自作の歌詞・詩(ポエム)・小説(ノベル)等のクリエイティブ系コミュニティサイト

ようこそ ゲスト さん

投稿した小説(ノベル)にコメントがもらえるコミュニティ

小説(ノベル)

[広告]

アナザー・ワン (執筆中)

作: はるあ

 灰色の止まった世界の中で一際目立つ、真っ白い霧。そしてそれを切り裂いて襲い掛かる、真っ黒い巨大な鉄の爪。そしてそれは、そのまま霧を創り出した本人をも切り裂いた。
 モノクロの世界に更にもう1つの色彩、真っ赤な血しぶきが飛び散る。切り裂かれ、弾き飛ばされるようにして倒れたのは、若い女性だ。
 すぐ側にいた若い男性がその倒れた女性の前に立ちはだかり、真っ白な霧から逃れようともがく鋼鉄の爪に向かって、持っていたマシンガンを撃ち放つ。だが、やはり鉄の爪には効果が無い。
 しかし鉄の爪の方も、その白い霧の中からは出て来られないようだ。
「グオオ……」
 深く巨大なうめき声が霧の中から響く。
「くそっ。おい、大丈夫か」
 若い男性が叫んだ。だがそれは背後に倒れている女性にではない。霧の側で剣を持ってうつ伏せに倒れている、もう1人の細身の男に向けたられた言葉だった。しかし返事は無い。
「……双子よ。しかも本体はドリフターだわ」
 血まみれの女性が、かすれた声で言う。
「おまけにDは鉄のエレメンタルか。一体どれだけ怪物じみてるんだ、こいつは」
 そう言いながら若い男はマシンガンを捨て、懐からごそり、とバズーカ砲を取り出す。どう考えてもそれが収まっている場所などありはしないのにだ。
「まだ持ちそうか?」
 若い男がバズーカ砲で霧に捕らわれた鉄の爪に狙いをつけ、倒れている女性に聞いた。
「……」
 女性は倒れたまま苦悶の表情を表す。それは苦痛なのか悔しさなのか。いや、多分その両方なのだろう。
「解った。じゃあ霧を外したら戻ってくれ。もう俺が殺すしかない……それができれば、だがな」
 女性は小さく頷くと目をつぶった。と同時に女性の体がふっと消える。その瞬間、バズーカ砲が至近距離から発射された。
 そしてその射線上には、突然晴れた霧の中から全身が鋼鉄で覆われた怪物が姿を現した。
 高さは10mを越しているだろうか。2階建ての家がそのまま歩き出したような、あらゆる部分を鋼鉄の装甲で覆い尽くしたその姿は、あえて例えるなら鋼鉄の獣人だ。
 先程の鉄の爪の付いた両腕だけではない。大きな顎には刃のような歯が並んでおり、両足には刃やトゲまで付いている。
(いかに重厚な装甲だろうと、バズーカ砲の直撃では生きてはおれまい)
 男がそう思った瞬間だった。その鋼鉄の獣人が高くジャンプした。その重さなどお構い無しに地を割りながら空中に躍り出てバズーカ砲の弾を避けると、そのまま男に全身で襲い掛かったのだ。
 しかし男の反応も素早かった。飛び退いたその男が、つい先程まで居たその地面を鋼鉄の顎と爪が押し潰し、辺りに灰色の土砂を撒き散らす。
 そしてその鋼鉄の獣人が立ち上がり、再度男に狙いをつける。だが次の瞬間、激しい爆発音と共に鋼鉄の獣人がよろめいた。
 見るとその向こうで、男が巨大な対戦車ライフルを構えている。続けて2発3発と連射する。
 さすがの鋼鉄の獣人も、体を庇う爪が砕け顎が変形する。だがどうやら効いているのは最初の1発だけのようだ。よろめきながらも鋼鉄の獣人がじりじりと男に迫る。
(これでダメなら……)
 男はすばやく懐に手を入れると、更にもう1丁巨大な対戦車ライフルを取り出し、2丁を同時に発射した。激しい発砲音と破壊音そして衝撃が、男と鋼鉄の獣人との間で炸裂する。
 そして灰色の砂煙の中で、2丁の対戦車ライフルを構えた男が慎重に辺りを伺う。晴れていく砂煙の向こうには獣人の残骸があった。激しく変形し、体の中央に大小2つの穴が開いており、大量の血痕が残っている。
「やったのか……」
 灰色の世界に残る黒と赤の残骸を前にして、ため息をつく男。
「だが、1人死亡、1人は重症か。俺達3人を相手に、何て怪物だ」
「……いや……違うぞ」
 その苦しそうな、だが聞き慣れた声に振り向くと、先程まで霧の側でうつ伏せに倒れていたもう1人の細身の男がそこに立っていた。先程まで握っていた剣を杖代わりにして、何とか立っている。
「良かった、まだ生きていのたか」
「……何とか……彼女は?」
「彼女?」
 その言葉にハッとして同時に攻撃態勢に入る2人。
 だが、この距離では剣の方に分があった。懐から取り出した拳銃を握り締めたまま若い男が倒れて言った。
「……しまった……ドリフター……」
 その細身の男は、倒れている男が握り締めている拳銃を蹴飛ばすとこう言った。
「残念だったな。だが、お前は強かった。だから俺がもらうとしよう」



 初めて彼にあった日、彼は姫に狙われていた。
「え? 堀井先生、車に酔うんですか?」
「ええ。バスは特に……」
 姫路先生がさりげなく堀井先生に触れながら、一緒にバスの入り口から上がってくる。まだ出発もしていないのに、堀井先生はもう元気が無い。
 しかしイケてる男の顔というのは元気が無くともイケてるのだなあ、などと1人で感心して見ていると、ヒメがパンフレットで席順を確認し、座っている私達にこう言った。
「じゃあ、白崎真由さんと大橋彩さん。私達2人と席変わってくれないかな」
 つまり、私達の代わりに2人で最前列の席に座りたいらしい。まあ堀井先生が最前列にって所までなら話は解る。だけど何でヒメまで一緒なのよ。
 隣に座るアヤも少しムッとしていたが、先生方には勝てないし、ヒメの目も明らかに私達を邪魔だと言っている。
「はい、解りました。アヤ、私が姫路先生の席に行くから」
 大橋彩は子供の頃からの私の親友だ。そして今回このバイトの話を持ってきたのも彼女だ。
「じゃあ私は堀井先生の席に行くね。マユ、時々交代しよう」
 そして私は白崎真由。アヤと私は今年で高校2年。私立藤崎学園女子高校、略して崎女の女子高生だ。
 では何故、花の17歳の私達が先生方とバイトでバスに乗っているかというと。話は1週間前に遡る。

