していることは明らかでも、その音を聴かせないようにするのが、ここの社会で暮らしているマナーなの、女のひとは皆そうする」と何でこんな事説明しないといけないんだと思いながら話した
エリーは自分で口を塞いでいるらしい事が分かった でもときどき吐き出そうとした後でその星の言葉が出ると まるで排尿しているみたいにトイレの水をジャーーと流していた

※この小説(ノベル)"隠れていなくても隠れているふりをする鬼の為のエチケット"の著作権はmerongreeさんに属します。

この小説(ノベル)の評価
評価項目評価数
合計 0
[広告]

この小説(ノベル)のURLとリンクタグ

この小説(ノベル)のURL:
この小説(ノベル)のリンクタグ:

コメントを書く

登録済みのユーザーは ログイン してください。
登録済みでない方は 新規登録 してください。

新規メンバー登録(無料)
第4回みんなのライトノベルコンテスト「しまのわライトノベルコンテスト」
広島で開催!コスプレをはじめとするジャパンカルチャーイベント「コスカレード」
  • 公式サークル みんなの歌詞
  • 公式サークル みんなの詩(ポエム)
  • 公式サークル みんなの小説(ノベル)
  • 公式サークル みんなのイラスト
  • 公式サークル みんなの写真(フォト)

ランキング

※ここでは2018年5月17日のデイリー表示回数ランキングを表示しています。※同順位者が多すぎる場合はすべてを表示しきれない場合があります。

サポートサイト

J@P