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ストロボ・スターズ!第五話「届かぬ手紙・後編」 (完結作品)

作: 泰行@卵かけご飯

<1>


はに子「わあ。なんか、素敵・・・」

そこはスイートルームを思わせる煌びやかな一室だった。

心矢 「おお。なんだよ、居心地よさそうじゃないか!」

無数の蝋燭がゆらゆらと揺らめき、
端正な家具に囲まれたツインルーム。

男  「少し、お待ちください」

青年はそういうと、蓄音機のゼンマイを回し始めた。
程なく、心地よい音楽が鳴り響く。

心矢 「へぇ!それって電気式以前の奴ですか!」

心矢は興味津々と体を乗り出しじっくり観察する。

男  「停電ではラジオも動きませんから。
    退屈でしょうが、これでご容赦を」

柚  「・・・」

はに子「そんなことないですよ。いや〜、
    一時はどうなるかと思ったんだけど」

男  「それは、結構。では、夕食までしばらくの間、
    おくつろぎください」

青年は笑顔のあたしに会釈をし、廊下に出て行く。

男  「そうそう。三階はまだ補修が終わっておりません。
    危ないですから近づかないでください・・・でわ」


心矢 「・・・」


はに子「さーてと・・・。どうしたの柚ちゃん?」

柚  「・・・さっきのひと」

はに子「いいひとだったわね。最初見たとき
    なんだか薄気味悪くて・・・」


心矢 「変だ・・・」



はに子「そうそう。変だな〜って感じたけどさ、
    やっぱ人は見かけ・・・」

心矢 「この蓄音機、駆動音がしていない」

はに子「へ?」


その途端、スピーカーの音は不協和音なって
不気味な唸りを上げる。


心矢 「うわっ!!!」

はに子「な、ななな、なに!なによ!?」


柚  「はに子・・・」


はに子「どうしたの柚ちゃんっ」

柚  「・・・さっきの人。息してなかった」

はに子「え・・・」


ゴロゴロゴロ!!!!!



はに子「キャーーーーー!!!」

あたしは耐え切れず悲鳴を上げた。

心矢 「くっ!」


ガシャン!


心矢が蓄音機をテーブルからなぎ倒すと、
しばらく、もがく様な音を立てて事切れた。

心矢 「おい!なんかヤバイぞここっ!
    すぐ出ようぜ!」

柚  「コク・・・。はに子、立てる?」

はに子「うっ・・・ぐずっ。柚ちゃん」

柚  「怖くない」

はに子「うん・・・」


ガチャガチャガチャ!


心矢 「くっそ!鍵掛けやがったっ!」

はに子「うそ!?」

心矢は部屋の隅まで下がると、
全力で扉に駆け出し扉を蹴破る。

心矢 「なろおおおぉぉぉぉ!!」


バカン!


