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病院の廊下を歩いていた。よく磨かれた床がまぶしい。
受付で教えてもらった部屋番号のメモを見つめながら、わたしは病室の表示を確認して進んでいく。
手には小さな花束を持って。ピンクのカーネーションとカスミソウのアレンジメントだ。
鴇田くんに合う色だとは思っていないけれど、無難な花束を選んだらこうなった。
お見舞いに行くまでにずいぶん悩んだ。
自転車で起こした事故は、ひょっとしたらわたしのせいではないかとずっと考えていた。
あの学園祭の日、わたしが鴇田くんを動揺させたから、鴇田くんはスピードを弛めずに坂道を降りるような無茶な真似をしたのではないか。
そのことを申し訳なく思い、謝らなくてはいけないと自分に言い聞かせる一方で、本当にわたしのせいだったと鴇田くんから非難されることに怯えてもいた。
こうして思い切って、鴇田くんの入院する病院に足を踏み入れても、わたしは少しも覚悟ができていない。
一歩ずつゆっくり歩きながら、足が次にはすくんで動かなくなるかもしれない、そういう自分と闘いながら歩いている状態だ。
憎まれていたらどうしようと思った。
怪我の状態がどれくらいなのか、よくわからないというのもある。わかっているのは鴇田くんが脚を骨折したということだけだ。
教室では噂ばかりが飛び交って、正確な情報が掴めなかった。
ふいに、少し先の病室から言い争っている声が聞こえてきた。
「そんなことを言っても、退院してもしばらくリハビリに通う必要があるって先生もおっしゃってるんだし」
「そんな無駄な金かける必要はないだろう。さっき見学させてもらったが、あんな装置、俺が廃材使ってチャチャッと庭に作ってやる。それで充分だ」
「あなたは息子の足のこと、心配じゃないの」
「医者なんてな、金儲けしか考えてないんだよ」
中年の男女の声だ。夫婦だろうか。
※この小説(ノベル)"夏の停止線"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。
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