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ストロボ・スターズ!第一話「ビギナー・スタート」 (完結作品)

作: ネ申マズ料理長

<1>


ピン、ポーン・・・

すべるように扉が開き、インターホンが店内に木霊する。

心矢 「いらっ・・・なんだ、おまえか」
はに子「ちょっ!な、なによ、その態度!?」

入店早々、第一声はこっ酷い仕打ちだ。
心矢はあたしを一瞥するだけで、再び仕事へと戻った。

はに子「あんにゃろ・・・」
悟  「いらっしゃいませ。はに子さん」
はに子「っ!」

突然背後から掛かる声。

はに子「わっわ!・・・お、驚かせないで下さい」

悟  「くすくす・・・。はに子さんの驚いた表情は
    ある種、私の清涼剤のようなものですから」
はに子「・・・っぐ」

この兄弟は・・・まったく。

悟  「で、とうとう楽器を始める気に?」
はに子「・・ええ・・・まあ・・」

ここは私の街、唯一の楽器屋『ストロボ・ギターズ』。
とある理由から楽器に触れられなかったあたしは、
ある日を・・そう、この兄弟と出会った夜、
ついに楽器に触れられるようになったのだ。

と言っても、まだ怖い。
触れるだけで体中に電気が走るような感じだったから・・・。

心矢 「なんだ。全然へっぴり腰じゃないか」

ショーケースの間から心矢の嫌味だけが聞こえた。

はに子「う、うるさいわね!?仕事しなさよ!仕事!」
心矢 「へいへい」

悟  「くすくす。心矢君は、はに子さんが来店するのを
    本当に楽しみに待ってたんです。
    許してあげて下さい」

はに子「っ!」

心矢 「なっ!勝手な事抜かすな!」
はに子「そ、そうよ!こんな冷血漢に、そんなっ」
心矢 「おい!誰が冷血漢だっ」

悟  「くすくす・・・」

一段も二段も上から見下ろす悟さんは心底楽しそうだった。

はに子「・・・」
心矢 「いつか地獄に落ちるぞ、兄貴」

この店はまったく、ホントにまったく。


<2>


悟  「それで、やはりギターですか?」

はに子「・・・ずっと、憧れだったから」

私を生んで直ぐに亡くなったらしいあたしのお母さんは、
すごく立派なシンガーだった・・・らしい。

って、よく知らないんだよね。実は。
お父さん、あんまりお母さんの話しないから・・。

はに子「・・・」

壁一面、天井まで光を照らし返すギターを見上げ、
写真の中でしか知らないお母さんの顔を思い出す。

心矢 「・・・。・・・な」
悟  「どんなギターがいいでしょうね?」

はに子「えっと・・・」

悟さんの背後で急にそっぽを向いた心矢。

はに子「何よ」
心矢 「・・なんでもねえよ」

ふん!感じ悪い奴!

心矢 「・・・」

悟さんが一瞬、心矢に微笑み掛けた気がした。


<3>


はに子「わー!これなんかシマシマがキレー!」
悟  「最近女の子に人気のモデルですよ」

無数に並ぶギターたち。
どれもあたしを待ってるーっ!って、感じがする!

心矢 「おい・・・」

はに子「おお!こっちの単なる黒かと思ったらラメラメが
    入ってる!」
悟  「お目が高い。こちらギャラクシー・ブラックと
    呼ばれる限定カラーのモデルになります」

心矢 「・・おいっ」

はに子「ナニコレ!ナニコレ!弦が7本もあるしっ!!!」

悟  「流石はに子さん。お目が高い。
    これぞ、プロ御用達の7弦ギ・・・」

心矢 「ハニーマスタード」

はに子「何だとコラー!!!」

あたしの名前は増田はに子。
そう、あだ名がハニーマスタード・・・怒。

心矢 「お前、いくら持ってんだよ」
はに子「・・・?」

心矢 「だから、予算はいくらだっつってんの」

はに子「・・・ふっ」

こいつは相変わらず口の利き方を知らない。
誰にモノを言っているのか。

はに子「ふふふっ・・・。これよ!」

あたしは3つ指立ててこの愚か者を牽制した。

心矢 「3千円」

はに子「よし!表に出ろっ!!
    バカじゃないの!?3万よっ!さんまん!」

悟  「くすくす」
心矢 「・・・」

あれ。

あれ?

・・・あたしのイメージでは、

心矢 「客扱いしなくて悪かったよ」
悟  「VIP試奏ルームへどうぞ、お嬢様」

あれ・・?

