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あるひの日曜日 (完結作品)

作: smmode123

あるひの日曜日

僕は今、公園にいる。

おもむろにベンチに座り、周りを見渡してみた。

目の前に広がっているのは、
楽しそうにブランコをこいでいる男の子達や、ジャングルジムに登る者、
母親と共に砂遊びをしている少女がいる。

少女は顔にどろを付け、母親は微笑みながら花柄のハンカチで、それを拭き取っていた。
母親の口元を見ると何かをつぶやいているようだ。

『仕方ないわねぇ~』なんとも好ましい光景だと僕は思った。

みんな幸せそうに感じる。

僕はこの公園で遊んでいる人達を見るのが好きだ。とても心が温まる。

それに、ここへ来ると何かが変わるような気がする。
特に不安や恐れを抱いた時は、訪れることにしている。

僕は今、恋に不安と恐れを抱いている。

5年前から出会った女性がいる。
彼女と出会い、僕は言い様もない雰囲気に惹かれていった。
優しいだけじゃなく、温かさ、寛大さ、時には強くもあり、
特に透明感のある彼女が、今はたまらなく好きだ。

そして時間をかさねていくうちに、お互いの距離が短くなり始めた。

最近彼女を見ていると、以前と比べて態度が少し違うと感じる。
そんな中、僕は告白するべきか、行わないかを悩んでいた。

【恐怖】この言葉が頭をよぎる。
『ふられたらどうしよう?』『実は自分の勘違い!?』

そんな現実は僕にとって、とても耐え難い苦痛だ。






何かこの考えを払拭する方法はないか、頭を抱えながら目を閉じ、うずくまった。





どれくらい時間が経ったのだろう。

いつしか・・・

僕は眠っていた。

ふと我に返り目を開け、辺りを見渡してみた。
そこにはいつもと変わらない、砂遊びをしている親子を見て、僕は安心した。

結局答えは出なかったが、自分の気持ちを整理する為、その様子を見続けた。
そして、眺め続けた僕の目の前を、一枚の桜が突然舞った。

『桜!?』僕はそう思った。

ふと上を見上げると、そこには桜の木があり、注意深く見てみると、
殆ど散りかけているが、桜の花がひそかに咲いている。

【一瞬の美しさ】彼女を例えると、こんなイメージだろうか?
『本当にこの5年間いろいろとあったな』

これをきっかけに、今までの事を振り返ろうと考えた。
『出会った時の彼女はどうだっただろうか?』

そう言えば確か、職場の食堂で彼女を初めて見た時だった。
勤め始めてから実は間もなく、僕は職場の雰囲気をつかむ為、周りを見た時だったかな?
彼女は僕が座っているテーブルの2個手前に座り、昼食をとっていた。
僕から見て、左向かい、少し離れた距離だ。
髪型はポニーテールで髪の長さは肩ぐらい、何故だか僕はじっくり彼女を観察していた。
そんな時、それに気づいた彼女は僕を見る。
僕は『ヤベェ!』と思い、慌てて彼女から目をそらした。彼女も何かを思ったに違いない。
これが僕と彼女の出会いであった。







それから思い返して考えてみる。
『彼女の行動には実はある特徴があったな』

 人見知りするようなところがある。彼女もおそらく勤めて間もないだろう。
 休憩時間になると必ず一人になって、携帯ばかりを見ている。
 僕が仕事中に話したり、いたずらっぽく演出したりしても、あまり感情を表さない。
 当たり障りのない社交事例のような対応で、度が過ぎる為、
 僕にとって、彼女はよく分からない人間だと感じた。

『それに彼女は自分の頭の中で現実を見るような習慣もあった』

 ある程度話しができる関係になり、向こうからも【ちょっかい】をかけるようになった彼女。
しかし、それは僕を見ているのではなく、
彼女の頭の中にある、人間像を僕に当てはめるような感じだった。
印象的なのが、彼女が僕にちょっかいをかけ、僕がそれに対し意地悪っぽく、
『やり返して良いっすか?』って聞いた時だった。
彼女は怒りの表情を表し、一言『しばくぞ!』
何故だろう?僕流の人間関係を深める表現が、彼女には通じない。何かが違う。

『更にこの出来事によって僕は彼女に近寄りがたくなったな』

 仕事の価値観が全く違う。同じような仕事でも僕のやり方と、
彼女のやり方では、まるでそれまでの順序が違う。
まぁ~、それは他人なので仕方がない事だが、コミュニケーションの手法も違う。
僕の言う事が、彼女の解釈とはずれがある。
それに、彼女の言う事が、僕にとっては腹が立つ。
プライドを傷つけられたような感じがする。
僕にとっては、彼女は今までにないタイプ、嫌な存在だった。
















