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何も動かさないから何も変わらないでこの部屋に帰ってきてね (完結作品)

作: merongree

電源を切るとか電池が切れるとかそういう言葉の違い
そんなのエリーはほんらいは正確にしたい
でも一緒に住んでるのが私だから仕方ない
彼女が正確に地球人の真似をしているのにいつも「電源がなくなる」とか
「微妙だけれど素晴らしいと感じる」みたいな曖昧な物の離れ方をするのは
私の痕跡で私が彼女に悪く感染しているせい
彼女は彼女の目的のために私が最良じゃなかったって分かってた筈なのに

電源なくなるとかいってブチって無機質な音でスイッチ切ったときに
私は自分の物慣れた精神の習慣をなんとなく意識内で連続させるだけで
エリーの希望することやしないことに到達できる感触を得ていたその頃
エリーが私のざわつく関心をそうして停止したい事をつよく受け止めた
端的すぎるようにも感じられるその関心の止め方のほかにその行為は実際
エリーの好みに適っている部分もあった 彼女はエネルギーを節約する
宇宙では漂流すると本当にたすからなくない見込みが海よりも高いとかで
海よりも恐ろしいその間に漂うことを恐れてエネルギーの残存量をみないのは
避妊しないで他人の身体から直に病気を貰って来るぐらい無神経なことだと
へんな比喩で教えられた
宇宙人の保健体育という奴はエネルギーの無駄使いがいかに怖いか
もっと生々しい話を聞かせてもらいたかったというのに彼らは錠剤を呑む程の
摩擦じゃないともう受け入れないぐらいに淡泊に進化してしまっているから
きっと自分の身体に刃物を入れて余分な何かを取り除いたりはしないだろう

でもそんなことをじかに訊くことはじかに彼女の身体に刃物を
突きさすことのようにわるい気がしていた
彼女を傷つけまいとする友情みたいなものの他に私はやっぱり彼女が
宇宙人であるほんとうにということに多少こだわっていて
彼女の意識に質問のかたちをした私が突き刺さることへの恐れがあった
彼女が本領を発揮したら怒られるどころか私などたぶん取り留めもなく
跡かたもなく吹き飛ぶほどの強い竜巻のようなものを絶えず、エリーあの
何もかもに干渉するまいとして静観する態度から隔てたところでも感じた
そういう恐れはそうして彼女に優しくする際に不可欠な感情ではあった
愛のために確かに必要なちょっとした嫌悪だった 手に負えるぐらいの

エリーはスイッチを消したあとは立ちあがって水飲んでくるといってさっき
浩明に隔てられていかれなかった台所へ行こうとしたから
私は別に止めなかった テレビの画面はスイッチが押されたところで停止していて
なんだか両親の間の喧嘩で取り残されてしまっている子供みたいに固まってた
その光景で私も固まっていたから その状況を解除できるのは
エリーだけで彼女が部屋に戻って来るまでいっさいの物を 
動かしてはいけないような気がした
私は自分の意志がどういう姿をしているのか 言葉で表そうとするとつまずくので
ポケットに入れていたナイフが突き出してその形を露わにしてしまった
みたいな いつも恥ずかしい様な思いを感じるのが常だったのだけれど
この場合エリーが作り出して去った 争乱のあとを自分が少しでも
片付けるとその行為で私が何を恐れ 何を不快に思っているか 
彼女に見つかる気がして恐れた
部屋全体がエリーが作り上げた爆弾みたいに何だか 
触れちゃいけないもののように感じられた 
けさまで私がへいきで床に寝っ転がってごろごろしていた所だのに
アクシデントというのは面積を余すところなくまな板で頬桁をひっぱたく
みたいに容赦なく平手打ちで襲って来るんだ…

それからエリーは物の移動にうるさかった うるさいって言い方へん
だけど気にするのだ
何か、物が動くときには必ず歴とした理由が付帯するはずだと信じていて
(宇宙船のなかとかってそういうルールが衛生観念のように徹底して
いるのか?乗ったことがないから分からないのだけれど)
私がうっかり動かしたリモートコントローラーがなぜ机の上から床に
移動したのか
そのことを見つけるとあたかも自分で見慣れない運動の習慣をみつけたみたいに
首をその記憶のある地点から現在それがある地点までゆっくりと動かしたりした
「なんとなく持ってっちゃっただけだよ。」といって渡すとまるで家に
入れなくなった子がコピーした鍵を手渡されたときみたいに呆然と
何の事だろう?というような顔つきでその動かされた物をしばらく
見つめている
ああいう表情とかぜんぶ懐かしく思われた 私はこの部屋を彼女の記憶
にあるまま保存しておくことで彼女にいま思い切り身体を擦りつける
ようにおもねりたかった
彼女が殴られた部屋なのだ ただでさえ自分を地球人が襲ったことに
衝撃を少なからず受けていると思われるエリーだと思われるというのに
さらに物が彼女の了解なく移動しているのを見たら果たしてどう思うんだろう
そのことが私を躊躇させて番人のようにその部屋に居座らせた
どうせなら私の存在じたいを紐状のものにまで分解してその部屋のなかで
落ちている髪の毛ほどに自然で取るに足らないものにまで細かくしたかった
彼女が部屋に戻って来たときに私の様子から何か見つけないか恐ろしかった
女の姿をした友達が殴られているというのに 私は手出しひとつ出来なかった
浩明が白熱した意志に任せて殴りつけるのをただ行かせていて 
それが攻撃として無効なのを感じるぐらい私は冷静にただ見つめていた
彼女が攻撃されている光景をただ私もいっしょになって創出していたのだった