あれ・・・。

心矢 「ここいらの値札、お前には0が一つ
    消えて見えるらしいな」

はに子「・・・」

悟  「くすくすっ」

ば、ばか言って。そんな高いわけ・・・。

ひい、ふう、みい・・・。

はに子「36万円!?!?!?!?!?」

悟  「ぷぷぷっ・・・!」

腰を抜かし、床に経垂れ込むあたし。

はに子「あわあわあわ」
心矢 「兄貴。分かっててやってたろ?」

とうとう堪えられなくなった悟さんが
体をよじって笑い出す。

心矢 「はぁ」


<4>


すっかり弱気のあたしは
仔猫ヨロシク、心矢に首をつかまれたまま
店内の片隅へと引きずられて来た。

心矢 「お前はこっちだ」
はに子「ふえ・・・」

そこには色とりどりのギターが並び、
どれもかれも、2万円前後の値札がぶら下がっていた。

悟  「ようこそ、初心者コーナーへ」
はに子「ギロ」
悟  「ギターの相場についてお話しましょうか」

いなされたっ!

悟  「初心者モデルの価格帯はおおよそ
    〜5万円前後まで。
    中級者モデルだと、〜15万円前後。
    上級者モデルは30万クラスですね」

心矢 「もちろんそれ以上も存在する。
    下手をすれば一軒家の方がまだ安い・・・ってのもあるな」

はに子「い、一軒家!?」

悟  「まあ、そこまでの価格になりますと、
    嗜好品、アンティーク扱いです」

はに子「や、やっぱり高い方がイイワケ?」

悟  「まあ、そうですね。高いものは高いなりの理由がありますから」

心矢 「ああ。一昔前ならともかく、
    今の楽器市場は激戦状態だ。どこのメーカーも
    無意味に値段を上げられないでいる」

悟  「当然、楽器な訳ですから高価なものほど
    サウンド・プレイアヴィリティー・概観・・・
    より優れたものに変わって来ます」

はに子「う・・。じゃ、じゃあ、
    ここいらのただのオモチャなんじゃ・・」

心矢 「確かにそう言う連中もいる」

はに子「ガーン!」

おもちゃ・・あたし、おもちゃで始めるの・・。

悟  「しかし、それも全時代までの話」
はに子「へ?」

心矢 「実はここに並ぶ初心者モデルは全て、
    中国・韓国・台湾で製作されたものなんだ」

はに子「???」

悟  「低価格だと言うことです。
   
    楽器の値段はほぼ人件費と言っていいですから。
    例えば最も盛んに、また古くからギター製作を始め、
    世界に広めたアメリカの職人は誰もが一流の技術を持っています」

心矢 「ああ。本当、バケモノ揃いだったよ」

悟  「次いで我が日本もエレキギターに関してはすでに
    キャリア組みと言ってもいいでしょう」

はに子「中国とかは・・・?」

心矢 「ごく最近だ」
はに子「ダメじゃん!?」

悟  「くすくす。まあ、歴史においてのごく最近ですから
    すでに30年以上が経過しています」

はに子「すごっ!」
心矢 「そうだな。俺よりキャリアを積んだ職人も増え始めた」

はに子「じゃあ!」

心矢 「ああ。安心しろ、少なくとも店にあるものは
    全部俺が目を通したから」


【はに子のギターメモ!】

それでも心矢のバカが言うには安心仕切る事は出来ないらしい。
ギターに限らず、楽器そのものは根本的にはしっかり作ってあっても
ほとんど未調整状態で小売店に届くみたいだから。

楽器屋さんで買うならまだしも、
ネット販売を主流とするところだと、使いにくいままに
お客に届くとか。
もし、ネットなんかで購入する場合はギターの出来る人、
もしくは購入後楽器屋さんに「使いやすくして」と調整をお願い
することが大事だって!


はに子「迷うなぁ・・・」
心矢 「そうだな」
はに子「え?」

以外・・・。てっきり、「早く決めろ。邪魔だ」
とか言うと思ったのに・・・。

・・心配・・してくれてる・・・?

心矢 「さんまん!・・しか、持ってない訳だし。
    さんまん!しかな・・」

カチン!!!