「ミクがさあ、カレシできたってさ」
 いつも入り浸っているアヤの家の部屋で、彼女がそう切り出した。
 ファッション、音楽、遊びに恋の話。かなりバカな話まで含めて話題はいつも似たり寄ったりだが、子供の頃からの親友の彼女の部屋は、生意気な弟が隣にいる私の部屋よりもずっと落ち着くし、いつも話は尽きなかった。
「へえ、そう」
「やっぱ恋バナには興味なし?」
 私の素っ気無い返事に、アヤはもう慣れたとでも言いたそうな口ぶりで答えた。
 まあアヤは私が女子高を選んだ理由も知っていたし、それ以前に私の事を良く知っていたから、そこまではいつもと同じ展開だった。だが彼女は話を続けた。
「んでミクのカレシってさあ、大学生なんだって」
「ふーん」
「トシはそんなに違わないのに、お金持ちで優しくて最高だって言ってたよ」
「お金持ちならいいよね~」
 私は読んでいた雑誌を膝の上に広げて言った。
実際、女子高生はお金がかかるのだ。
 共学の高校に行った友達は、日々のお化粧もアクセも、まあそこそこ。お金はデートにかけるんだって言っていた。
 だが崎女では、毎日がファッション対決、みたいな所がある。何かが流行れば、それは一気にクラスそして学校中に広まる。
しかし、それに付いて行けないグループは一転、その他のグループに分類されてしまう。そうなれば勉強でも出来ない限り、後は周りから孤立する一方だ。
「私も1学期の成績が悪かったから、お小遣い減らされちゃって。まあちょっとだけどさあ」
 アヤがため息をつく。彼女の家は父子家庭で、父親はバスの運転手だ。朝早く帰って来る事もあれば、逆に早朝に出て行くこともある。私達が子供の頃は、そんなアヤを私の両親が良く家に招いたのだが、今では私が彼女の家に入り浸っている。
「だからさ、一緒にバイトしない?」
「バイト?」
「そう、4泊5日で5万円」
「それって、ヤバいバイトなんじゃないの?」
 まさかアヤが、そんな聞くからに怪しくオイシイ話を持ってくるとは思わなかった。
 そりゃあ5万円も入ったら財布はホクホクだ。だけど4泊って響きが既に怪しすぎる。
 だがアヤはこう答えた。
「ヤバくないって。私も一緒だし、むしろマユのお父さんだってOKしてくれると思うけど」
 あの怖い父親がOKする?
「一体どこにそんな都合の良い話があるのよ」
「あるんだな~、これが」
 アヤはベッドの上で体を揺らせながら、ニヤニヤしている。
 しかしだ。これまでの話からは、大学生を誘惑するようなバイト位しか思いつかない。でもそれでは完全に水系だし、当然ウチの親が許すはずもない。
 私はアヤに聞く。
「一体何のバイトなの?」
「実はねえ、塾の夏期合宿のバイトなのだよ」
「夏期合宿?」
「うん。この前塾に遊びに行ったとき、青山ちゃんに聞いたんだけど」
 ちなみにこの青山ちゃんというのは、私達が中学まで通っていた塾の女の先生だ。
「また青山ちゃんトコ行ったんだ、それで?」
「あの塾、夏期講習の後に合宿とかしてたでしょ?」
「あー、してたかも」
「で、今年は女の先生がドタキャンしたらしくて、女性スタッフが足りなくなっちゃったんだってさ。まあ、ぶっちゃけ雑用なんだけど、これがバイト代が良いのよ」
 確かに夏期講習の後の何日間かで、塾の全支部から何人かが合宿に行っていたような気がする。私達は合宿には興味無かったので忘れてたけど。
「でも何でスタッフが女限定なの?」
「それがね。毎年1、2人はいるんだってさ」
「何が?」
「小学校5年から中学3年までが、4泊5日でどっかの高原に泊り込みで授業するんだけど、中には初潮が始まっちゃう子とかいる訳」
「ああ、なるほどね」
 確かに、環境が急に変わるとそうなるかもしれない
「それだけじゃなくて、中学女子とかでも毎年何人かは、出会った先生に恋しちゃってさ。『帰りたくない』って言う子がいるとかでさ」
 それも確かにありうる。
「当然、先生達は授業とかでそれ所じゃないし、だから女子スタッフが必要って訳よ」
「ふーん。で、どこで合宿するの?」
「何とか高原って言ってたけど。何? やる気になった?」
 まあ確かに、アヤと2人で前に行っていた塾の夏季合宿の手伝いをすると言えば、ウチの親も納得するかもしれない。バイト代の件は多少減らしておかないと色々と面倒になりそうだけど。
「アヤの話が本当なら、5万円はオイシイよね」
「ホントだって。立場も生徒じゃなく先生側だし、だから時給もいいのよ。夏を高原で大学生と過ごして5万円、しかも怪しくない。どう?」
 雑用係なのは仕方ないが、先生側っていうのは、勉強しなくていいから良いかも知れない。夏を高原でというのも、アヤと一緒なら楽しそうだ。
「でも、大学生と過ごしてって、何の事よ?」
「そこがポイントなのよ」
 アヤがベッドから降りてきて、更に話を続ける。
「青山ちゃんもそうだったけど、塾の先生って大学生が多いんだって」
「そう? まあそう言えばそうかも知れないね」
 確かに中学生の時には、スーツ姿の先生はかなり大人に見えたけど、今思えば若い先生達は皆、大学生のバイトばかりだったような気がする。
「それで塾の夏季合宿には、毎年全支部から若手の先生が集まるんだって。つまり私達がスタッフになれば、授業以外はずっと、チョイ上位の大学生と一緒な訳よ」
「ふーん」
「それに先生達も、夏季講習だけじゃなくて合宿にまで来る位だから、夏はずっと1人。頭が良くてお金があって、多分彼女もいない、そんな大学生が集まるって訳。結構イイでしょ?」
「確かにイイかも」
「お、マユの男嫌いも少しは治ったのかな?」
 アヤがテーブルのお菓子をつまんだ手を止め、そう言った。
 別に私は男全員が嫌いなのではない。中学の頃の同級生に嫌な思い出があるだけだ。
 それに女子高も1年通うと、あまりの男ッ気の無さに、自分の常識が怪しくなって行く様で怖い位だし、実際この1年で話をした男は学校の先生と家族位だ。
 だから毎年のように中学女子が帰りたくないと言う程レベルが高い大学生が来るのなら、私だってもちろん興味がある。
「まあ、興味はあるよ」
「ホント! 良かった。おまけに泊まる部屋は、女だけ皆とは別の豪華な部屋らしいの。もちろん私達が行くんなら、他の女の先生達と一緒の豪華な部屋に泊まる訳よ。高原で食事付き、更に豪華な部屋で宿泊して、バイト代が5万」
「そうねえ。それは確かに安全でオイシイかも」
「でしょでしょ? 何も無くとも真面目にやってバイト代5万。ついでに金持ちでイケメン大学生のカレシをゲットするチャンスまである訳よ」
「それ夢見すぎだって。でも確かに、そんなカレシいたら良いよね~」
 すると、その私の一言を聞いてアヤが近寄ってきて言った。
「……マユもとうとう、カレシつくる気になったんだねぇ~」
 アヤの言葉のトーンはさておき、私もいつの間にか自分がそう思えるようになった事に驚いた。
「あー。そうねえ、そう言えば」
 まだお金に釣られている自分がそこに居たが、確かに同級生じゃなければ付き合うのも悪くないかも。まあ単に、この夏休みに行く所も無い悲しい高校2年の最後のチャンスだったと言えば、まあそれまでなのだが。
「そうかい、私ゃうれしいよ! やっとその気になったのかい!」
 アヤは私の手の上に両手を置き、演劇風というか演歌調というか、不思議なトーンでそう言ってくれている。
 もちろん私の事を本気で心配して言ってくれているのが解る。だってアヤは私の事を何でも知ってるんだし。
「まあ、今回に関しては抵抗無いかな」
「よし。じゃあ早速、親に相談してみようよ。ちなみに出発は1週間後よ。服も、一応先生側なんで地味なのにしろって。他の詳しい内容は、青山ちゃんにまた聞きに行けばいいし」
「そりゃ楽ね。うん、聞いてみる。それなら親にも言いやすいし」
 まあそう言う訳で、私達は青山ちゃんと一緒に、以前通っていた塾のスタッフとして、バイトに参加する事になったのだ。