エリーはそれから衣擦れの音をさせてさっと廊下を移動していたので
戻って来るのかと思ったら白い影のような印象だけ残してトイレに消えた
水を飲んだらその水はどうなるかっていう話で ちゃんと排水すると言ったら
そのやり方を見せてほしいってせがまれて見せたりしたのは 
最初の頃に書いたが
どれぐらいの時間がかかるかなんてのはうまく説明することが出来ず 
彼女は自力で 外のトイレでは前のひとが入った時間などを腕時計を
みて計ったりとかして努力して
水を飲んだらすぐ彼女が決めた時間だけトイレに籠ったりしていた
コップの水から排尿までどれぐらいの間かかるかなんて言えず ただ
「そんなにすぐに出るわけないじゃん、」と
笑ったら少しずつ試行錯誤して長くしていた最中だったんだけれど 
そんな習慣にふとエリーが還ってくれたのが私にはすこし有り難いような気がした
関係が修復できるような気がした
総て元通りになるどころか元通りのままかもしれないという幻想みたいな期待は
こういう嵐が来ているときいつも私の心をときどき覗くみたいに通り過ぎていく
自分の心がくたびれて麻痺していると却って明るい事ばかり思うのかもしれない
浩明からの着信がきた ケータイの着信欄にはっきりとその名前が出たことさえ
何だかその状況にたいする乱暴な横やりのように思われた 私は出た
浩明が来ることを今度は 最小限に押しとどめたいというような希望を持って出た

憂鬱そうな声でどうしたのって尋ねたあとで 
エリーが確かに殴り返したのを思い出したから浩明頭大丈夫って尋ねた
浩明はさておいても頭の具合は心配だった
「お前まだ家?」とか、言われたからそうだよって言って「あの女は?」と訊かれた
まだ彼女を女だと思い込んでる その事への驚きもあったんだけど
「その辺にいる」と言って、浩明が息をひそめたのを感じたから
いまトイレだよって付け加えた 実際 トイレなんかしちゃいないことは
彼女のプライバシーに属すると思った
水がジャーって流れる音がひびいた 先ほどから数えて2回目だったが

「エリーがかわいそう。」と私は淡々と 棒読みみたいな口調で言った 「いきなり背後から殴りつけるなんて、卑怯だよ。彼女はとても痛そうだった。どうしてあんな事を?」
私は何か翻訳された本でも読みあげているみたいに 淡々と述べ続けた
私の激情は突然やろうとしてもだいたいこうなる 感情というものがちゃんとあるけれど 激情となるといつもリクエストしたみたいに 
常に何かの罪悪感に駆られて起こすもので
何か水戸黄門みたいな感じなのだ こう言う所では悪党が出てくる 
殺陣が起こる そして印籠が出てくる 
そんな風に場面ごとに地球人が普通に感じるだろう激情があり
私はそれらをどうにか呼び起こして台詞をいうんだけれど 
どういうトーンで言ったらいいのか分からなくていつも棒読みになるのだった 
悲しくないわけじゃないけれど
私が微かに困惑のように感じている感情を嵌めこめるみじかい言葉なんて無かった
だいたい悲しみや怒りを表す言葉はとても長大で堂々としすぎていた 
エリーの星であらゆる感情がみんな「感動」に置き換わっているという
ことを聞いたときに思ったが
私の感情は喜びだろうと悲しみだろうと「困惑」にほとんど収まってしまう気がした
そんな現実に私は浩明を電話越しになじろうとしたとき 改めて直面した
「エリーにあやまって、エリーは殴られてとても可哀そう。」と言ったら「そうだよなあ、俺、彼女にあやまらなくちゃ、」と言った。
「彼女にとてもひどい事をしたんだ、俺あやまらないといけないよ。」
って言った まるで私が取りみだそうとしているのを慰めるような
まろやかで穏やかな声であったことが却って私に 
物慣れた災難の手ざわりを感じさせ
ほんとうに今酷いことが起こっているのだということを確信させた
カチャン、って陶器に金属がぶつかったような音がトイレからした
恐らくエリーがいつも首から下げているうちの鍵の音だととっさに思った
それがいまトイレの便器のつるつるした表面にぶつかったのだと何となく思い
どうしてエリーの首についてるものがそこにぶつかるんだろう?って何か
災難がいつも私を連れてきてくれる恍惚とした意識の領域で想像していたら
ジャーーと水を強く流す音がした それから2、3度とまた流す音が続いた

※この小説(ノベル)"何も動かさないから何も変わらないでこの部屋に帰ってきてね"の著作権はmerongreeさんに属します。

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