『そして、これは僕にとっては最悪の出来事。これで僕はキレてしまった』

 一緒に仕事をしていて、彼女は在庫管理を行っている時だった。
 僕との伝達で更に行き違いを起こした。
 彼女は僕の表現に対して、口癖のように『~~な訳ないやん』
 それに対して、僕はプライドを傷つけられた気がし、それまでにうっぷんが溜まっていた。
また、ボソボソ喋るところが嫌みったらしく聞こえる。それだけに余計にムカツク。
彼女の個性なんだろうけど・・・。
僕が『この在庫ってどうやって管理するの?』と聞くと、
彼女は何やらボソボソと話した。しかし、僕は何を言われたのか覚えていない。
今思えば、キレて記憶がとんだらしい。
それに対して『在庫管理どうやってすんねん!!』ブチギレた。
勿論『しばくぞ!』と言うような彼女なので、
その場は火のうみ、僕の血圧と脈拍は上がりっぱなし、壮絶な修羅場だった。

『ろくな思い出がないじゃないか!よくこれで今は関係が近づくな!?』
『それに、こんな出来事があったにも関わらず、彼女は翌日ケロっとしていた』

 僕が朝、休憩所から出る時、ちょうど彼女が入ろうとしていた。
 普通ならそこでお互い顔を見合わせると、気まずい雰囲気になるのに、
 彼女は平然と中に入っていった。僕は思う『なんだこの女は?』
 言い過ぎたと思う僕の方が、罪悪感を感じ、目をそらす始末。
 そんな彼女の態度を見て、結果として僕が謝ってしまった。
 『昨日はごめん。前から自分の言い方がオレにとって嫌味を言われたように聞こえたから、
  そのうっぷんがつのり、些細な事で怒ってしまったんや』
 それに対して彼女は『まぁ仕方がないよな』なんて簡単なんだろう。
 そして、その日も何事もなかったかのように、口をきいてくれる。
 並の女性なら、後々引きずったりするはずなのに、
 あまりにも気持ちの切り替えが早過ぎる。

『本当にこんな女は見た事がない。訳の分からない女だ』

それから数ヶ月後、僕は研修を兼ねて転勤し、その職場を後にした。





1年後





上司の命令で研修を終え、元の職場に戻ってきた僕。
1年ぶりに見るその建物は、見慣れた風景でもあるのに、何故か新鮮さを感じる。
『ちょっとドキドキだ』それに、彼女との関係はここからが本番だった。

久しぶりの職場。オフィスはいつもとは変わらない。同僚も変わらなかった。
再開を果たし、昔の話しから研修の話で盛り上がる、充実した時間だった。

しかし、僕はふと気づいた。

僕が座っていた向かいのデスクに、
そこにはいつも笑っているはずの、一人の男がいなかった。

『あいつはどうしたん?』って聞くと、『実は辞めてん』との返事。
その友人とは同期入社で、僕と共同していつも困難を乗り越えてきた仲間だった。
そんな彼が周りと仕事で孤立し、僕のいない間に退職してしまったらしい。

『あいつは辞めたんだ・・・』
それを聞いた僕はショックを隠しきれなかった。

自分の気持ちを鎮め様と、僕は紅茶を飲みに給湯室へ向かった。
そんな中、偶然彼女とも再開をする。

僕 『あ、小林さんだ!』

彼女『なんや、いつ戻ってきたん?
   戻って来る事は聞いていたけど、こんなに早く戻ってくるなんて』

僕 『ああー。実は会社の業務拡大に伴い、本社から戻ってきてくれと通達があったから、
   それにオレが研修のスケジュールを早めにこなしたからっていうのもあるかもな~。
   お蔭様で、1年間向こうでみっちり勉強してきたから、
   管理所としての力量を養ってきましたわ』

彼女『えっ、もしかして出世したん?』

僕 『おおー、名札がこのとうり役職付けの名前になってるやろ?』

彼女『ほんまや、やるなぁ~。やけど実はウチも出世してんで!』

僕 『マジで!名札変わってんの?』

彼女『ほら』



僕 『オレより隣の商品課か。って事はオレの方が上司って事やな?』

彼女『役職名では呼ばんで』

僕 『そんな事いわんとってーな。呼んでーよー?』

彼女『絶対いやや』

それに対して、苦笑いをする僕。一言『なんじゃそら!』

僕 『まぁそれはさて置き、上の人間で絶対に必要な事ってやっぱりあるよな。
   色々な上司を見てきた中で、
   頭ごなしに言うより、やっぱり理解力【何故】と言う視点が必要やな』