 そして出発当日の今朝早く。私達には、先生は男15人に女3人の合計18人、後はスタッフとして私達2名という、先生用の名簿付きの資料が配られた。生徒は全部で100人を軽く超えている。その他にも、塾長さんが別行動で合流してくるらしい。
 スケジュールを見ると、初日はバスでの移動と自己紹介や合宿に関する説明、その後は先生達は飲み会。あとは毎日のミーティングに、肝試しとか花火大会とか何かのイベントが少しずつあって、それ以外はずっと授業のようだ。最終日は確認テストの後で昼食を挟んで運動会をやって、バスで帰宅らしい。
 そんな風にアヤと一緒に資料を見ていると、すぐに他の支部の先生や生徒を乗せたバスが、待ち合わせの駅前のロータリーに停まった。今日はこうして郊外の支部から順々に、合計3台のバスが参加者を拾っていくのだ。
 そしてこの東京西部の参加者を乗せて行くバスには、私達が乗る前に、既にヒメが乗っていた。
 確か服装は地味なのにしろと聞いたはずだったが、ヒメの服装はセクシー系のワンピに薄地の地味な半袖シャツを羽織った、巻き毛も決まった出会いの期待満々の格好だった。
 私が小中学生の生徒だったら、ああ大人なんだなと流した格好かもしれなかったが、女子高生でスタッフの私達から見ると、一体何の先生だろうかと思う程に気合いが入っていた。
 だが席は一番後ろで、彼女の当面の任務は、そこに積んだ荷物の番と、後ろの席からの生徒の見張り役だと聞いた。
 私達は、生徒と混ざると紛らわしいとかいう理由と、あと写真が好きなアヤが事前にカメラ係に任命されていた事もあり、一番前の席になっていた。青山ちゃんはそのすぐ後ろの2列目で、最後の早稲田支部で乗ってくる堀井先生とか言う男の先生と一緒に、生徒の乗り降りの誘導と人数確認をするのが当面の役目だったはずだ。

 だから、勝手に仕切って席を替えるヒメには青山ちゃんも驚いていたようだが、結局彼女には何も言わなかった。
 そしてバスが走り出した。私達の乗るバスの生徒は中学生が中心の構成のようで、比較的静かだった。
 だがやはり小中学生でもやはり女は女。堀井先生のカッコ良さに、乗っていた女子は全員何やら噂話を始め、堀井先生と同じ早稲田支部の女子に小さな声で色々と聞いているのが、最後列の私の席からは良く解った。
 だが前に座る堀井先生本人とヒメの間には特に動きも無い。会話も無いように見えた。どうやら本当にバスに弱いのだろう。
 その後ろに座る青山ちゃんとアヤは、時々頭が動くので、何かを話しているのだけは解った。
 そのうち私は眠くなり、1人最後列の席でうたた寝をしてしまった。
 次に目が覚めたのは、高速道路のサービスエリアだった。人が動く音で目が覚めると、最前列で先生達が生徒を降ろしている。
「トイレ休憩だってさ」
 アヤが私を呼びに来てくれた。そして2人でバスを降りると、そこには沢山の小学生の女子に捕まった堀井先生が困った顔をして立っていた。どうやら同じ支部のファンクラブに新たな会員が追加されたようだ。両腕や腰にくっつかれ、女の子達に色々と言われて困っている。
 更にヒメが、それを離れた所から見ているのが解った。どうやら堀井先生が女の子達から解放されるのを待っているようだ。
「さすがのヒメも、小学生には敵わないみたいね」
 楽しげにアヤがそう言った。確かに、あの計算も何も無い積極的な行動に大人は割り込めはしないだろう。しかも地上に降りた堀井先生は元気を取り戻しており、そのカッコ良さに一段と磨きがかかっている。
「堀井先生ってカッコ良いもんね」
 私が言ったその言葉に、アヤが驚く。
「え、マユ! ついに恋するハートが戻ってきた?」
「あ、いやその。一般論でよ」
 まあ確かに顔は私の好みだし、何と言ってもあの腕が魅力的だ。友達は私を腕フェチとか言うが、好きなものは仕方ない。だが私の好みなど、アヤには当然筒抜けだ。
「またまた。あの先生の腕、良いもんね~。それに背が高くてハンサムで。服も結構良いの着てるんだよ?」
「へえ~そうなんだ。アヤさすがにチェック早いね」
「そりゃあ報道カメラマンだし~」
 そう言って首に下げたデジカメを手に持って笑う。そのうち堀井先生が男子トイレに消え、取り巻きの女子小学生達もヒメも消えた。私達はサービスエリアの中を見て周りながら会話を続けた。
「でさ、笑えるのよこれが」
 やはりアヤが話を切り出し、こう続けた。
「ヒメのあの気合いの入った格好、見たでしょ?」
「見た見た!」
「で、ヒメが『最前列は日差しが暑いですね』とか言って、上着を脱いだ訳」
「えー、ヒメ勇気あるねー。だって下のあのワンピ、セクシー系でしょ?」
「もちろんそうよ。もう青山ちゃんと私は、もう目が点よ、点!」
 そう言ってアヤが大げさに驚きのポーズをした。
「それで堀井先生の反応は?」
「これが笑えるのよ!」
 アヤは、今度は大爆笑している。
「まず1回目は無視よ無視。しかも思いっきり。そりゃそうよ。だって堀井先生は、バスに酔わないために最前列にいるんだから」
「確かに。でもヒメ痛いね~」
「でも懲りずに、マユの好きなあの腕にすり寄って『少し話をしたら気が紛れるかも』とか言ってんの。もう超アプローチしててさ。ここはフーゾクかっての!」
「うわ~」
「でもね。堀井先生は本気でそれどころじゃないらしくてさ」
「うんうん」
「ヒメに『ごめんなさい、気が散ると酔っちゃうんで……あと紫外線強いから上着着た方が良いですよ』だってさ! もう可笑しくて、青山ちゃんと爆笑しちゃいそうで困った訳よ」
 いかにも辛そうな顔で堀井先生の真似をした後で、再び大爆笑するアヤ。私も大声で笑う。
「それ、おっかしい~! ヒメかわいそ過ぎ!」
「でしょー? 早くこれをマユに言いたくてウズウズしてたんだから」
 だが同時に、あの美人を売り物にしていそうなタイプのヒメにそう接する堀井先生に対して、私の中でのポイントが上がったのも確かだ。まあ、私を相手にするかどうかは別なのだが。
 そしてバスに向かう途中でアヤが言った。
「だから次はヒメのリベンジ、第2ラウンドな訳よ。そうだ、席交代する約束だったでしょ?」
「うん」
「もう、おっかしいんだから。見ていて笑わないようにね。青山ちゃんが釣られて笑ったら、もう止まんないから」
 そう言ってバスに戻ろうとすると、その青山ちゃんが席を替わってくれるという。
 理由は単純だった。生徒を見守るのにスタッフさん任せでは先生としてまずい、との事だった。
 おかげで私達2人は、生徒や先生達に邪魔にならない程度におしゃべりしたり、前の席に座る2人を観察して笑いそうになったりと、目的地の高原まで楽しく過ごすことが出来た。
 ただ今思えば、その時既に私は、ヒメに対して少なからず嫉妬心らしきものを持っていた気がする。それは特に、私が女子高にいたせいかもしれない。女を武器にして迫るヒメの嫌らしさが妙に鼻についたのだ。席の隙間から見える彼の腕が時々ヒメに触られるのを見てしまう度、私は正直ムカッと来ていた。

