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ただ単に水を呑みたいという事の他に彼女に罪はない (完結作品)

作: merongree

げんみつには狂ったというほどのものじゃない
私がそのときに浩明に想像した光景というのは
ほんの少しの地震が起きて箪笥の中身がずれてしまった
なんかそういう感じの些細な修復可能な混乱だった

私たちが日常というものにうまくくるまれていく為には
それは病院の匂いがするものでなくてはならない
病室でえんえんとやり続けているPSPのゲームに出て来る
泣いているドラゴンのように面白くて手に負えるような敵が要る
そのことはアイスと呼ばれたあの時に何となく共有したから
そのガーゼの匂いのする親しみのために私はそのときから
クラスで係付けのように浩明の病状に精通したから言える

物の名前は忘れてしまうけれど失くしてしまう訳じゃなく
たとえばタコの足みたいに沢山の房のついたその布切れを
いったい身体のどこに嵌めたらいいのか分からなくなる
浩明のど忘れはだいたいそういう性質だったし たびたび
鼻血が出るような自然さで そんな混乱が起こることもあったから
またそれが起こったのだろうと思った 夏になればカレンダーが裸
そのぐらいの軽い季節の移り変わりみたいに ふとそんな兆しが
たまたま浩明に訪れて 浩明はエリーへの好意のためにそれに気づかない
そういう事を私は期待したのだ 想像じゃなく完全に期待していた

浩明の女性崇拝みたいなものに 
私は自分の命の一部を勝手に盛り込み
私がエリーを少し気持ち悪いと思って愛し切らない部分を
あんな大型犬みたいな愛情を発揮できる浩明に代わりに
発揮をして貰いたく
そういう下心もありつつエリーを紹介した 
本当は宇宙人という存在に対して誰がどういう事を考えつくかと
いうことを思ったら 
彼女をむやみやたらと他人に会わせるべきじゃないと思ってたけど 
浩明を友達として信頼する以上に浩明が、私に出来ないほど
掛け値なしの愛を、いや厳密にはスケールの大きな下心といった
ような、
要するに母性崇拝みたいなものの対象としてエリーを愛し切るのを
私が見たかった

だから浩明を招じ入れた 
浩明は、エリーをすごく気に入ってるように見えた、
でもエリーがあの不思議そうな顔をしたのをみて
なんかそれでまた気がついた
わざとだ、浩明、
どうしてそんな事をするんだろう???って思ったけど彼の正義感が
凶器のように見えた
浩明が虫をみると殺虫剤を撒くみたいにしてもう反射的に何か
得体の知れないものを生活から排除しようとする癖
それを何でかすっかり失念したまま綺麗な虫のようなエリーに
会わせた
ほんの少し実態とずれているその物の名前と これはつめきり、と、
浩明がカーミット君で指し示したというその物の違っている名前との間
その誤差はほんのわずか 体温ほどにわずかで匂うようなその違い
それこそ浩明のエリーにたいする悪意がほんものであることを
見事に証拠立ててた
敵、きらいなもの、気持ち悪いと感じるもの、
とにかく生活にたいする侵入を防ぎたいもの、アルコールで消毒して
消してしまいたいと思うもの 
それらに対する敵意を表しておきつつも真綿で包丁くるむみたいに
隠すとこ
そういうへんな土壇場での周到さとか臆病さも私と似ていたから
気がついた
エリーにぜんぜん違った名前を教えていたのだったら 
本当に壊れてたと思う
でもほんの少しの違い 
キリンをウマといったりハナをクサといったりそんなの
だから彼の意識には理性のようなものがちゃんと働いてて 
意図的に間違えた 

