自作の歌詞・詩(ポエム)・小説(ノベル)等のクリエイティブ系コミュニティサイト

ようこそ ゲスト さん

投稿した小説(ノベル)にコメントがもらえるコミュニティ

小説(ノベル)

[広告]

ストロボ・スターズ!第四話「届かぬ手紙・前編」 (完結作品)

作: 泰行@卵かけご飯

<1>

黒く淀んだ雲が空を覆いつくし、
まだ昼間だと言うのに、外はまるで夜のように暗い。

嵐が迫っているのだろう。

風も次第に強くなり始め、いっそ彼の心をどん底へと至らしめた。

「なぜなんだ!?私がこうまで引き止めて、
 何故、お前は出て行こうとする!?」

トランクケースを抱えた妻は、そんな彼に
落胆しきった表情で答えた。

「あなたのその傲慢さに、私は我慢ならなくなっただけよ」

「・・・っ」

彼は言葉に詰まった。

互いに添い遂げんと誓って10年・・・。

貞淑な妻の鑑とさえ思っていた彼女が、
こんなにもはっきりと拒絶の意思を示したのは、
その時が初めてだったからだ。

「さようなら、あなた」

彼は最後の言葉についに膝を突いた・・・。
吹きすさぶ風の中、消えていく妻。

「・・ああ・・あ・・」

「ああ、・・・うああああああああ!!!!!」


<2>


はに子「おっかしいな・・・」

今日も今日とてお客のいない事をいいことに
あたしはギターをかき鳴らしていた。

この前、柚ちゃんのために必死で
演奏した時はもっと・・・こう・・。

はに子「お父さん」

正治 「なんだ?」

あたしの座るソファーの向かい側、レジカウンターで
自慢のウエスタン・ブーツと長い足を放り出し、
いつものように英字新聞を読むお父さんは
ぶっきら棒に一応の返事をくれる。

はに子「練習してて下手になることってあんのかな?」

正治 「ああん?バカゆうねぇ。
    そんなことあるか〜」

はに子「だってさ〜・・・」


ポロン・・ポロン・・ぺきょん。


あ。ひょっとしてこれがウワサノ・・・。

はに子「もしかして、あたしスランプなんじゃっ!」

正治 「何がスランプだ。スランプってのは腕が立つ人間が
    ぶち当たる壁なんだよ。初心者に毛が生えたくらいの
    お前にゃ、壁すら見えやしね」

はに子「ちょっと!酷くなーい!?」

正治 「ま。音楽ってのはテンションも大事なんだ。
    ここぞって時、能力以上の事が出来ちまう・・・
    そんな時もあるのさ・・・どれ」

お父さんは急に立ち上がると、あたしのギターを取り上げる。

はに子「ああ!何すんの!?」

正治 「いいじゃねぇか、減るもんじゃねぇし」


ジャラーン!


はに子「!」

突然の音にあたしは硬直してしまった。

正治 「ほう・・・。流石、緒方のセガレだ。
    いいもん売ってくれたじゃねえか」


ジャーン!ジャーン!


はに子「・・・」

まるで、息を吹き返したかの様な凛とした音。

正治 「おし・・・。


『BE TRUE』


不確かな関係が心を凍らせていく
一人の夜はいつも辛い

だけど君と出会って心は翼となり
僕は生まれ変わったのさ

そこにある希望が胸を躍らせていく
そこにある光が
君への思い熱く照らしてる

I Love You, Yeah! I Love You, Yeah!
I Love You, Yeah! I Love You, Yeah!
I don’t know why you change my mind
Love is miracles

I Want You, Yeah! I Want You, Yeah!
I Want You, Yeah! I Want You, Yeah!
I don’t know why you wake up my soul
Yes, we can be true