豪快な音と共に錠が吹き飛んだ。

心矢 「やった!」

柚  「さ・・・」

はに子「うん!」

あたしたちは部屋から抜け出すと
一目散に来た道を戻る。

しかし、その前方をあの青年が塞いだ。

男  「おや?どこに行かれるおつもりか?」

心矢 「うるせえ!俺たちは今すぐ帰るんだ!そこをどけよ!」

男  「帰る・・・そうですか・。



    なら!その娘を置いていってもらおうおおおおお!!!」



青年の青寒い眼差しが突如、
怒りに満ちた刃のような眼光へと変貌する。

心矢 「ぐっ!おい!はに子、走るぞ!」

はに子「う、うん!!」

心矢は柚ちゃんを抱え上げ、男の腕をくぐり抜ける。


男  「逃がすかーーーーあああああ!!!!」


男が腕を振り下ろすと、イミテーションの甲冑が
一斉に動き出す。


はに子「心矢!こっち!急いで!」

あたしは階段の前で心矢に手を振る。


はに子「っ!!」


ガシャンガシャン・・・。


ところが、下の階からも何体もの足音が
迫りつつあった。

心矢 「ちくしょ!挟まれた!?」

はに子「どうしよどうしよ、心矢!」

下から、そして背後からも剣を振りかざし迫り来る甲冑の群れ。
さらにゆらゆらと体を左右に揺らしながら青年が
じわじわとあたしたちに近づく。


心矢 「万事休すか・・・っ」

はに子「ちょっと!諦めないでよ!?」

心矢の腕の中で柚ちゃんが3階への階段を見上げる。

柚  「上・・・」

はに子「え?」

柚  「上に・・・行く」

心矢 「上・・3階なんて、逃げ道・・・」

柚  「大丈夫・・・」

あたしと心矢は顔を見合わせると
互いに頷いて階段を駆け上がった。


<2>


3階への階段を駆け上がるうちに
次第に壁や床、天井までもが
急激に時間を浪費するかのように老朽化していった。

再び真っ直ぐな廊下へ上り詰めると、
そこは同じ建物とは思えないほど朽ち果てていた。


ガシャン・・・ガシャン・・。・・。・・・。


しかし何故か、甲冑の足音が次第に
遠ざかっていくように思え・・・。

下の階段を覗くが、男が追ってくる様子がない。

はに子「なんで?あいつら追ってこないの?」

心矢 「わかんねぇよ。だけど・・・」

そう、こんなにも朽ち果てているのに、
前の場所より・・・。


優しい雰囲気。


そして、次第に嵐が過ぎ去り僅かだが
灯りがなくとも視界が利く。


柚  「やっぱり・・・音・・する」

はに子「え?」

心矢 「なにか聞こえるのか?」

あたしたちは柚ちゃんが指差す方へと走って行く。
ほんの僅かだが、ピアノの音が耳に広がり始めるのが解った。


この曲・・・。そうだ、聴いた事がある。

ベートベンの「エリーゼのために」。


心矢 「ここか!?」

心矢は足で扉を蹴り飛ばす。


そこには・・・。


はに子「ひっ」

心矢 「・・・マジかよ・・」


景色に浮かび上がるように
白く透き通った女の人がいた。


はに子「やだやだやだやだ!!!もう、いや!」

あたしは堪らず耳を塞いでうずくまってしまう。

心矢 「はに子・・・」

はに子「もう知らない!もう知らない!」

心矢 「おい、はに子」

あたしの肩を揺さぶる心矢。

はに子「・・・え」

あたしが顔を上げるとピアノの音が止んで、
女の人がこちらを見て立っていた。

はに子「・・・ゆ、ゆずちゃん・・・?」

こちらを悲しそうに見つめる女性は・・・。

その容姿はまるで柚ちゃんが成熟したような姿。

柚  「先輩、おろして・・・」

心矢 「あ、ああ」

柚ちゃんはピアノの方へと歩いていく。

はに子「ちょ、柚ちゃん!」

心矢 「待て・・・」

はに子「え」

手を伸ばしたあたしを心矢が制止した。

女性は柚ちゃんを悲しげに見つめたまま、
その行く先をそっと譲る。

その光景は何故か、心に灯りを灯した。

柚  「・・・」

柚ちゃんは誇りだらけの鍵盤をそっと撫でる。

そして、席について「エリーゼのために」を
奏で始めた。


柚  「・・・・。・・・。

    ・・・。・・・・。

    ・・っ」


演奏がふいにとまる。

柚  「ここ」

はに子「え、何?」

柚子ちゃんはしきりに同じ箇所を連打した。

柚  「・・・。・・・。

    ここだけ、音が変・・・・」

はに子「・・・わたしには、何も感じないけど」

心矢 「絶対音感」

はに子「え?それって何?」

あたしたちは柚ちゃんの傍まで駆け寄る。
女性はただそっと見守るだけだった。

心矢 「調律がおかしいのか?」

柚  「・・・四分の三度」

はに子「音が狂ってるの?なんでここだけ」

心矢 「・・・」

すると何も言わないまま、心矢は閉ざされた
ピアノの蓋を開く。

はに子「けほっ!げほっ!ちょっと心矢」

心矢はおもむろに体を乗り出し、響板の中を覗く。


心矢 「・・・おい、これ」


体を戻した心矢が手にしていたのは一枚の手紙だった。


<3>


はに子「なにそれ」

心矢 「弦に結い付けてあったんだ・・・」


・・・。


あたしは勇気を出して立ち尽くす女性に尋ねた。

はに子「あの、これ・・・これを教えたかったの?」

女性 「・・・」

女性は小さな涙を浮かべにっこりと微笑む。




・・・か・・に・・・つた・・って・・。



はに子「っ」

会釈をする女性。そして、その姿は静かに消えていった。


ゴロゴロゴロオオ!!!