彼女『どう言う事?』

僕 『例えば良く聞くのが、なんやオマエこんな事もでけへんのか?って言う、
   自分の価値観を相手に押し付ける人』

僕 『部下は自分の持っているスキルや価値観で自分なりの結果を出そうとしているからね。
   話し上手は聞き上手って言うし。つまり、部下に押し付けるのではなく、問題を共有し、
   二人でそれを解決に導く姿勢が必要なんじゃないかな』

彼女『相手の話を聞くって事?』

僕 『うん。更に深く言うと相手も人間。自分の考えがあってこそ、
   その手法を用いて行った事だから、こっちが話しを聞かず、
   いきなり言っても反感を買うだけ。それに、マト外れなら余計にね』

彼女『あーなるほどね』

僕 『結局こっちの話しは聞かんのか。もう良いわ、はいはいって返事しておこう。
   ってあしらわれるのがオチ。どんどん互いの気持ちは溝ができる』

彼女『ほんまそうやな。良い話しを聞かせてくれてありがとう』

僕 『いえいえどう致しまして』

彼女『ところで話し変わるけど、山城さんと自分って実は同じB'z聞いてるやん?』

僕 『うん、聞いてるけど?』



彼女『あれって良いよな、歌詞の表現なんかが特に好きやわ。
   今度、古くて良いから以前のCD貸してよ?』

僕 『うん分かった、貸してあげる。今度持ってくるわ』

彼女『それじゃーそろそろ時間がないから行くね』

僕 『ほーい』

この時僕は、この会話と音楽の趣味で直感的に彼女の価値観が、変わり始めたと感じた。
何故なら、彼女の一番好きな音楽は、ボンジョビだったからである。
つまり英語は感覚でしかない。日本語は理解する事、現実を理解するようになったと感じた。

そして、それから僕が以前言ったアドバイスを実行する場面に遭遇する。
それは夏の暑い季節だった。

休憩室で僕と彼女は一緒にいる。同僚の差し入れでアイスクリームをもらった僕ら。
僕も彼女もその時それは食べなかった。

それで彼女は、
彼女『このアイスクリーム給湯室の冷蔵庫へ入れてきて』

僕 『はい分かりました』二つ返事、僕は弱い。

それに最近彼女は何故か僕に命令したがる、
女の子流の表現【あまえ】なのだろうか?
ちょっと怖いのですぐに従ってしまう。
しかし、それとは裏腹に意外と心地よかったりする。

自分の足で給湯室へ。
しかし、僕はドジな事に冷凍室へ入れず、野菜室に入れてしまった。
勿論そのアイスクリームは二本とも溶けてグチャグチャになって。
それから後日、給湯室で彼女はこう言ってきた。

彼女『この間のアイス自分が冷蔵庫に入れてくれたけど、二本とも溶けてもうたわ』

僕 『だって、その冷蔵庫は使わんからうっかり野菜室へ入れてしまったんや、
   そんなんしゃーないやん知るかボケ』っと、いたずらっぽく言う僕。

彼女『その表現ってどう言う事?』

僕 『いやぁ~、ちょっと子悪魔っぽく演出しただけで特に意味はない』


彼女『ああ~、そうなんや』

それから数日間度々見ていると、本当に内面が変わったと感じる。
僕の言った事を実践にうつすなんて、この女性は他の女と全然違う。
今はすぐに結果が出なくても、この姿勢が必ず結果を残す。

