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作:
qpalzm

ある真夏の日、日はいつもより遠くにいた。それはいつもより涼しいわけではなく、ただいつもより遠い距離から倍に輝いた。遠くて、強い日差しが町をさしていた。風は決して吹かないこの町にはほこりが隅々に充満している。この町に風が吹かなかったのは2年前からだ。2年前、何らかの理由でこの町は風を失った。人々はその理由を知る事もなく、ただいつも通りに日々を過ごすのであった。外に風がないというものの、家の中ではウィンドキャッチャー、通称WC、という風らしき物を生み出してくれる機械があった。いまではウィンドキャッチャーを持つのが当然であった。そして町の中央にはWC工場が建設されていた。
「このごろ、町で変な事がおきてるんだってな。」そういって部品を磨いていた老人が少年にいった。老人は2年前からずっとウィンドキャッチャーを構造していた唯一な一人であり、風を失ったこの町では彼は欠かせない人物であった。
「じっちゃん、変な事って。風が吹かなくなったのはもう2年もたつんだぜ。いまさら変な事っていっても何を基準にして変っていえるか知らねぇよ。」少年はコカコーラのボトルからでたストローを咬みながら言った。少年はわりと小柄で色黒であった。眠そうな彼は、手のひらをテーブルに、そしてあごをその手のひらの上に休ませた。
「じっちゃん、コーラ、もういっぽん。」
「もう飲み終わったのか、相変わらず味わい方をしらねぇやつだな。」そういって老人は部品を置き、奥の部屋へと進んだ。老人はコーラのボトルを2本持って、少年が座っていたテーブルの上にのせた。
「知りたいか?変な事。」老人は少年にたずねた。彼はどうしても話したいという雰囲気をだしていた、それに気付いた少年は「ああ、言ってくれ。」と頼んだ。老人はニヤッと微笑み椅子をつかみ、ドスンッと座った。
「この町の先に、坂道があるだろ。」老人は右の方向に指を指した。窓から見えるその景色は森林で緑に染まった山を導く一本の砂とほこりが混ざっている坂道であった。
「つい先日、肉屋のチョップと八百屋のベギーがその道を歩いていたんだ。そんで彼らが森の山の中へ入っていったんだが、今にして2週間経っても彼らはこの町に戻ってきてないんだ。」
「おいおい、またそういう事を。そんな典型的な話、童話の絵本で何回も読んだぜ。」と少年はあきれて目を天井からぐるりとまわした。
「まぁ、聞いてろ小僧。典型的っていうのはおれも知っている。行方不明の不思議話なんて何回も孫に読まされたからな。でも、よく聞いてろ。ほら、おれの目をみろ。話を続ける。」
「話を続けるって言ったて、諦めろじっちゃん、八百屋のベギーなら今朝あいさつしたばかりだぜ。おれを脅かそうって無駄だ。俺はもう子供じゃねぇんだぞ。」
「こんなちっけぇ身体をして、コーラを三本がぶ飲みして、ストローしゃぶってるお前が子供じゃねぇってか?」老人は笑った。少年は彼をギロッとにらんだ。
「じっちゃんが尋常じゃないくらいにでけぇだけだろ。通常の大人と比べりゃこの身長もちいさくねぇ。」
「ま、背が一番低いというわけでもあるまいが、平均以下だ。以下。まぁ、子供じゃねぇっていうんなら老いぼれの話を最後まで聞け。」と老人はそう言い、少年の顔以上でかい手のひらでコーラのボトルを3本片手で持ち、ゴミ箱へヒョイと捨てた。少年はストローをまだ口にくわえながら咬み続けた。
「八百屋のベギーに挨拶したってか?じゃ、肉屋のチョップはどうした?」
「閉店だ。ゴールデンウィークの休業ってさ。」
「他の店はしまってんぇのに、おかしくねぇか?」
「しらねぇよそんな事。どうだっていい。気分転換だ。気分転換。」
「おめぇはまだ子供だな。考えてみろ、2週間前、二人は山の奥へと入った、そんでベギーはおれが気付いてないうちに、戻ってきて、いつも通りに運営してる。でも、そしたらチョップはどうした?彼は何処に行ったんだ、まだ森の中をさまよってるのか?」
「だから、ただの休暇をとってるだけのこと。じっちゃんはいつも深読みしすぎるんだよ。」
「だからこそだ。あの仕事熱心なチョップが、なんで休む。前代未聞だ。」
「何が言いたい。もうはっきりババンといってくれ。もうそろそろ、バレないうちに戻らねぇといけねぇんだ。」少年はストローを口から取り、老人に向けた。老人は席を外し、部品を持ち上げ、再び磨き始めた。「じゃ、早くいけ。どうせおめぇは俺の話なんて最初っから聞いてねぇんだ。」
「なに拗ねてんだ。まぁ、いい。夜までにはまたもう一度ここへ来るから、その時、聞く。途中で終る未完成の話しなんて俺好きじゃねぇけど。」少年はストローをゴミ箱にすて、WC工場のドアノブをまわした。少年がドアを開いた瞬間、町にあふれたほこりと、いつもより遠く、強く輝いている日差しが目に入った。「くそっ。」少年は目をこすり、ゴーグルをつけた。そして彼はバイクに乗った。
「ベギーだ。」と老人は急に言い出した。「ベギー・・・あいつ、チョップを殺した。」
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