エリーは違和感にして感じ取ったらしい 
そんなわざとそんな些細なことをしかける人間に私以前にも出会った
ことがなかったためなのか
決して脅威に感じたとか怯えたとかじゃなく むしろ自分の習性で
自滅する虫を見つけた
そんな明るい驚きの波紋があの独特な色をしたあの目のなかに 
波のように際立っていた
私は地球人がいかに虫けらのようなものか 
「搾取しても同情なんか感じられないぐらい低級」と、言われても
腹なんか立ったことがなかったんだけれど
浩明のこの本気の悪意にたいするエリーの侮蔑みたいな 
完全にエリーがその悪意の事を、
浩明が自滅するだけの愚かな習性としてしか観察しなかったことに
物凄く腹が立った
私は顔や眼の表情なんかに感情が 露骨に出るタイプだから
まして人の心が読めるのではないかと思うようなエリーにはなおさら
だっただろう 
最後のあの目のかがやきは決して彼女に怒った事のない私が
彼女に初めてみせた悪意
それへの新鮮な驚きと、感動のようなものがあったのだろう
余談だけれど彼女の星では感情を表す言葉ってのはほぼ古語のなかに
埋没していて
「感動する」っていう言葉がほとんどの感情の表現になるということ
だった
悪意だろうと好意だろうと失望だろうと何だろうと感動らしかった
エリーはそのときに彼女の星の中では誰もがするんだろう普通の
やり方で感動していた
私はその間ほんの数秒の間だったけれど 出ていくときにエリーに
向かっていつもの様に
「ちょっと○○に言って来る」とか、一切言わなかったと思う
それなりに危険に満ちていてもおかしくないエリーの潜伏生活の
なかで一応
そのことは私が自分に対して取り決めたルールだったのだけれど
私は時間がなくてそのルールを破った 浩明に蓋をするように私は
行かなくてはならなかった
廊下に出たら雨漏りしている水に当たったときのようにびっくりした
そこにいつ戻って来たんだろうと思われるほどの自然さで
浩明が立ってた
なんかぐしゃぐしゃになった錆び付いた鉄のパイプが牛の腸みたいに
ぐにゃりと歪められた状態で彼のなかに納まってる 
不思議とそんなイメージが沸いた
彼の口に出そうとして出しかねている悪意 
それがそんな風にガラス板の向こうの消化器および周辺器具のように
錆び付いてかつぐにゃりと歪んで見えていたのだった
浩明はまるで習慣のなかにいるみたいに自然に立ってた 
でもそれは怒ったときに拳をぎゅっと固めるとか歯を食いしばるとか
濁った怒りに抵抗するための処置だ
いつからいたんだろう??私とエリーとの会話は少しでも聴こえたの
だろうか??
このぐらいの距離ならば、逆に私と浩明との会話がエリーには
根こそぎ聴こえてる筈だ
(むしろ生活音がうるさすぎて聞きたくもないとかってわざと
耳を塞いでるらしいが)
私は浩明に話しかけなければならなかった そのときの彼は既に
小さく何か始めており
電気も点けずにぼんやり立って自分の左のてのひらばっかりみて
「これ落ちねえよ。」って言った
何が落ちないんだろうと思ったけど、私のいましている生活が、
そんな風に浩明に、
部外者に、何か関わらせた瞬間にそんな風に何かどろっとした
拭えないものになって
付着してひどい痕跡として残るような性質になっていることを 
私は何となく感じていたから
私の生活圏内にある何かが浩明にひどい迷惑をかけたのだろうと
判断した たぶんエリーだ
私の考え方なるものにずっと付き合ってくれた人の中にはもちろん
私がこんなときにエリーが浩明に迷惑をかけるということを 
喜ぶ気持ちが私の中にあるということを
簡単に見抜くひともいるだろう 事実そのとおりだった 
私はほんの少し喜んでいてあとほとんどの気持ちは信じたくない 
恐ろしい 血でもそこに付いているのを見る そんな気持ちだった 
血を見るときにはいつでもほんの少しの昂揚が混じるはずだ……

どうしたの手え、といったら浩明はその手をぐーぱーぐーぱーして
なんか点かない電球がやっぱり切れているのを確かめるような
所作を 己の左手にした「いちおう訊くけどさ、」って言われたとき
死ぬほど怖かったのを覚えてる「お前あれが何なのか分かってて
ここに置いてんの?」もしお前の家族や周りの人間に何かあったとき
全部お前の責任になるって分かってるのか?お前ひとりで何とか出来
るとでも思ってるのか、あれを??お前本当どうする積りなんだよっ
て最後は、文字通り割れ鐘をぶったたくような大声で言われたのを覚えてる まるで冷たい水を浴びせられたみたいに私は一気に辛くなった

これが私と浩明との縁が切れない理由でもあった 浩明にはいつでも
噴射できる火炎放射気みたいなものがあってつねに正義のために
それは準備されていて
私はいつもちょっと甘いものが欲しいみたいな理由で曖昧な悪と
結託してしまう
私に何の準備もなく覚悟もなくエリーを受け入れた 
そんなことは浩明は百も承知で
私のそのふらついた態度を消し飛ばしてしまうために問答無用で
大声を出したのだ
そんなことは百も承知で分かっていても浩明が死ぬほど怖かった
私は神様は浩明みたいな性格をしているんじゃないかなあと絶えず
思っていた
死んでしまいたいと願うことは思春期に何度もあったけれど
浩明みたいな人物のところに永久に送られるなら生きてる方がましだ
った
ましてや生きている神様である浩明はとても忘れっぽい
私のこともいつかただのアイスクリームだと思ってしまうだろうそんな風に
期待できない期待を保持したまま私は自分の人生を永久に保留音にし
ていた
そんなことをその冷や水のときに完全に意識に回復させられた
エリーが背後にいるのは途中から浩明がその方角を見まいとする
緊張を身体の表に出し始めたから気づいていた
私たちがこんなにも問題にしているエリーの悪というのは未だ想像
の過程であり 実際はそんな事ないのかもしれないが
エリーはこんな風に自分の存在が私たちに解釈されていることなど
まるでおかまいなしといった調子で
台所へ行きたがっているのが何となく分かった 
ただ単に水を呑む為だ

※この小説(ノベル)"ただ単に水を呑みたいという事の他に彼女に罪はない"の著作権はmerongreeさんに属します。

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