 そんなこんなでバスは目的地に着いた。既に1台が到着しており、私達は先生の指示をフォローしながら生徒達を支部毎に整列させ、バスの中に忘れ物が無いかチェックする。
 そうこうしているうちに3台目のバスも到着した。同時に派手なオープンカーで現れた人物がいる。青山ちゃんが「あれが塾長よ」と言った。
 見た目は20代後半くらいだろうか。意外と若い。そしてその塾長は、私達にこの辺りを説明すると言って、そのままドライブに連れて行ってくれた。
 まあ塾長は別にタイプでも何でも無かったが、ノリの良い性格で、私達は夕食までずっと塾長と一緒にその高原をドライブしたり、近くの川や湖で遊んだりした。
 そして夕食。本来は私達も準備するはずだったので戻った時には気が引けたが、元気いっぱいに生徒達に挨拶するあの塾長に無理やり連れて行かれたんだから仕方ないと、むしろ先生達は私達に同情してくれた。
 まあそのおかげで、私達はかえって先生達との飲み会の席になるまで猫を被らなければならなくなってしまった。

 ○

 合宿が始まるに当たっての色々な説明や生徒達の部屋割り、そして各種委員の選出などが済み、食堂での夕食を済ませると、生徒は自由時間の後に就寝となった。
 そして交代で生徒を見張る役以外の先生方は全員で、自己紹介と銘打った飲み会を始めた。順番はバスのグループ毎で、私達は一番最後だ。
 「では、まず有楽町支部から自己紹介します」
 今回の合宿のリーダーで、30代くらいの三木先生から順に、自己紹介が始まった。18人の先生方のうち、正社員は男性のみ5人。残りの男性10人と女性3人は全て大学生だった。
 そしてさすがに各支部を代表して来ているだけあって、どの先生も高学歴だった。ごく普通に、東大、早稲田、慶応など、私とアヤが志望校に挙げたら周りに笑われそうな大学の学生ばかりだ。
「……こんだけ頭いい先生だらけの合宿だったら、そりゃあ時給、高いわよね」
 こっそりとアヤがそう言った。確かにこの合宿の目標は更なる学力アップな訳で、そういえばバスでもこの高原の宿泊所でも、生徒は皆おとなしく真面目で、勉強する気満々だ。
「何だか、私達だけ場違いな気がするね」
 私もアヤに言った。アヤが少しだけ神妙な顔をして、小さくうなずく。
 そうこうしている間にも、さすがは先生だけあって、テキパキと自己紹介が進んでいく。
「品川支部の西村由紀といいます。慶応大学の1年で、社会も担当しますが、主に生徒さんの庶務係や保健係を担当します」
 1人目の女の先生は、庶務と保健のお姉さんのようだ。つまり私達は、主に西村ちゃんと一緒に働く事になる訳だ。
「では次、吉祥寺支部お願いします」
 三木先生が言った。すると、ヒメが立ち上がり、見事な営業スマイルにコンパニオン立ちを決めながら自己紹介を始めた。
「姫路琴葉です。主に社会と、あと英語を担当します。早稲田大学の3年です。趣味は料理と旅行です。皆さん宜しくお願い致します」
 たった3人しかいない女の先生の2人目で、しかも見た目だけは断トツにカワイイこのヒメには、やはり男の先生からの拍手が多い。だがヒメは、他のメンバーには全然興味が無いようだった。まあ多分いつもモテるのだろう。
 そしてヒメはさっさと席に戻ると「緊張した~」とか言って、また堀井先生の腕を触っている。既に今日が初対面とは思えないほどの仕掛け振りだ。見ていて、あそこまでやらないとカレシというモノは出来ないのか、と少し悩んでしまう。
 次は私達の通っていた、中野支部の青山ちゃんだ。知ってはいたが、青山ちゃんも高学歴だ。
「青山裕子です。英語を担当します。東京外国語大学の3年です。趣味は運動で、エアロビをしています。皆さん、宜しくお願い致します」
 青山ちゃんは一言で言えば、気さくで何でも相談を聞いてくれる優しいお姉さんだ。今日の服も、スカート丈の長い柔らかなイメージのワンピースで、正直運動よりも読書が似合いそうな雰囲気なのだが、毎週のエアロビは欠かさず行っているらしい。こうして見ると、ヒメとは本当に対照的だ。
 さあ、次はラストの堀井先生だ。地上に降りて夕食も食べた堀井先生には元気が戻っている。
(ああ、カッコいいなあ)
 その腕と髪、顔そしてスタイル。どこを取っても良い感じだ。彼もモテそうだが、どうなんだろう。
「早稲田支部の堀井涼です。国語を担当します。今は東大の4年です。趣味は空と海、特技は手品です。まだ塾に入って間もないですが、宜しくお願いします」
 正直、あれ? という感じの内容だった。趣味が空と海で、特技が手品って。
 実際はその表現が結構正しかった事を後で知る事になるのだが、その時は正直拍子抜けした。
 アヤだけでなくヒメまで「?」という表情で堀井先生を見ている。拍手も少ない。
「では次は、今回の我々の合宿を強力にサポートしてくれるスタッフの2名です。白崎真由さん、どうぞ」
 突然名前を呼ばれ一瞬驚いたが、私は立ち上がり、他の先生の真似をして前に立つとこう言った。
「白崎真由です。中学までは青山先生に教わっていました。今は藤崎学園女子高校の2年です。何も知りませんが、宜しくお願いします」
 すると、おおーっという声と共に、ヒメの時よりも大きな拍手が沸き起こった。私は恥ずかしくてそそくさと席に戻るが、その途中でも
「本物の女子高の女子高生かあ」
 という声が聞こえてくる。つまり、同じ大学生のヒメよりも女子高生の私達の方が珍しいのだ。友達の1人が、女子高生はそれだけでブランドだ、と言った事を思い出した。
 ヒメがちょっと怖い顔でこちらを見ているがそんなのは関係なかった。ただ堀井先生は、普通に笑顔で拍手している。彼には女子高生ブランドは通じないらしい。
 そしてすぐにアヤが前に立って言う。
「大橋彩です。マユ、白崎さんと同じ藤崎学園女子高校の2年で同級生です。趣味はカラオケとカメラ、あとスキーです。頑張りますのでご指導宜しくお願いします」
