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作:
merongree
エリーだけは赦した
エリーだけはそれぶらなかったから
星のことを滅多にしゃべらなかったから
エリーは自分の星が潰された過去を己の勲章のように語らなかったから
エリーだけは生き残らそうとした
なんかグローバリゼーションの影響を受けて
他の星からも難民を受け入れることにした結果
もう随分と宇宙人が増えた
宇宙人なんていう言い方 差別的だから止しましょうて
そんなスローガンさえももうとっくにむかしの話
おばあちゃんとかいまだにテレビみててこのひとはでも
宇宙人なんだろ、とかっていう
宇宙人であることがやっぱり生理的に受け付けられない世代
恋愛とか、考えられないっていう
そういう世代とかもまだある
なんかむかしはUFOで地球人攫ってたんだよとか、
恐ろしげな昔話とかもよく聞かされるけれど
私らの世代になるともうクラスに何人も地球出身でない子もいて
また擬態がとくにうまい子なんかはかえって好かれたりなんかして
見して見してって言いながら休み時間とかに不思議なそのてのひらを
ぐにゅーって部分的に元の形状に戻してまたトレーナーの袖引っ張って
元に戻したりとかして先生にそういう事止しなさいとか言われている
また身体測定とかでも星が違う子のなかには身体能力が高すぎて
また酸素濃度が違いすぎる星はランニングですぐ息上がっちゃうからって
見学させてもらえたりして地球出身は割に合わないなあとか
ちょっと宇宙人のふりをしてそのことをあたかも重大な秘密のように
友達に打ち明けてでもあれうそだったのって言うふうに言ったりして
いろいろみんな自分のアイデンティティーに困ってた
だってどっちにしろ自分のいた星には不満なんだ
いつか帰りたいと思うような星は誰も持ってないどこにもない
だからゲームに嵌ってしまう宇宙人とか多かったね実際
なんかああいうRPGの発達具合って地球は異常なんだって
こういうのを作ろうと思うなら実地でやろうとしていたとか、
ほんとうにドラゴン退治とかしにいっちゃうから人的損害も多くて
こんなにスイッチを入れたり切ったりしさえすれば再生できるような
そんな架空の冒険の空間とかを作る技術って案外 地球でしか発展してない
らしくって宇宙人は自分のとこに帰ることができないとこういうゲームに
熱中していた
そういう禁じられたとか実現しないものを実現させてくれるものという意味で
ゲームを手に入れられた宇宙人がうらやましくもあった
彼らはまた厳密に男でも女でもなかったりするから
そのことも羨ましかった(男ないし女の姿という風に、彼らの良心ははっきりと
擬態してきているけれど、小学校ぐらいだと本人もどっちつかずで、
その気はないのに雑誌とかでみてとんでもなく美少女とかに擬態してきて
男の子にちやほやされるも女の子としての振る舞いが出来ていないために
何か困惑したりまた周囲を困惑させたりもしていた 奴らはへんなところで
糞真面目なのにふまじめな部分での研究が足りないからへまをするんだ……)
どちらの問題でも悩まずに済むだろうし 何より生理痛がないから
彼らの生理にもそれなりに問題があるらしく 生理的なトラブルのせいで
いきなり学校や会社から蒸発したりもする だから宇宙人はメンテナンスが
ちゃんと出来てるとか整形手術の証明書とかがないと就職はむずかしいから
だから芸能人とかになったりするんだってお年寄りなんかはいうけれど
ときどき悲劇的な事故の過去をもっている星の生まれは羨ましかった
みんなに知られている悲劇的な過去というのは毛布みたいに温かいから
羨ましくて石を投げたかった
エリーもそのことで石を投げられたっつってた
薄くて赤い髪は擬態するのがへたくそだからだ
お前何年地球に居るんだよ……
エリーの青い肌はまさしくその星の出身である証拠で
彼らはUFOの墜落事故のために失われた悲劇的な星の出身で
別に大した歴史がある星でもなかったけれどまったく第三星からの
突然の攻撃といっていいほどのアタックで一夜にして壊滅した事で
どうやら自分たちが神話に登場するほど貴重な民族であると思いなして
きたらしくてその星の生き残りというとどの彼らの内の一人も胸を張った