女性が消え、直後再び雷鳴が鳴り響く。

すると、窓の閃光に浮かび上がり、
男が扉を塞ぐように現れた。

心矢 「ちくしょう!またかよっ!」


男  「ここには・・・近づかぬよう・・・・言ったでしょう」


うなだれる男は不気味なほど静かな口調だった。


男  「ここは・・一番、嫌いな場所なんだ・・・」


心矢 「うるせええ!!!」

心矢は男に飛び掛る。


ドコーン!!


心矢 「ぐあっ!」

はに子「心矢!?」

心矢 「くっっそぉ」

心矢は壁まで吹き飛ばされ立っていることも
出来なくなる。


男  「もう・・・いいや・・・みんな、死んじゃえよ」


男が心矢にゆっくりと近づく。

柚  「っ!!!」

しかし、その進行を柚ちゃんが両手を挙げて塞いだ。

心矢 「やめろっ・・・柚、お前らだけでも・・っ」


男  「・・・そうかい。

    君だけは僕の絵の中で永遠を与えてあげようと
    思っていたのに・・・」


柚  「ふるふる!・・いらないっ!・・・そんなの、いらない!」

男は一瞬、ビクリと肩をあげると
ギチギチと歯を食いしばって怒りに震えるのがわかった。

男が無言のまま柚ちゃんに近づく。

はに子「柚ちゃん!にげ・・・っ!」

あたしは無意識に握り締めた手紙に
はっとなった。

あの女性の言葉が脳裏に過ぎる。



女性 『彼に、伝えて』



あたしは手紙の封を千切る。


男  「・・・さあ、もう終わりにしよう」


柚  「っ!!!」

心矢 「逃げろ!柚!!!」




はに子「私の愛した、港晴さんへ・・・」



男  「!!!!!」


<4>


『私の愛した、港晴さんへ。

 あなたに本当の事を伝えられなくて、筆をとります。


 今、世界各地で戦火が広がりつつあります。


 ラジオはしきりに日本軍の勝利を伝えますが、

 その実、多くの軍人が倒れ民間人にも

 多数の死者が出ていると風のうわさで耳にしました。

 
 最前線では死に至らしめる病が蔓延し、
 
 ナースにですら病魔に冒され倒れていく

 それが現実だと。


 ここにいれば私はあなたに守ってもらえる。


 恐ろしい目に会う事もなく生涯を終えることも

 出来るかもしれません。

 
 けれど・・・。


 おそらく私はもう二度とあなたに会うことは

 出来ないでしょう。

 
 ですが、どうか忘れないで。

 
 あなた出会えて、紫苑は本当に幸せだったことを』


手紙を読み終える頃、あたしは涙を堪えられなくなっていた。


心矢 「・・・」

柚  「・・・」

港晴 「・・・。

    ・・・。

    ・・・。


    ・・・・・そんな。

    何で・・・なんで・・・・・」

柚  「ナースだった、ひいひい叔母様に聞いたとおり・・・」


港晴 「!!!」


柚ちゃんが静かに話し始めた。


柚  「・・・おばあさま様が亡くなる直前、聞かせてくれました・・。

    ずっと、待たせている人がいるって・・・」


港晴 「じゃ、君は・・・紫苑の・・」

柚ちゃんはただ静かに頷いた。

港晴 「ああ・・紫苑は、戻ってくれたのか・・・。

    それなのに・・・僕は・・僕は・・・・」

柚  「死を覚悟していたそうですが、
    おばあ様は・・・無事だったんです。

    おじい様に助けられて・・・。

    でも・・・戻った時には・・・もう、あなたは」

心矢 「あんたがピアノを弾けば気づくと思ったんだ、その手紙に」

はに子「でも・・・紫苑さんが出て行って、港晴さんは絶望した」


港晴 「・・・ううっ!うううううっ」  


彼は蹲りずっと泣いていた・・・。


<5>


あたしたちは三人、開かれた山道を歩いていた。
嵐が過ぎ去る頃、すでに夜の帳は下りて、