 アヤにも同じく、私の時と同じようなどよめきと大きな拍手が沸き起こる。帰ってきたアヤは小さくピースしながら笑って私の隣に座った。
「では、まず皆さんで乾杯しましょう」
 三木先生の一言で、ビールやジュース、それにお菓子などが配られる。
「では、これからの合宿の無事と生徒の学力アップを祈願して、乾杯!」
 とまあ、ここまでは「やっぱり先生だなあ」と思える出だしではあった。
 だがすぐに皆、大学生の化けの皮が剥がれた。私は未成年だという理由だけでなく、実際お酒は全然ダメなのでジュースを飲みながら色々な先生と話をしていたが、聞かれることは大体
「女子高ってどんな所?」
 だった。そんなの言える訳が無い。書けないチョークとか、まだ話せそうな話題もあるにはあったが、女子高の実態などは初対面の男性に言える話題ではない。
 アヤと言えば、カクテルをもらったらしくすっかりご機嫌で、先生達と一緒に写真を取りまくっている。
「酔っ払いの先生達に、飲酒したアヤの証拠写真ばっかり……大丈夫?」
「平気へーき。誰にも見せないから」
 私のそんな心配をよそに、アヤは飛び回っている。しかも行った先々でチヤホヤされ、かなり盛り上がっていた。
 そう言う私はというと。実は堀井先生と原山先生の2人と一緒に、猫の話で盛り上がっていた。この3人は猫好きだったのだ。
「俺は2匹飼ってるんだ。でも今日みたいに俺がいない間は知り合いの家に預かってもらってる」
 堀井先生はどうやら1人暮らしのようだ。
「僕の家には6匹もいるんだ。両親も好きでさあ、生まれる前から猫がいたよ」
 原山先生は自宅から通っているらしい。しかし6匹とはすごい。
「私のウチは猫と犬が1匹ずついるの。でも私は猫派。やっぱりあの、猫のヤワヤワふわふわ感がたまんないし」
「そうそう、やっぱり猫は天然ふわふわ感だよね。そういえば、俺の家の猫は鳥の鳴きまねするんだけど、しない?」
「うそ、うちの猫するー!」
「僕の家の猫も2匹真似してるよ。やっぱりするんだね」
 そんな感じで私達が猫ネタで盛り上がっている所に、突然三木先生が言った。
「堀井先生、手品やってよ手品!」
「そうそう、見せて!」
 一緒にいるヒメまで声を上げている。
「じゃあ、簡単なので」
 堀井先生はすっと席を立つと、授業用のコピー用紙とマジックを持って前に立った。
「ちゃららららら~」
 やはり先生という人種は、人の前に立つと人格が変わるらしい。キリッとした顔で例の音楽を口ずさみながら、まずコピー用紙とマジックを皆に良く見せて、
「はい、何もありませんね」
 と確認すると、くるくると紙を丸めた。もちろんシャツにジーンズの彼の両腕には時計しか付いていない。
「ちゃららららら~」
 また前を向いて、丸めた紙に「ビール」と書いて皆に見せる。そして音楽を口ずさみながら、ゆっくりとその場で1周し、三木先生の所に向かう。
「おおー」
 感心する声と拍手が徐々に沸き起こる。何と、傾けた丸めた紙からビールが出てきたのだ。しかもそれは良く冷えているようで、三木先生も
「うまい!」
 とか言っている。そのまま5杯ほど注いだだろうか。堀井先生は再度前に立ち、小さく礼をした。
「タネを教えて!」
 西村ちゃんが言う。他の先生もそう言いながら、堀井先生の持っている丸めた紙を奪い取ろうとした。すると。
「カランカラン……」
 空のビールの缶が中から出てきて転がった。
「何だ~」
「本格派だと思ったけど、マギー系?」
 酔っ払った先生達、それにアヤまで口々にそう言っているが、私はまだそれが信じられなかった。
 どう考えても、その缶にあれだけのビールは入らない。いや、丸めた紙の容積さえ完全に超えているのだ。
 だが堀井先生は
「タネはバラしちゃだめだって!」
 と笑いながら帰ってきた。思わず私が、本当はどうやったのか聞こうとしたが、そこにヒメが割り込んできて言った。
「ねえ、また2人きりになれない?」
 姫は既に酔っており、強引に私と堀井先生の間に割り込むと、
「動かないでね~」
 と言いながら、何とピーナッツを肩に並べ始めた。驚く私と原山先生の前で、苦笑いしながら成すがままにされている堀井先生。そのうちすぐ、原山先生もいなくなった。
 すると今度はその肩に並べたピーナッツを、ヒメが端から順に口で吸い取り食べ始めたのだ。時々横目で堀井先生を見ている。完全に私を無視して、超アタック中だ。
 もうじき首筋にさしかかるかと思った瞬間だった。
「なあ、堀井先生! 先生!」
 突然そんな三木先生の叫び声がした。向こうでは皆が「ええ?」とか「マジで?」とか言っている。
 酔っ払った三木先生が続けて大声で叫ぶ。
「だから酔っても怪我しても大丈夫なんだよ。塾長の極秘情報によるとだな、堀井先生はアメリカで医師の免許を取ったんだよな?」
 これだけ大声で叫んでは極秘情報もあったものではないか、ヒメも私も驚いて堀井先生を見る。
「本当に医者なの?」
 私の問いに、周りも耳がダンボになって堀井先生の言葉を待つ。
「……多分」
 その答えに、若い男の先生方が驚き、叫ぶ。
 そういえば自己紹介では確かに、今は、と限定して言っていた。
「うわ、本物だ! それじゃあ敵わね~」
「いや、でもアメリカ育ちで、何で国語担当なんだ?」
 向こうでは様々な話のネタにされているが、当の本人は私の目の前で、居心地が悪そうにジュースを飲んでいる。
 いや、こちらにも堀井先生をいじる奴が居た。
「本当に? じゃあ捕まえておかないと~」
 ヒメが後ろから堀井先生に抱きつく所までは見た。だが、アヤが私の側に来て言った。
「みんなで外で飲むって言ってるけど、行かない?」
「あ、うーん」
「もうそこの2人は放っとけ、だってさあ」
「……そうね」
 猫仲間から一転して遠い世界の存在になった堀井先生と、その彼を落とそうと激しく攻めるヒメ。酔っていない私には、興味はあったが確かに居心地も悪いように思え、私達はその場を後にした。