尊大な態度だから宇宙人ぐらいのんでかかってる 地球の中の私らの住むような
地域になるともうかえって嫌ってしまうぐらいで
だから何なんだよと言わないばかり
けれど青い肌が美しいというので宇宙人のふりという地球人独特の(他の星では
互いの星の民が往来することなんかずっと昔からやってるから珍しくも何ともないらしく、地球人が言わばそうやって己のアイデンティティをごまかすことはどの星からでも驚くべき奇妙な生態として伝わっているらしい、またその生態を必要とする歴史があったのではないかと随分、私たちの知らない時代にまで遡って研究されたらしいが、はっきりした答えは依然として出ていない、つまりその必要もないのに我々はしばしば宇宙人に擬態したがるへんな宇宙人だって言う結論がいまのところ正しい)へんな嗜好の持ち主にとっては
何故かこのエリーの星の民ぶることは人気があり
ある地球人とはそういう目的のためにルームシェアまでしてエリーから発音を
教わったといいエリーも内心不思議に思いながらも教えてあげたのだという
「おばあちゃんの発音とわたしの発音と違うんだけれどね、」と言い、
そのひとがどこからか手に入れていた本は古くて、おばあちゃんの発音が載っていて、
「わたしの発音が全然違うのを聞いて感動していた(笑」」と言って笑った
やっぱり本物のその星のひとに習うのと本で見るのとは全然違うとか、まるで
地球に居ながらにしてその星にいったかのようだ、爆発の音を聞いたかのようだと
「大喜びしてバクハツのことを言ったあとで私に済まなそうな顔をするから(笑)」
わたしはその時分、ただの赤ちゃんですよって言いかけたけど黙ってたと言った
バクハツとかエクスプロージョンとか地球にきてから該当する言葉を知ったって
そんなに沢山あんなただの轟音に言い方があるんだと思って驚いたとか言っていた
彼女にとってアイデンティティーとなるべき民族の爆発なぞ ただの轟音に過ぎず
轟音以上でも以下でもないという意味で お腹の中にいるときに聴こえると言う砂嵐
みたいなものなんだろうと思った
エリーの左目からは後遺症のようなしつこさで涙がぼろぼろと出るときがあって
これぐらいしかあとはほんのりと青い肌しか彼女を宇宙人と見分ける方法はない
ティッシュあるよティッシュ、といって差し出したティッシュがぼろぼろと溶けた
駄目なの、普通の紙じゃ、とかいいながら特殊らしい繊維で出来てるっぽい縁の青い
ハンカチを押し当てて映画でもみたあとのようにぼろぼろぼろぼろと泣いていた
その姿はとても目立った 目立つことが愚かな事だと教えられて育った私はその事が
いまいましくあって早くここを出ようといった でもこうなると泣き終わるまでいないと
いけないんだとか言ってどういけないのって私はじれったく尋ねた もしそれが、彼女の
命にかかわることならば喜んで赦す用意があるのに「虫歯が痛くなるんだ」と大真面目に
言われて私は何だか泣きたくなってしまう そんなことばかりで
エリーは自分の星の不幸について全然しらないし興味もないと言ったが
こんな粘着力のある しかも全然不幸でない習性のために私を困らせるところをみると
少しはあの星に似てくれたらいいのにとさえ思うときがたまにある
あの星のひとたちが不幸だっていう前提があるから 私は彼女たちの賢さに納得して
彼女たちの地球のリズムに合わないじれったさも容認できているというのに
エリーはじれったい涙を地球が薄まるほどに流すまでは席から立ち上がれない
こんなふがいないじれったいもどかしい地球人になろうともしていない宇宙人を
抱えていることに私は自分自身の奥歯が傷むような痛みを感じてばかりいるけど
私はもはやこの地球に独りじゃない どうやら 地球はこれでもトラウマを余り
抱えていない方とみなされているらしく 地球を最後の希望として目指している星が
あと数百あるとエリーに何のためらいもない眼で教えられたときには
エリーのおばさんに星を爆発させる方法を真面目に訊こうと私は決意した
※この小説(ノベル)"エリーの青い肌と可哀想な星の出身ということ"の著作権はmerongreeさんに属します。
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