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後夜祭の真っ最中、わたしは学園を抜け出して原野台公園へ行った。
いつも公園に行くよりもはるかに遅い時刻。日没の時間帯になろうとしていた。
植え込みの向こうから、テニスボールの弾む音が聞こえた。はっとする。
鴇田くんに会えないだろうか。そう思っていた気持ちは確かにあったけれど。
ひょっとしたらもう鴇田くんはここへは来ないのではないかと諦めの感情も強かった。
ボールは規則的なリズムで、壁と地面とラケットにぶつかっている。その合間に、走りこむテニスシューズの音も聞こえる。
鴇田くんが壁打ちをしていた。跳ね返ってくるボールを、一人で打ち返している。
公園内の街灯がほんのりともり始めていた。その光を頼って、鴇田くんがボールを追っている。
フォームが少し乱れている。久しぶりだからだろうか。それとも。
わたしは思い切って、鴇田くんの立つ位置まで近づいていく。
後日、教室では勇気が出なくて、話しかけることはできないかもしれない。でもここでならきっと、話をできる。そう思った。
「……鴇田くん。あのね、絵のことだけど」
鴇田くんがボールを追うのをやめて、立ち止まる。
「俺さあ。バカだから、期待しちまったんだ」
わたしが言葉を言うよりも先に、鴇田くんは遮るように独り言のような言葉を羅列していく。
まるで自分に言い聞かせてでもいるように。
「鈴菜が、飽きもせずにあの公園に絵のスケッチしに来て、俺にいろいろ話しかけていくのは、ひょっとして……ひょっとしてって、そんなふうに考えるようになってたみたいだ、いつの間にかさ」
わたしはそのときになって初めて、鴇田くんが辛そうに眉を寄せているのに気づいた。
「俺、展示してあるおまえの絵見て、俺のマウンテンバイクの絵だってわかったから、本当のところけっこう嬉しくてさ」
――喜んでくれていた? やっぱり鴇田くん、展示会を見に来てくれていたんだ。
でもそれならなぜこんな表情をするのだろう。
「だけど、誰の自転車でも構わなかったって、おまえ、美術部の先輩に言ってたし」
「あ……」
あのときのこと、聞いていたの。
鴇田くんは展示ボードの向こう側にでもいたのだろうか。
わたしはあのときの自分の失言を呪った。ただ照れたからごまかしただけだったのに。
言い訳しなくちゃ。そう思う。でもうまい言葉が思いつかない。
※この小説(ノベル)"夏の停止線"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。
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