はに子「おみまいするぞ!コノヤロウ!?」

ガバッと立ち上がるあたしの肩をぽんぽんと
叩いてなだめる悟さん。
実に楽しげに・・・。

悟  「まあまあ。高校生には3万は大金ですからね。
    しかし、まあ。普通は事前に調べるもんですが」

はに子「その口は毒しか吐かない構造なんですか?」


<5>


はに子「あー!!きめらんない!どの子も
    あたしをキラキラした瞳で見つめてるもの」

心矢 「・・・・・・・・・」

はに子「あによ!?」

心矢 「べぇつに・・・」

悟  「それではギターを選ぶ基準についてお話しましょう」
はに子「また、始まった!?」

悟  「初心者さんの質問で最も多いのは、
    『なにが違うのか分からない』
    というものです」

はに子「見た目以外、選ぶ基準なんてないじゃない」

心矢 「初心者のレベルにも至ってないのか。お前」
はに子「ナンダト!?」

悟  「大別してその違いは3つ。
    1・サウンド。
    2・重量。
    3・フィッティング、です」

はに子「ふいって・・・?」

心矢 「ひとつひとつ説明してやる。
    
    まず、1・サウンド。
    はっきり言わせてもらうが一番初心者が
    気にしなくていいことだ」

はに子「えっ!待ってよ、一番重要じゃない!?」

悟  「心矢くん」
心矢 「なんだよ。やれってか?」
悟  「私はクラシック専門ですから」

面度と言いつつ心矢はギターを次々に鳴らし始める。


ギュイーン!!!


直後、床を揺らして体に伝わる音の粒。

はに子「ふぁ・・・」


ティラリラ、ティラリラ!


それはまるで、突然息吹を与えら得れたかのように、
生き生きとあたしに届く。

はに子「わあああ!」

また一本また一本と次々弾いていく心矢。

悟  「どうです?」

はに子「かっこいいいいいい!!!」
心矢 「っ」

はに子「ギターが!!!」

心矢 「よし!表に出ろ!」
はに子「なにがよ!?」

悟  「いや〜、お二人は本当に仲がいいんですね」

二人 『おいっ!』

悟  「心矢君は子供の頃から無愛想で・・」
心矢 「聞けよ!?人の話!」


<6>


心矢 「で?違いは分かったのか?」
はに子「なにがっ!」
心矢 「ぐっ・・・この、ハニ」

悟  「音の違いに気づかれました?」
はに子「え?」

そういえば、そんな話だった・・・。

はに子「え、えっと・・、こっちのが・・音が高くて・・」
心矢 「お前今、何も考えずに喋ってるだろ」

悟  「つまりそういうことなんです。
    経験者はこの違いが明確に分かります。
    ですが、楽器経験のない初心者の方はまず解らないでしょう」

心矢 「ああ。だから、選択肢から1・サウンドは除外だ。
    十分に腕を上げてから買い換えても後悔はないだろう」

はに子「なんか、お腹の据わりがワルイけど、確かに・・・」

悟  「残る二つ、2・重量と3・フィッティングですが・・・」
はに子「わかった!3番除外!だって外来語(カタカナ)だから!」

心矢 「なぞなぞかよ・・・」

悟  「ブー!不正解!おしーっ」

はに子「間違えたーっ!?」
心矢 「二択でおしいもなにもないだろっ!?」

悟  「次に除外するべきは2・重量です」
はに子「やっぱねー。そうだと思ったんだー」

心矢 「・・・疲れる」

悟  「さて、ギターの重量ですが、軽いものはだいたい
    2〜3キロ。重いものでは6キロ、あるいはそれ以上に 
    重くなるものもありますが・・・・」

はに子「やっぱ正解じゃない!」

心矢 「初心者モデルはほぼ軽い」

はに子「?」

悟  「そうなんです。初心者モデルで使っていて苦しくなる
    重量のギターはないと言っていいでしょう」

はに子「つまり、初心者用に軽くしてあるってこと?」

悟  「そうではないんです。これは心矢君に
    お任せしましょう」

心矢 「まあ、専門だしな・・・」

はに子「むっ!」

こいつに説明されると、良くわかんないけど屈辱的だわ。

心矢 「これはギターに限った話じゃないが、
    楽器に使われる木材、通称・トーンウッドは
    良い鳴りを持つものほど重量が増す傾向にある」

はに子「うわっ!不便〜」

心矢 「コイツ・・・。ゴホン。
    
    それは、木の導管が高い密度を持っているからなんだ。
    密度が高いほど、より強い振動を起こす。
  
    つまり、安価な楽器に使われる木材は
    この導管密度がスカスカで軽いという訳だ」

はに子「・・・ふ、ふ〜ん」

悟  「それでは唯一、初心者が選ぶ基準にするべき
    フィッティングのお話です」


<7>



はに子「フィッティングってつまり、どういうこと?」

心矢 「ほら、こいつ持ってみろ」
はに子「ちょ、なにいきなり」

心矢はおもむろにあたしに、見た目の違う
ギターを交互に握らせた。

心矢 「そう・・・ポーズだけでいい。
    あ、手はもう少し・・」
はに子「・・っ」

ち、近いよ!ちかいよ、このうすらぼけっ!

手、てー!かさねんな、バカヤロー!