    楽曲提供・1−3−0 実際のサウンドは1-3-0様の
               マイページよりご視聴いただけます。


はに子「・・・・」

あたしはおとうさんが曲を終えるまで
ポカンとした表情で呆けていた。

柚  「(パチパチパチ)」

はに子「わっ!!!え!柚ちゃんいつの間に!?」

柚  「・・?」

正治 「ほれ。ギター」

はに子「え、あ、うん・・・。てか!お父さんてばギター弾けたの!?」

正治 「俺を誰だと思ってんだ?マエストロは伊達じゃねえよ」

はに子「・・・。マエストロて棒振るだけじゃん」

柚  「くすくす」

正治 「おいおい・・・」

はに子「だって、そうじゃん!?」

最近、柚ちゃんが変わり始めた。
相変わらず表情はないけど、よくこうして声で笑ってくれる。

正治 「まあ、いいか。そんで柚がなんでここにいんだ?」

柚ちゃんが学園に編入してからこっち、
昼休みは決まって屋上でギターを弾いていた。

そんなあたしをじっと見つめる柚ちゃんは
ある時ふいに「わたしも・・やりたい」と、言ってくれた。

引っ込み思案の柚ちゃんが勇気を出して
自身を主張したのだ。

正治 「そんで、バンドでもやろってのか?」

はに子「まだ、そうゆうんじゃないけどね」

柚  「・・・コク」

正治 「ここじゃ、やめてくれよ。おちおち昼寝も出来やしねぇ」

はに子「ええっー!あんで!?いいじゃん!
    せっかくお泊りで練習しようと思ったのに」

正治 「冗談だろ?夜まで騒がれちゃたまらねぇよ」

柚  「・・・」

はに子「お父さんのケチー!!!
    柚ちゃんもなんか言ってや・・・ん?」


クイクイ。


可愛らしく袖を引く柚ちゃんは
あたしの顔にケータイを近づける。

はに子「え?え?なに???」

柚  「電話・・する。ちょっと・・・待ってて」

はに子「へ?」

正治 「なんだぁ?」

あたしとお父さんは柚ちゃんの謎めいた行動に
すっかり毒気を抜かれていた。

柚ちゃんはケータイの電源を入れ、
器用に短縮ダイアルを入力する。


トゥルルル・・・ガチャ。


柚  「もしもし・・・」

???『ゆずーーー!?何かあったのかい!?どうしたんだい!?
    まさか!誘拐!?わあああああずずうずじ!!!』

その声は柚ちゃんがわざわざ耳を
遠ざけたくなるほどに混乱し、
叫び声なんて音割れしてよく聞き取れない。

正治 「古庄の声か?」

はに子「・・?柚ちゃんのお父さん???」

パパ 『犯人につぐ!!そこを動くんじゃない!すぐにGPSで
    お前の居場所を・・・』

柚  「パパ・・・違う」

パパ 『・・へ?』


<3>


心矢 「そうか、そうか。だいたい飲み込めた」

約30分後、あたしたちはリムジンバスの中だった。
そして、着の身着のままの心矢までいる。

心矢 「で、なんで・・・俺まで・・・・
   
    拉致られなきゃならんのだ!?」

はに子「あはははは・・・」

これには流石のあたしも同情せざるを得なかった。

柚ちゃんがパニくるお父さんに一言「練習場所が欲しい」、
そう言って間も無く、あたしの家の前に
この前の執事さんと数台のリムジンが現れた。

危うく黒服のコワモテたちも同伴の運びと
なるところだったが、
柚ちゃんが「格闘技の世界チャンピオン」が
一緒だと偽ってくれたおかげで最悪の自体は免れた。

以前はどうやら、あたしのお父さんが
執事さん以外を追い返したらしい。

柚  「・・・せんぱい・・ごめんなさい・」

心矢 「うっ・・・ま、まあ。乗っちまった船・・
    いや、リムジンだし・・」

はに子「それにしても柚ちゃんのお父さん、すごいね。 
    ・・・いろんな意味で」

柚  「パパ・・心配性。ママが呆れるくらいに。
    ケータイも・・電源、切って置かないと
    10分置きに・・鳴る」

二人 『・・・』