いろいろなケースで彼女は『この何故?』に出会うだろう。
何回か繰り返していき、
その中から自分なりの結論に到達する事を僕は知っていた。

その後、僕は彼女が180度変わったと、実感できる出来事を体験する。
僕は在庫が必要で、担当者が彼女だった。
おもむろに彼女のデスクに近づき僕はこう言った。

僕 『小林さん。ミネラルの在庫、ちょっと必要やねんけど、あれって何処かな?』

彼女『ああ。あれは探さなあかんから、ついて来てくれる?』

僕 『うん、いいよ』

彼女の先導でオフィスの回廊を歩く。

後ろ姿の彼女を見て、僕は思った。
『相変わらずスレンダーで特に腰から下がセクシー。それに腰のくびれなんかが最高ぉー!』

僕はエロ大魔王ぶりを発揮した。
ご説明が遅れました。実は僕、かなりエロいのである。
これを期に『ちょっとおちゃらけたろか』と考えた。

オフィスをぬけ、エレベーターに乗り込み、最上階の倉庫室へと着いた。
辺りにはあまり人がいない、僕と彼女はとりあえず二人で在庫を探した。

そこで僕はおちゃらける。

僕 『最近やせた?』

彼女『いや、なんで?』

僕 『いやぁ~、後ろから見てたら腰のくびれが以前と比べてあったようやから、
   やせたんかなぁ~って思った』

彼女『セクハラや』


僕 『違うよぉー。ちょっと思った事を素に、
   自分とコミュニケーションをとろうと思って、言っただけの話しやって』

彼女『その発言自体がセクハラやっちゅうねん』声も生き生きし、笑いながら言う彼女。

僕も彼女もにこやかにお互い笑った。

普通なら有り得ないこんな会話。
でも、それは僕の考える、深いコミュニケーションの方法である。

言葉には意味はない。

僕の考える意図に、彼女が理解できるかどうか、ただ、それだけだったのである。

彼女『在庫見つかったから、これ』

僕 『ありがとう』

彼女『あとの在庫、分かりやすいところに直しておいてな?』

僕 『はい分かりました』やっぱり弱い。

彼女は先に立ち去ったが、帰る途中、他の同僚から、
『どうしたん?なんか半笑いやけど・・・?』声をかけられる彼女。

彼女は思いだし笑いをしていたようだ。一見するとセクハラ発言で気分を害する事だが、
意思が一つになった時、こんな事でお互い幸せを感じる。

もはや『しばくぞ!』と言っていた、彼女の曇った心は、そこにはもうない。
今現在の僕なら、あの時見た彼女の姿にこう伝えるよ。


それが本当のキミの姿なら『おかえり』って。


真実の愛に向けて、本当に彼女は変わったと思う僕。
僕からすればまさに『別人』
僕のいない間に彼女がここまで変わる事ができたのは、一体なんなんだろう???

『全く分からない』




今までのことを思い返すのをやめ、今現在の彼女の変化を物語る原因は何か、更に考えてみた。

彼女は、
 『何故これだけ優しいんだろうか?』
 『何故これだけ温かいんだろうか?』
 『何故これだけ寛大なんだろうか?』
 『何故これだけ強んだろうか?』

ベンチに深く座り込んだ僕は徹底的に思案し、ヒントを見つけ出す。
『必ず普段の姿勢や行動で彼女の意図を理解できるはずだ!』

頭を掻いてイライラしたり、ベンチから立ち上がり右往左往をした結果、
         ・
         ・
         ・
やっとその意味に気づいた。

『彼女は最初から優しく、寛大ではない。
 それだけ多くの人生経験を通し、傷つき、それに耐え、
 他人を理解し、考えてきた結果が、今の彼女の行動を表している』

この結論に達した時、僕はより一層彼女を深く知りたいと思った。
更に僕が、彼女の為にできる事はないかと考えた。

『彼女は今、数多く傷ついている。そんな彼女を僕が癒してあげよう』
『彼女は他人を理解してきた。僕も同じように彼女を深く理解しよう』
『彼女の表面上は強い。しかし、いろいろ見てきた中で、桜のようにやっぱりか弱い。
 だから、僕が彼女を守れるように強くなろう』

そう思った時、僕には更にある感情が込み上げてきた。

『どんな血を吐くような試練にも耐え、彼女の全てを受け入れる!
 必ず彼女のふさわしい男になってみせる!!!』

僕の気持ちは燃え滾っていた。

しかし、どんなに僕の気持ちが燃え上がろうとも、
この思いを彼女に伝えなければ、意味をなさない。

それが分かっていながらでも、僕には行動できない、弱い自分がそこにいた。




過去の体験や多くの失敗によって、
恐怖心と言うトラウマに支配されている今の僕には、
【告白】という選択肢を選ぶ事はできなかった。
葛藤が僕を襲う。

『ごめん・・・。こんな僕を、許してくれ・・・。』

僕はいつしか、泣いていた。

その悔しさと悲しさを噛み締めながら、
澄み切った青空を、今はただ、見上げるしかなかった・・・。
                              完


super_smmode & still_in_love

                            ヘ ヘ
                            ミ・・ミ
                         ・・・~( )

※この小説(ノベル)"あるひの日曜日"の著作権はsmmode123さんに属します。

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