心矢 「どうだ?」
はに子「やんのかコノー!?」

心矢 「は?」

悟  「お顔が赤いようですが、具合でも悪いのですか〜?
    くすくすっ」

はに子「なんでも・・・ない・・ブツブツ」

心矢 「どうだ?体に当たる感じとか、違ったろ?」
はに子「ま、まあね!」
悟  「そうでしょう、そうでしょう」

ぐっ!意味深にうなずかないでよっ!

はに子「そうねっ!1本目より、2本目が握りやすかった
    気がする!!」
心矢 「なに怒ってんだ?」

い、いいい、言っとくけど、
好きとか、嫌いとか!そんなんじゃ・・・違う違う!
嫌い!こんな、ブ男・・・でもない・・
もやしみたいに・・・スレンダーな・・
優しさの・・かけらも・・・・・・・・・・。

・・・・・。

・・・・・。


ぽしゅん


心矢 「なんか、フリーズした・・」
悟  「心矢君の所為ですよ(笑)」
心矢 「俺かよ!?ってか、なんだよカッコ笑いって!」


【はに子のギターメモ!】

そんな訳で、初心者しょくん!
まずはフィッティングが重要ってことらしいよ。

要するに体格に合うかどうかってことらしい。

実はこれに関しては高額な本土アメリカ製より、
日本はもちろん中国・韓国・台湾製のほうが
使いやすいこともあるみたい。

言われてみればそうね。
アメリカの人はみんな体おっきいもの。

やっぱりそれにあわせて、ギターやベース
のサイズも一回り違ったりもするんだって!



次回は、初心者向けギター習得、
マル秘術のお話だよ!!

※内容は予告なく変わることがあります。ご了承下さい。

それじゃ、また見てね〜〜〜!!!




   






 




※この小説(ノベル)"ストロボ・スターズ!第一話「ビギナー・スタート」"の著作権はネ申マズ料理長さんに属します。

この小説(ノベル)の評価
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おもしろい 2
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この小説(ノベル)へのコメント (11件)

蒼樹 矧

'11年3月21日 17:06

な、ながい・・・
よくかけましたなぁ・・・
おれもノベルかいてるんすけど
またあのカニバリズムだしwww
ま、読んでねw

ゆのん

'11年3月21日 17:38

確かに長かったですけど、スラスラ読めました^^
なにより心矢とはに子の掛け合いがおもしろかったですww
全然知らなかったギターの知識も身に付きましたしwww
すごく良いと思います^ω^

リュイト

'11年3月21日 18:32

おもしれえええええ!!!ギターやってる俺にとって参考になるし、内容も面白い!才能ありますね、マズさん!!!!

澪+

'11年3月21日 21:25

この小説(ノベル)を評価しました:おもしろい


凄く面白かったです!!!((
ギターやってるんで色々為になりました(´ω`*)
心矢くんめっちゃカッコいいです!!

1-3-0

'11年3月21日 22:13

この小説(ノベル)を評価しました:好感触

とても面白かったです。
僕はギターの知識が余りなく
聴くほうばっかりですからとても勉強になります。
また書いて下さいネ。

ネ申マズ料理長

'11年3月22日 10:43

ありがとうございます・・・涙

五稜ゐよ

'11年3月24日 19:29

この小説(ノベル)を評価しました:素敵

素敵→すごい と脳内変換してくださいw

すごいです!いろいろすごいんですが……
とりあえずギター未経験の私には情報がすごく
おおーっってかんじでした><

ちなみに私は悟さん派です^^*

__

'11年3月27日 12:22

この小説(ノベル)を評価しました:おもしろい

忙しくて読むの遅くなってごめんなさい(´・д・`)
面白いです!!
このお話にボクの詞が使われるんだぁ!、って思ったら、嬉しくてワクワクしてます!
よろしくお願いしますねぇっ!

ネ申マズ料理長

'11年3月27日 12:26

読んでくださってありがとう!

誤字脱字多くてごめんなさい!
最終的にまとめあげるつもりなので、
その際、訂正したいと思います。

ちなみに第二話目から、雰囲気が変わってきますw

最近ようやく、いろいろ掴めて来たとこですから(汗

スネカズラ

'11年4月28日 11:37

この小説(ノベル)を評価しました:元気が出る

はに子さんといっしょに、おれも ゴーゴー っす。
おれのアコギは、「フィッティング」が悪いみたいですw
ネックもそっている(はずな)ので、心矢さんに直してもらしたいっすねぇ・・。
バレーコードの押さえ方とかもやるのかなぁ。
楽しみは次に取っておいて、学校行きますw

ネ申マズ料理長

'11年4月28日 13:07

読んでくれてありがとう!
しかし、ネックが反ってるのは痛いね(苦笑

最近バイトの休みもなく、コラボコラボで忙しくて
続きがかけてないんだよね(汗

5月からまた頑張るぞb

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