 ○

 外に出た先生達はすでに完全に酔っ払っていた。まだマトモな先生も何人かいたのだが、女の先生は青山ちゃんだけになっており、三木先生もいつの間にか居なかった。
 私と酔ったアヤは、やはり先生達にかなり可愛がられていたのだが、そのうち先生達が何だか難しい議論を始めてしまったので段々と飽きてきた。
「アヤ、お風呂行かない?」
「行こう行こう。じゃあ、おっ先に~」
 笑顔で手を振るご機嫌のアヤと一緒に、荷物を入れた新館の部屋に向かう。途中には色々な看板があった。
「あ、ここカラオケだってさ!」
 アヤが何かの部屋を見つけた。確かに張り紙にはカラオケとは書いてあるが、中は何故か楽器でいっぱいだ。肝心のカラオケ本体も、隅に追いやられている。
「でもカラオケって感じじゃないね。改装中?」
「解んないわね~、謎よ謎~」
 アヤはまだ上機嫌だ。そしてそのまま部屋の前に向かうと、そこにはヒメを抱えた堀井先生が立っていた。
「あれ、涼ちゃん!」
 アヤは既に堀井先生を涼ちゃんと呼んでいる。だが堀井先生の返事は意外と軽かった。
「リョウでいいよ。一緒にがんばる仲間なんだし。えーと……」
「アヤよ、大橋彩! んでリョウは、何でヒメを抱っこしてるの?」
 さすが酔っ払ったアヤだ。堀井先生と一気に近づいた。でも確かに何故ヒメを。
「ああ、あんまりしつこいんで、酔い潰らせた。だから持ってきたんだけど、部屋に入れないし」
「それじゃあ私とアヤは姫路先生と部屋が一緒だから、今カギを開けるね」
 私がそう言って部屋を開ける。中はリゾートホテル風の大きな4人部屋で、まだ荷物もそのままの部屋は妙に広く感じた。
「私ちょっと!」
 そう言ってアヤがトイレに消えた。そして堀井先生は一番奥のベッドにヒメを寝かせると、私に突然
「……初めて会った時から思ってたんだけど。白崎さんてピュアなんだね」
 と言って笑った。
 ドキっとした。
(ピュア? どういう意味? 一応褒め言葉よね。後で辞書を引いて調べないと)
 だがすぐにアヤが戻ってきて、そのちょっと妙な、でもドキドキする雰囲気は消えてしまった。
「そういえば、もう寝るの?」
 堀井先生が聞く。私が
「ううん、お風呂に入ろうと思って」
 と言うと、アヤが
「カラオケとかしたかったけど、楽器部屋に変わってたのよ。あの謎の部屋は何なのか、リョウ知ってる?」
 と言った。すると彼が言った。
「塾長達のメンバーが、かくし芸で演奏をするとか言って、楽器を持ち込んだって聞いたよ」
「ふーん、演奏するんだぁ」
 そう言うアヤ。リョウが聞く。
「アヤ達、カラオケしたいの?」
 リョウ、そしてアヤ、と呼びあっているのが自然に見える。ちょっと羨ましくなって私も勇気を出して言ってみた。
「うん。先生達は何か難しい話で盛り上がっていて、私もアヤもカラオケが出来たらいいなあって。その……リョウもカラオケしたくない?」
「楽器かあ。じゃあ、今のうちにお風呂に入っておいでよ。俺、妹を呼ぶからさ」
「妹?」
 突然の展開に驚く私達。
「ああ。今たまたま近くに泊まってるんだ。俺達で楽器やるからカラオケしないか?」
 いや、それはカラオケではないと思う。だが堀井先生、いや、リョウが楽器? しかも妹も?
「うそ! やるやる!」
 アヤはウキウキだ。
「じゃあ、俺は今から妹を迎えに行くからさ。お風呂に行ったら部屋で待っていて。着いたら部屋のチャイムを押すから」
 リョウはそう言って片手を上げて去っていった。
 おかげで、お風呂に向かう途中でもお風呂の中でも、私達の話題はリョウとその妹だった。
「堀井……リョウってば、楽器やるんだ。なんだかどんどん謎が深まるね」
「恋が深まる、でしょ? マユの好みは知ってるよん」
「……」
「でも、あのヒメを撃退するとはね」
「やっぱりリョウ妹って、キレイで頭がいいのかな?」
 そんな事を言いながらお風呂から上がって部屋に戻り、髪を乾かして堀井先生を待つ。ヒメは爆睡を続けており、青山ちゃんはまだ帰ってこない。
 すると部屋のチャイムが鳴った。
「はーい」
 ドアを少しだけ開けて外を見ると、そこにはリョウが立っており、その後ろには妹らしき女性が立っていた。
「お待たせ」
 リョウが言った。
「よし、行こっ!」
 そう行って元気にドアを開けたアヤが、その女性を見て出口で固まる。
 初めは、その女性がリョウの妹とは思えなかった。というのも、ショートカットの髪に、ピアスにルージュ、首にも腕にも指にも、メタルがジャラジャラのパンクな女性がそこに居たからだ。
 しかも芸能人並のカリスマと言うか、近寄りがたいオーラまであった。
 だが彼女は、私達が驚くのを予期していたかのように明るくこう言った。
「初めまして、堀井カレンです。一応妹よ」
 その言葉に、ちょっとビビりながら私達は部屋を出たが、閉まったドアの前から動けない。
 するとカレンさんが、まず私に右手を差し出してこう言った。
「あなたが白崎真由さんね。確かにピュアね」
(またピュア? もしかしてカレシがいないとか、バージンとかいう意味じゃないよね)
 カレンさんは、戸惑いながら握手する私に一層明るく笑いかけた後、すぐにアヤにも手を差し出した。
「初めまして。カレンでいいわよ、大橋彩さん。あなたはアヤでいいのよね」
 そして、私と同様に少々ビビっているアヤと明るく握手する。するとリョウが言った。
「だからカレン、初対面でその格好じゃあ、皆怖いって」
「だって私はこうなじゃない。格好に関しては今更アニキに言われたくないね」
 どうやら本当の兄弟らしい。だが確かに良く見ると、どこか堀井先生に似ている。それにスッピンでもかなりキレイだと思うし、見えている足も腕も細くて長く、とてもキレイだ。
 一体どういう両親から、こんな美男美女が生まれるのだろう。ともあれこれだけパンクスタイルが似合っていると、アメリカ帰りというのも納得するというものだ。