うっすらと街路灯が道を照らす。

はに子「ねえ・・心矢」

心矢 「ん?」

はに子「港晴さんは紫苑さんに会えたかな?」

あの後、一頻り泣いて、港晴さんは
あたしたちに笑顔を見せてくれた。

そして「ありがとう」の言葉を残して
何処かへ消えていったのだ。

心矢 「さあ、どうかな?」


ムッ!


はに子「ちょっと!?こういうときは二つ返事で
    頷くもんでしょ!?」

心矢 「はあ?知らねぇよ!そんなこと!?
    こっちは死ぬかと思ったんだぞ!」

はに子「あたしだって死ぬかと思ったわよ!
    てか、ひとっつも役に立たないしさぁ!!!
    何がルシアーよ!?」

心矢 「よしよし。分かった・・・」


すると、柚ちゃんが一人、テテテっと
あたしたちの前に躍り出る。

心矢 「なんだ?」

はに子「なに??」


そして、クルりと振り返った。


柚  「よし・・おもてにでろ〜」


二人 『・・・』


あたしと心矢はポカンとなる。

心矢 「・・なあ。今、柚の奴笑わなかったか?」

はに子「わらった・・・」


柚  「早く、行く。置いてくよ〜」


あたしと心矢も笑顔になって、
柚ちゃんの後を追い掛ける。


その先には、泣きじゃくるパパさんと
それを必死であやすママさんの姿、古庄家の別荘が
あたしたちを暖かく迎え入れてくれた。



次回予告!!

立ち退きを迫られる小さな孤児院。

そこにはまだ、大勢の子供たちと
懸命に子供たちを守るシスター・サヤカがいた。

悪い奴らの好きになんてさせないわ!!
あたしの歌でみんなを守るんだらかっ!

次回!ストロボ・スターズ!「聖女の祈り」

「主よ・・・どうか、子供たちをお守り下さい・・・」

※この小説(ノベル)"ストロボ・スターズ!第五話「届かぬ手紙・後編」"の著作権は泰行@卵かけご飯さんに属します。

この小説(ノベル)の評価
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この小説(ノベル)へのコメント (6件)

泰行@卵かけご飯

'11年3月25日 07:28

次第に「ストロボ・スターズ!」が
認知され始めました。

ありがとうございます!

そして、さらに周囲の方を巻き込み
波乱に展開していく予感がww

これからも、どうぞヨロシク!

__

'11年3月25日 09:58

この小説(ノベル)を評価しました:感動

なるほどwww

今回すげー感動した!!!

ゆのん

'11年3月25日 11:16

なんだかとっても感動しました
ってか柚ちゃんかわいいvv

泰行@卵かけご飯

'11年3月25日 13:42

なにげに「ユズ回」ですからww

一応の補足。

ベートーベンの「エリーゼのために」は
彼が残した楽曲の中でもとりわけ、
可愛らしいものとして認知されていますが、
実はこの曲は想いが届かない恋人への
悲恋歌だったのです。

ちなみにその相手とは柚ちゃんのように
小さな女の子だったとか・・・。

ベートベンはロリコン!?www

__

'11年3月27日 12:52

この小説(ノベル)を評価しました:感動

びっくりした後に感動して、すごい面白いです!
愛読しますww
ハッピーエンド大好き(*´ω`*)

スネカズラ

'11年4月29日 10:33

この小説(ノベル)を評価しました:あったかい

急展開で、でもすごくいい話でした。
とても読みやすい文章なので余計にすっと世界に入り込める感じです。

次で最後ですかぁ・・。
前編の冒頭は柚ちゃんの・・?それとも、、
なにかの伏線でしょうか。
おれが気づかなかっただけかなぁ。

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