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グレープフルーツそんなに速く転がったら隕石と間違えるじゃない (完結作品)

作: merongree

破綻の象徴みたいなものになっているわりには淡々としていた
切れたコードは制限されたボリュームの声で悲鳴をあげていて
自分に割り振られた台詞をそこで呟いてるみたいだった

その光景に私がいったい何を出来ただろう?それは私という
無機質なハードに突っ込まれたソフトみたいにきらきらと
己のなかに組み込まれているプログラムを自律的にくるくると
目の前で展開していたそういう悲劇だった
プログラムされた悲劇という感じでそれが進行することにはまるで
神様が承認しているみたいな静けさがつきまとっていたけれど

浩明が矢のような勢いで、後頭部をガツンと殴ったときのエリーは
水のなかにいる魚のように微動だにせず
普通、石でも何でもそれに近いものでも後頭部をしたたかに殴られたら
ひとは、顔が下を向いて頸筋がはっきりと現れるものだと思うのだけれど
エリーはその攻撃を食らったとき確かに、ガツンと鈍い音を響かせはしたけど
痛いとか苦しいとかそういうときに現れる あの雰囲気に血のにじむ
ような感じ あれがまったくなかった
浩明のほうにその反動の乱れがむしろ全身に糸を巻いたようにからみついていて
浩明はエリーを殴りつけたあとの身体のよろめきを元の通りに戻す
ために なんか浅瀬で溺れているような格好にさえなった

浩明の全身から解けるように出た、そのいびつな運動を彼が身体の線の中に
回収しようとしてもがく間、エリーはちらちらとそれとは関係のないプログラムで
動きつづけるゲームの画面から焦点を離さなかったし
私がとくに印象的に見たのは彼女の石膏のような手がその間に微動だにせず
ビスケットとかクッキーの欠片のついたような薄汚れたうちの
コントローラーを片時もその殴られた間ですら握って離さなかったこと
石膏と言っても何だろう あのバスタオルみたいな布をまきつけた女神のつま先ないしは黒目の入っていないあのどこか厳しい緊張のある真っ白な目
空白みたいなあの目のような形に近かったと思う 彼女のその手は
浩明からくる打撃をまるで遠い遠い孤島にいてその波が島を削れないうちにあっさり
砕けて散るのを見ているかのように全然その打撃から超然としてしまっていた

それから何の瞬間だろう、浩明がじれてもう一回、もう二回とたぶん恐ろしくなり
エリーの後頭部を思い切りその電話機で殴りつけたとき、
それまで文字通りそうだ まるで受話器を取らないみたいに鳴りっぱなしのベルを
そのままに放置するみたいな態度でいたたぶん何の痛みも感じていなかったエリーが
ふとその彼から来る打撃とつらなってまるで 紙で出来たつらなった一個の輪みたいに
見えたこと あれはとても不思議だった 驚きとか驚愕とかそういう息継ぎによって一時遮られる感覚によってではなく私はそれを 最初から連続していたもののように発見したそんなに甘くてどろりとした輪のようになれるのなら多分ふたりは和解できる
そんな風に直観的に感じたのだって私のどうしようもない地球人としての甘さだったと
あとからならいくらでも認識できるけれど そのときは突然出来たふたりの物理的な
繋がりの完璧さみたいなものに嬉しく打ちひしがれてああ二人は大丈夫なのだとさえ
思ったものだった たぶん私の知らないやり方でふたりは和解できるからこうなのだと

その輪をほんとうは何と言うのだろう たぶん地球では起こりえないことだっただろう 地球にある物同士をぶつけても
あんな光景はたぶん出来上がらなかったんだろうと思う
まるで花のなかにおしべとめしべが備わって咲いているように自然 
まるで土星の周りに輪があるみたいにとても自然 
最初から組み合わさっていたと思うようなあの二つの異質なもの同士の
組み合わせ 
それは「結合」というような一呼吸後に踏み込んで行われるような
ものじゃなく初めから組み合わさって存在していたというような感じ
のもの
それを言い表す言葉が宇宙に行ったらあるのだろうか 
もしもあったとしてもエリーにはあるけれどたいした意味じゃないとか
そんなに昂奮されることの意味が分からないだとか
音節がむずかしくてあなたたちの未発達な口元じゃどうせ発音できない
から言わないとか
そんなだろうけれど

まるで鳥の羽ばたきみたいな静かな音が響いた その輪が崩れるのはそんな響きだった
エリーの頭にやわらかい触角のようにして連なった浩明の凶器を持ったその手や腕とかは
あっというまに振り落とされていて気づいたらエリーが浩明に馬乗りになっていた
下に倒れている浩明はまるでこぼれてしまったミルクみたいな感じで
取り返しのつかない 負けてそこにいるという感じが全身に現れていた 数字のゼロみたいにだらしなく中身の空洞みたいなものをだらりと
桃色の犬の舌みたく晒しているといった感じの体勢だった
エリーが細い腕をふりあげて浩明から奪い取った電話機をそのまま浩明の顔に下ろすと
まるでグレープフルーツでも剥いたみたいに浩明の額から黒い血いが
飛び出た
血いは鮮明な赤!!という風にイメージがあるけれど実際にでてみると
黒くてぷるぷるとゼリーみたいに固まってきたりもする 
それから額から出る血は無駄に多くて 白くてとこどどころ剥げている
うちのコントローラーを無様に汚した
私がそのときに一番驚いたのはエリーがそんな静かな動作を繰り広げながらとは
思えないぐらいに口元がまるで別の生き物みたいにしきりと速く動いていて
浩明に向かって宇宙語できしりと何か怒鳴り散らしているということだった