 するとリョウとカレンさんは、そのままカラオケ部屋に入って行った。私達もついて行くと、リョウは携帯とコードを取り出し、それをモニターにつないでこう言った。
「パケット定額で音楽落とせるから、俺の携帯で曲を選んでよ」
カレンもキーボードの前に立ってこう言った。
「アニキと私が楽器を弾くからさ」
 あっけにとられたままの私達の前で、リョウは既にギターのチューニングを始めている。
「え? 2人は歌わないの?」
 私の問いにカレンが答える。
「もちろん歌うわよ。自分のトキも弾くけどね」
「おいカレン、音くれよ。チューニングしないと」
 リョウも本格的だ。キーボートを最初に、ギターにベース、そしてドラムの調整をしていく2人。私達が見ている目の前で、あっと言う間にその楽器置き場が、ライブハウスやコンサートDVDでしか見たことが無い、独特の雰囲気に包まれる。
 気がついたら心臓が期待でドキドキしていた。アヤも同じらしく、時々私と目を合わせてはいたが、酔いは風呂の時にかなり冷めているはずなのに、テンションはかなり上がっているようだ。
「じゃあ、1曲目。行こうか!」
 リョウがそう言って、携帯とマイクを私に差し出す。恐る恐る携帯を見て、いつも歌っている曲を選ぶ。
 しばらくのダウンロードの時間の後、モニターに曲名と歌詞が現れると携帯から小さなリズムが流れ出す。
 そしてそれをきっかけに、突然キーボードがイントロを奏で出す。続けてギターも鳴り出した。
 アイコンタクトだけで完璧な演奏をし始めた2人を見て私とアヤはあっけに取られたが、
「はい、ボーカルは前向きでね。観客もいるんだし」
 というリョウの言葉に前を向く。そして、驚いて座っているアヤに向かって、まるでライブハウスを独り占めしたかのような完璧な演奏でのカラオケ(生オケ?)が始まった。
 こんな経験は生まれて初めてだった。私の為に生オケが、しかもリョウとカレンが今ここで弾いているのだ。キーもテンポも完璧だ。
 鳥肌の立つような興奮の中で、最高の気分になってサビを歌う。いつの間にか体が自然に動いている。そしてあっと言う間に曲が終わるが、これはまだ1曲目なのだ。
「アニキ、スピード落ちたでしょ」
「いーや、楽勝。はい、次アヤ入れて!」
 不思議な高揚感でポーッとなった私は、アヤにマイクを渡す。すぐにモニターにアヤの選んだ曲の曲名が現れ、今度はカレンがギター、リョウはドラムへと素早く変わる。
「これ、懐かしいね」
「コイツのドラムは俺のモノ」
 カレンもリョウも楽しんでいるようだ。そして再び、鳥肌の立つような時間が始まる。アヤが私と同じ興奮と感動を味わっているのが見ていて解る。
(一体この2人、いやリョウは、どこまで凄い人なんだろう)
 3曲目で痺れるような弾き語りをするカレンと、プロ級の腕でドラムを叩きながらコーラスを入れるリョウを見て、私達は時間が経つのを完全に忘れていた。
 だが、このドキドキが爆発して麻痺したような時間は、まだ始まったばかりなのだ。
 4曲目はリョウの番で、彼はギターを引きながら歌い、カレンは再びキーボードそしてコーラスを担当した。
 この2人の歌う姿を見ていると、まるで私達はライブ会場に迷い込んでいるかのような錯覚に陥る。体が自然と動き、座っていられない。曲の最後には自然と拍手と悲鳴が出てしまう。
 そしてすぐに
「はい、次はマユの番」
 となるのだが、それはそれでまた最高の時間が流れる。聞いていると、アヤも何だか歌が上手くなっている気がする。
 これはもう生オケですらない。完全にライブだ。しかも私達2人はボーカル兼観客。プレッシャーなど無い、快感だけの時間が過ぎていく。
 そうして最初のテンポの良い時間は過ぎて行き、いつの間にかバラード系の流れになった。
(もう最高……)
 流暢な英語で、独り英語のバラードを歌いながらギターを弾くリョウは、既にカレンにも負けないほどの魅力を発揮していた。正直歌の意味は解らなかったが、完全に絵になっている。自己紹介の時とは別人のようだ。
 当然カレンもすごい。キーボードを弾きながら、その良く通る声で歌うバラードが胸を突き抜け、涙が出て来そうになる。
 それにどんな曲でも、ただの女子高生の私達の歌まですごく上手に聞こえるから不思議だ。
「マユ良いねえ!」
 時々リョウが笑いながら言う。それが単なるお世辞だとしても、既に心が別世界にいる私にとっては、この経験したことの無い高揚感を、更に高める刺激の1つになる。
 アヤも同様に褒められたりしていたが、素直に笑顔になり、場が盛り上がったまま時間が過ぎるのも忘れて、はしゃぎまくった。
「今日の事は塾長達には内緒ね。一応俺、楽器できない事になってるから。あと生徒の前では、堀井先生でお願いね」
 リョウが笑顔で言う。そして私達の部屋まで一緒に戻ると、
「じゃあ、2人ともオヤスミ!」
 と言い、リョウとカレンは本館に向かう暗闇の中に消えていった。
 すると突然アヤが、
「あ、写真撮るの完全に忘れてた!」
 と言った。確かにそうだ。それほど夢中だった。
 そしてもちろん、酔って爆睡しているヒメや、いつの間にかヒメと反対側のベッドで眠っている青山ちゃんとは違い、私達は全然眠れなかった。
 全く眠気がやってこない私達は、すぐに表に出て話をし始めた。高原の涼しい夜風が心地よい。
「ありえないよね」
 アヤが言った。私も
「うん、やばい」
 と言った。私達の中でリョウは、既に医者で東大生の堀井先生とは別人の扱いだった。私達の秘密の友人、そしてカレンの兄、と言った方が正しかった。
「これじゃあ、マユじゃなくてもホレるかもね」
 アヤがそう言った。私はうなずいた。
 そんな風に夜風に当たりながら、今日の事をポツリポツリと話をしていくうちに私達の心も段々とクールダウンしてきて、私達はやっと眠る事ができた。
 ただ既にもう私の心の中には、ある気配が芽生え始めていた。