あたしと心矢は苦笑いを浮かべるしかなかった。

執事 「お嬢様、まもなく別荘にご到着ですよ」

柚  「わかった・・・」

柚ちゃんは据付のパーソナルテレビに返答する。


二人 『金持ちは違う。いろんな意味で』



<4>


執事 「どうしたものでしょう・・・」

はに子「う〜ん」

別荘を目と鼻の先にして、舗装された山道の
ど真ん中を大木が塞いでいた。

あたしたち全員が外に出て知恵を絞るが妙案は浮かばない。

心矢 「流石にどうしようもないだろ?
    引き返すしかないぜ・・・」

はに子「え〜!?ここまで来てそりゃないわよ」

柚  「・・・コク」

執事 「ここから5分程度の距離ですから、
    歩いて迂回すれば・・・」

はに子「あ!それ、良いじゃない!」

心矢 「リムジンほっぽって行くってのか?人気のある場所じゃ
    ないが・・・幾らすると思ってんだよ」

はに子「うっっ」

柚  「別に盗られても・・・平気」

執事 「ええ。この程度の額、古庄コーポレーションの
    年間の事務用品代くらいでしょうな」


・・・。


心矢 「よし!歩くか!」

はに子「そうね!・・・・・・山だし!」

心矢 「山だしな!」

二人 『あはははは!!!』


<5>


はに子「ちょっと、心矢!本当に合ってんでしょうね!?」

心矢 「だ、だだだ・・大丈夫に決まってんだろ!?」

あたしたちはリムジンを執事さんに任せ、
手書きの地図を頼りに山道を歩いていた。

しかし、かれこれ20分は森を彷徨っている。

おまけになんだか・・・。


ゴロゴロゴロ・・・。


お願いだから、到着するまで降らないでよ?

はに子「柚ちゃん、平気?」

柚  「大丈夫・・・」

心矢 「無理するな。やっぱ、引き返すか・・・」

柚ちゃんの体は小さい。
だけど、柚ちゃんがあたしたちより
ずっと疲れやすいのは視力以外の五感を
フルで使っている所為だろう・・・。

柚  「・・・。

    ・・・。

    ・・・静かに・・」

心矢 「どうした?」

柚  「ピアノ・・・」

はに子「へ?」

柚ちゃんは突然そう呟くと両手を耳に当て黙り込んだ。

柚  「あっち」

はに子「あっち?あっちからピアノの音がするの?」

心矢 「もしかして、別荘が近いのか?」

柚  「わからない・・。でも、聴こえた。

    イ長調・・。ミ・・。シ・・。」

あたしたちは柚ちゃんの指差す方向へ
真っ直ぐに進む。

柚  「ミ・・・レ・・・」

その間にも、空はしきりにゴロゴロと音を立て続けた。



柚  「これ・・・エリーゼ?」



ゴロゴロ!ドシャーーーーン!!!



はに子「きゃーー!!!」

柚  「ムギュ」

はに子「わああ!ごめん!大丈夫!?」

反射的に柚ちゃんを抱きしめていた。
でも、なんだか可愛い音が・・・。

心矢 「相当近くに落ちたな・・・」

心矢が辺りを警戒する。
山火事にでも巻き込まれたら堪らない。

心矢 「・・おい、あれ・・・?」

はに子「え?何・・・・ああ!別荘じゃない!」

木々に阻まれ僅かだが、建物が木々の間から
垣間見えた。


<6>


ザー・・・。


あたしたち三人は洋館の前に立っていた。

心矢 「なあ・・・。本当にここなのか?」

柚  「多分」

落雷の後、雨が降り出したのを期に、
柚ちゃんの言うピアノの調べは聴こえなくなっていた。

あたし「でも・・なんてゆうか・・・」

執事さんの話で聞いた明治初期の洋館建築であることに
変わりはないが、明かりが灯っておらず人の気配を感じない。

心矢 「まあ、立ってても仕方ない。
    雨に濡れたら、お前のギターもやばいからな」

はに子「う、うん」


コンコン。


心矢は重く重厚な扉のドアノックハンドルを鳴らす。


コンコン。


心矢 「・・・やっぱ、人がいないのか・・?