彼女の性格からして いや人種からして いや宇宙の歴史からしてそんな風に
およそ言葉の通じないものを相手に通じない言葉で語りかけるというのは
相手を嬲るというような意味合いを除いては考えられないことらしいことはエリーと話すうちに分かって来た 
すこし地球人の意地悪の仕方に似ているなあと感じたりしたものだ 
相手に意味が通じないと分かってて言うことは極めて稀
それか通じないのをいいことに仲間うちで他の宇宙人をからかおうとするとき
そんなら何ていうか子供のからかいとかいじめに似ているなあと思ったものだ
しかし犬とか猫とかに人間の言葉が通じないというのにこっちおいで~
だとか、コンニチハ~とか語りかけるというのは狂気の沙汰のように
見えるという事で
本当に犬や猫に日本語が通じると思っているのかとかなり真剣な顔で訊かれて
そんな事も理解できないような人種のいる土地じゃないと分かって安心したとか、
別に通じてなくてもいいんだよと余計なことを言ったら余計に悩まれてしまったけど
エリーは目的のために手段があるというかとかくに理屈っぽくて宇宙人はそうなのか
既に完成している絵画に塗るための絵の具をひとつずつ 既に与えられて
いるチューブのセットから取り出して筆先に塗る 
そんな風に感情を使っているようにもみえた

だからエリーが全然不条理に浩明にむかって突然服でも脱ぐみたいに
自分の星の言葉をべらべらべらべらとそれこそ流血するように垂れ流しに
しているというその現象の方が
幼馴染がいままさに宇宙人に殴り殺されかかっているとうことそのものよりも衝撃的で
もちろん殺しに来たような浩明がその言葉を理解してないこともだんだんと白くなってく彼の頬から額にかけての皮膚のいろからみても
その答えは明瞭に現れていたしで それぐらいエリーの頭が混乱ないし
錯乱してたっていう意味の事なんだろうけれど
アイス助けてってたぶん途中で言われた たぶん何度か でも私はそれどころでなく
幼馴染がこうして私の身近にいて私に感染しているぐらい近しい宇宙人の
見た目女の子に
分厚い皮のある果物でも剥くみたいに淡々と攻撃されて追い詰められているというのが
どうにも嬉しく どうにも溜院が下がる思いがするのを感じずにはいられなかった
地球人の全部がエリーから感染する毒で殺されようともその瞬間にはまったく良かった
まるでプレステの中のゲームみたいなことを簡単に考えるものだが私なんてそんなもので
むしろ他の子に比べてその想像に至るまでの道がとろくさい足取りであるように思われた

ようするに想像の世界にしかいなかった宇宙人というものがいまこうして
確かに、私の、妄想でなく存在しているということが幼馴染の額から流れる血によって証明されていたし
かつ私じしんの意図を伝えるまでもなくその想像の産物 宇宙人が
己から出る当事者的な感情にかられてその凶器を振っているということは
その光景を見ていれば明らかだったし
明らかに私の想像が現実にたいして 私にとって代わっていや私が夢見ていた以上に
いままで虐げられていた分の反撃をくわえてくれた瞬間だった 

私はエリーという形で現れた私の妄想がそんな風に力強いのを賛美する
気持ちだった 彼女の振る腕にはそれでも確かに悲しげな影のような
ものがみえて力加減をしていることが感じられたのだけど
相変わらず口元では意味不明な一億ケタ同士の足し算と掛け算みたいな呪文が続いて
浩明に対して罵倒しているようにも見えたが細かい絵画を修復しているような神経質な
集中があることも感じられてまさに彼女の星の感情で彼女の星で使われている言葉を
操っているのをまともにみた貴重な時間だったと思う
いつもと違うことをする彼女にはつねに理由がありこのときは
半狂乱になっていたから
どうしてそんなに動揺したのか先に殴られたからだけでは片付けられないように私には どうしても感じられたのだがエリーはその後も 浩
明との交渉の全部を話したがらなかった
まさか恋愛でもないんだろうけれど エリーは浩明を何かの例外として
置くことはあった
それで浩明が彼女の下でいよいよ気絶したように完全に動かなくなった時に
もう役に立たないものを掴んでいてもしょうがないという感じで血のついた電話機を彼女が
自分を刺した蚊を叩くようなうろんさで放り投げたから私は彼女に話しかける
契機をみつけた嬉しさでエリーだいじょうぶと言って慌ただしく近寄って尋ねた

彼女は自分で自由にした両手を顔のまえで組み合わせて鼻さきを覆って俯いた
そんな所作、宇宙にはないって分かっていたんだけれどまだ何か沸騰するみたいに
呟いている彼女が祈っているようにみえた

※この小説(ノベル)"グレープフルーツそんなに速く転がったら隕石と間違えるじゃない"の著作権はmerongreeさんに属します。

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