 そしてその頃。
本館に向かう夜空の下で、カレンがリョウに言った。
「やっぱ手品の手伝いよりも、こっちの方が性に合うわね。ありがとアニキ」
「やはり白崎真由はまだピュアだ。ヤツが彼女を見つけたら狙われるかもしれない。だから早いうちにカレンを見せておいた方が良いと思ってね」
 リョウが真面目な顔で言う。
「全く、アニキは仕事熱心だね。精神年齢がばれない様に気をつけてよ?」
「大丈夫。さあ、明日のために今夜は下がってくれ。夜は俺の世界、影法師も万全だ。明日から昼はカレンを頼りにしてるからさ」
「はいよ。じゃあ、オヤスミ!」
 そう言って、カレンがふっと消えた。
 ただ1人本館に向かうリョウは、もう一度辺りを伺い、更に小学5年の女子が眠る宿泊棟に目をやると、そのままそっと本館に消えて行った。

 ○

 翌日のリョウは、踊る堀井ちゃんだった。
 翌朝の早朝、私達は青山ちゃんに起こされた。
「6時からミーティングよ。ほら、2人とも起きて」
「あ、はーい……」
 時計はまだ5時半。私は眠い目を擦りながら起き上がる。青山ちゃんは既に着替えも済んでおり、これからメイクをする所のようだ。
 見ると、ヒメはもうシャワーを浴びたようで、髪を解いている。
「おはよう~」
 隣に寝ていたアヤも、寝ぼけまなこで起き上がる。案の定、髪がひどい事になっている。
「アヤ、それじゃあ朝シャンしないとダメよ」
 するとアヤは
「ホント~?」
 と言いながら鏡に映る自分を見ると、
「げ! やば!」
 と慌ててタオルを掴んで室内の風呂に入る。
 その間に私は顔を洗って歯を磨き、服を着替える。
「ごめーん、マユ。シャワー使って良いよ」
 アヤがそう私に言った。
「ありがとう。アヤも早く着替えな」
「うん」
 私達が身支度をしているうちに、青山ちゃんもヒメもテキパキとメイクを整え、
「じゃあ、先に行ってるわね」
 と部屋を出て行った。
 すぐに私達も身支度をして、昨日の飲み会の場所である職員室に向かった。
 職員室に揃った先生方は、昨夜とは打って変わって真剣な表情だった。正面には今日1日の授業の予定表と担当が大きく書かれている。
「では、本日のミーティングを始めます」
 三木先生がミーティングを始めた。ヒメもリョウも真剣だ。いや、今は堀井先生と呼んだ方がいいのだろう。ちなみに生徒はまだ寝ているようだ。
 まず、今日からの大雑把なスケジュールが伝えられる。今年受験の小学6年と中学3年は2クラスに別れ、それ以外は各学年1クラスずつ、計7クラスで、各90分毎の授業が行われる。
 ただし受験をしない4クラスは、途中で散歩の時間があったりする。また毎日1回は何かのイベントがある。ちなみに今日は、夜の肝試しだ。
 そして今日の詳細な予定と担当の確認が順番に行われ、最後に
「では何かあったら、西村先生に相談に行くように生徒には伝えてください。あと昨日うっかり言ってしまいましたが」
 そう言って三木先生は苦笑いし、堀井先生を見ながら
「堀井先生は医師免許もお持ちなので、西村さんが対応できなかったり、救急の場合には、堀井先生に相談して下さい。堀井先生、宜しいでしょうか?」
 と言った。堀井先生も、
「はい。まあ、私の出番が無いのが一番良いのですが」
 と笑う。
 そして朝食となるが、ここで私達の初仕事がやってきた。先生方と私達を含めた10人で、120人分を超える朝食を運ぶのだ。これがまた重かった。
 更に、朝食を食べている皆を横目に、私達だけが今度はそれを片付ける為に出口に並ぶ。当然私達だけ食事は一番最後だ。しかも溜まったゴミをゴミ捨て場に持って行かねばならない。
 また、各先生方は朝食が終わるとすぐに授業の準備に入る。先生達はテキスト以外にもそれぞれに教材をつくってきているため、私達が朝食のゴミを片付けている間にも、2台のコピー機がフル回転していた。もちろん私達も休憩など取ってはいられない。18人もの先生から、コピーやホチキス留めなど次から次へと指示が来る。
「これは結構キツイね~」
 アヤが言った。
「さすがに時給が高いだけの事はあるわね」
 私も汗を拭きながら言った。
 最終的には日を追う毎にその忙しさはアップしていく訳だが、初日の1時限目はまだ休憩する時間が取れた。アヤが早速、授業風景を撮影すべく各教室に出向く。今日は私も一緒について行った。
 どの先生も生徒も真剣だが、各先生は更に、授業をより楽しくする要素を盛り込んでいた。
 ある算数の先生はツルカメ算を、生徒の要望を汲んでハンバーガーとポテトでやっていた。「セットの方がお安くなりますが?」などと冗談を入れながらも、小学生に楽しく授業を行っている。
 ヒメもさすがは先生だけあって、シビアな中にも優しさや笑顔を取り入れたメリハリのある授業をしていた。
 そして堀井先生の国語の授業では。ホワイトボードに書かれた呪文のような文言に合わせて、彼は踊っていた。
「指示語の答えはどこにある~?」
 まずそう言って、まるでお笑い芸人のようにポーズを決めて一旦タメると、テンポ良く
「直前、直後、前、前、前」
 と踊り、続けて
「う~ん、確かめ!」
 と言いながら かわいくポーズを決める。それを見て生徒が一斉に笑うが、
「ほら、この『う~ん、確かめ!』大事だぞ~。答えが解っても、必ずもう1回確かめるんだ」
 と真剣な顔で言った後、
「できないヤツは、今の踊りを覚えるまで返さないぞ~」
 とまた笑いを取っている。
 それは、今までに見たどの堀井先生ともリョウとも違っていた。
「堀井ちゃん、面白いね~」
 とアヤが言った。確かに、堀井先生でもリョウでも無く、堀井ちゃん、とでも言った方が似合うかもしれない。
「ホントだね」
 と私も笑う。
 こうして1時限目が過ぎ、すぐ先生達は2時限目に入る。30分の休憩があるのだが、やはり時間通りに終わる授業は少なく、控えている先生は確認テストの採点と次の準備に追われ、当然私達もコピーなどに追われる事になる。
 更にその次はもう昼食な訳で、既に忙しい先生方の手伝いも無く、私達は用意された120人分を超えるお弁当を、何度も往復しながら用意する事になる。
 ただ今日は、受験生以外は昼食はお弁当を持って外で食事をし、そのままアスレチック施設で遊ぶという予定だったので、まだ準備も楽だった。そして写真係のアヤと一緒に、各自でお弁当を持って広場まで移動する事になった。
 私とアヤは、朝のミーティング通りに受験生の食事の準備とゴミ処理は先生方に任せ、堀井ちゃんを含む5名の先生達と一緒に、昼食の場所であるアスレチック施設近くの広場に向かう。
 堀井ちゃんはと言えば、やはり小学生の女子を両手に鈴生りにして移動している。
(まあ、あれだけ面白くて優しければこうなるわよね)
 今更ながら、何故堀井ちゃんがこうも小学生女子にモテるのか解った気がする。
 ただ移動中、不思議な事があった。広場に向かう途中の道で、突然堀井ちゃんが
「ちょっと待っててね。この先を見てくるから」
 と言って、先を急いだ。しばらく待っていると、妙に真剣な顔で戻ってきて、
「この先の道はデコボコしてるから、転んだりしないように気をつけて進んでね」
 と言った。
 そして最前列で1人、辺りを気にしながら歩き始めた。まるで何かを警戒するというか、追っているというか、妙な感じだ。
「堀井先生、大丈夫?」
 小学生の1人が聞くが、堀井ちゃんは
「いやー、久しぶりに外に出て疲れちゃった。夜なら平気なんだけどね」
 と何とか笑っている。
「先生、ドラキュラみたいだね」
 他の小学生がそう言うと、
「実はそうなんだ。先生のお弁当は、みんなだぞ~!」
 とみんなに襲い掛かるフリをする。小学生はみな、キャーキャー、ワーワー言って逃げる。
「ドラキュラは太陽に当たると灰になるんだよ!」
「そうそう。だから灰になったら、白崎さんに集めて持って帰ってもらって。じゃないと午後の授業が……がおー!」
 そう言って襲い掛かり、みんなは逃げながら予定していた広場に走りこむ。
 そうして、先生方4人がそれぞれの生徒のグ

※この小説(ノベル)"アナザー・ワン"の著作権ははるあさんに属します。

この小説(ノベル)の評価
評価項目評価数
合計 0
[広告]

この小説(ノベル)のURLとリンクタグ

この小説(ノベル)のURL:
この小説(ノベル)のリンクタグ:

コメントを書く

登録済みのユーザーは ログイン してください。
登録済みでない方は 新規登録 してください。

新規メンバー登録(無料)
第4回みんなのライトノベルコンテスト「しまのわライトノベルコンテスト」
広島で開催!コスプレをはじめとするジャパンカルチャーイベント「コスカレード」
  • 公式サークル みんなの歌詞
  • 公式サークル みんなの詩(ポエム)
  • 公式サークル みんなの小説(ノベル)
  • 公式サークル みんなのイラスト
  • 公式サークル みんなの写真(フォト)

ランキング

※ここでは2018年5月17日のデイリー表示回数ランキングを表示しています。※同順位者が多すぎる場合はすべてを表示しきれない場合があります。

サポートサイト

J@P