    ・・・あれ」


ギイイイイ・・・。


心矢がノックするうち、思いのほかあっさりと
しかし、気味の悪い音をたてて扉は開いた。

はに子「あいて・・・る、わね」

心矢 「おい、入ってみようぜ・・・」

扉を抜け、エントランスと思われる場所が
目の前に開けるが、中は水を打ったように静まり返っていた。

心矢 「誰かいませんかーーー!」

心矢はどこぞに向かって声を張り上げた。
確かにこういう時は叫んだ者勝ちかもしれない。

はに子「すみませーーーん!」


ゆら・・・。


はに子「・・・?」

暗がりの中で小さな光が揺らいだ気がした。

心矢 「誰かいませっ」

はに子「心矢」

心矢 「なんだよ?」

はに子「なんか・・光が・・・・って!
    近づいてくる」

心矢 「おいおいおい!」

柚  「?」

あたしと心矢は柚ちゃんに寄り添って
ガタガタと震えあがる。


男  「どなたですか?」


二人 『へ?』

その光は蝋燭の灯火だった。
暗闇の中から現れたのはどこか古いめいた
しかし、小奇麗な格好をした、
年の頃30代の長身の青年だった。

心矢 「あの、俺たち古庄って家の者で・・・」

男  「古庄・・・ああ」

一瞬、間があったのが気に掛かったが、
男はやはり心当たりがあるようで。

はに子「この娘のお父さんがここの建物を貸してくれるって・・」

柚  「・・・?」


男  「っ!」


ほんの僅かだった。蝋燭の灯りでは不確かだけど、
男の表情が強張ったことに気づき、
あたしと心矢は顔を見合わせる。

男  「ええ・・ええ。そうでした、そうでした」

しかし、男の口調がさっきよりずっと
柔らかくなったことであたしたちは
肩の荷を降ろした気分になっていた。


<7>


あたしたちは廊下を進む。

エントランスにいた時には気づかなかったが、
こうして歩いてみると、どの調度品も
真新しい輝きに満ちている。

しかし、外はすでに嵐だった。

心矢 「館内の灯りはどうしたんですか?」

男  「それが、先の落雷で落ちてしまいまして」

心矢 「やっぱり」

心矢はどこか安堵した表情だった。


ところが、しばらくして廊下の途中で
あたしは妙な違和感を覚えた。


はに子「あの・・・壁掛けの絵・・」

男  「・・・ああ。私が趣味で描いたものなんですよ。
    お気に召しましたか?」

はに子「・・え、ええ。まあ」


どこもかしこも、見つける絵には
すっぽりと何かが抜け落ちたような感覚が後味を残す・・・。


男  「さ、着きましたよ」

男が扉の前で立ち止まると、室内に私たちを
招き入れた・・・。




次回予告!!

甲冑の群れが迫り、あたしたちは
追い詰められていく。

もう逃げ場がない!

その時、美しい女性があたしたちに
託した唯一つの希望。

必ず伝えるわ!あなたの想い!!


次回!ストロボ・スターズ!「届かぬ手紙・後編」

「すれ違いが生んだ悲劇・・・。これ以上繰り返さないで」

※この小説(ノベル)"ストロボ・スターズ!第四話「届かぬ手紙・前編」"の著作権は泰行@卵かけご飯さんに属します。

この小説(ノベル)の評価
評価項目評価数
好感触 2
合計 2
[広告]

この小説(ノベル)のURLとリンクタグ

この小説(ノベル)のURL:
この小説(ノベル)のリンクタグ:

この小説(ノベル)へのコメント (6件)

泰行@卵かけご飯

'11年3月25日 07:25

予想外の長さに・・・。
なので、前後編に急遽変更です。

申し訳ない。

__

'11年3月25日 09:52

なんか怪しい雰囲気が・・・・。

__

'11年3月25日 16:21

この小説(ノベル)を評価しました:好感触

ネ申マズ料理人さん
読みましたよ。

長編ですね。

それと挿入歌の「Be True」
宣伝もしてくれてありがとうございました!

泰行@卵かけご飯

'11年3月25日 16:45

いえいえいえ!
使用許可ありがとうございました!

UKロックをカウボーイ姿で歌うのも
どうかな〜?と思ったんですが、
なんと言っても、かつて世界をまたにかけた漢ですから、
国境なんてあってないものなんじゃ・・・と(笑




__

'11年3月27日 12:43

この小説(ノベル)を評価しました:好感触

一話からここまで読んでみたけど、どれも面白くて気に入りましたっ!!
柚ちゃんが可愛い(*´ω`*)!
はに子ちゃん頑張れー!

泰行@卵かけご飯

'11年3月27日 12:46

柚ちゃん人気爆走中です。
はに子の立場が・・・w

コメントを書く

登録済みのユーザーは ログイン してください。
登録済みでない方は 新規登録 してください。

新規メンバー登録(無料)
第4回みんなのライトノベルコンテスト「しまのわライトノベルコンテスト」
広島で開催!コスプレをはじめとするジャパンカルチャーイベント「コスカレード」
  • 公式サークル みんなの歌詞
  • 公式サークル みんなの詩(ポエム)
  • 公式サークル みんなの小説(ノベル)
  • 公式サークル みんなのイラスト
  • 公式サークル みんなの写真(フォト)

ランキング

※ここでは2018年5月17日のデイリー表示回数ランキングを表示しています。※同順位者が多すぎる場合はすべてを表示しきれない場合があります。

サポートサイト

J@P