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4時になり、学園祭が無事に終了時刻になった。
アナウンスで、後夜祭のキャンプファイアーの開始時刻は5時からだという案内が入る。
参加者たちは、展示物や店舗の簡単な片づけをそれまでに済まさなくてはならない。
美術部では大型の備品は明日移動することにして、絵画や飾り付けの紙類だけ壁や展示ボードからはがしていく。
「はい、これ」
部員の一人から、自分の描いた絵を返却してもらった。
あのマウンテンバイクの絵だ。
わたしはその絵を丸めて筒状態にし、輪ゴムで留め、鴇田くんがどこにいるか探し回ることにした。
鴇田くんに渡したかった。わたしが、自分の今持っているベストの力で描いた絵だったから。
鴇田くんとの出会いがなかったら、わたしはこの絵を完成できなかった。そういう意味でも、感謝をこめて、プレゼントしたかった。
学園祭の後片付けでごった返している廊下を、わたしはきょろきょろ見回しながら歩く。
鴇田くんは特に部活に入っていないから、夕方まで学園内にいる義務はない。
とっくに帰ってしまったのだろうか。そもそも、学園祭になど来ないのだろうか。
1階の廊下の窓から校庭を見回す。
うちの学園の後夜祭はそれなりに華やかなので、帰宅部の人でも顔を出すことが多いはずなんだけれど。
そうして気がついた。
斜め前の自転車置き場に、鴇田くんのマウンテンバイクがあった。
あれだけ何回もスケッチしたから、区別は簡単につく。
自転車があるということは、まだ鴇田くんは学園内にいるのだろう。
自転車置き場へ行くには、渡り廊下をぐるりと経由して昇降口に出なければならない。
わたしは人が右往左往する廊下を、急ぎ足ですり抜ける。
すると昇降口で、すいっと鴇田くんが出て行く姿を見かけた。
いた。鴇田くんはどうやら自転車置き場に向かっている。
今から帰るつもりなのかもしれない。わたしは後を追う。
結局自転車置き場まで行くはめになった。チェーン状の鍵を外すのに手間取っているのか、鴇田くんはなかなか顔を上げない。
なんと言って渡そうか。近づきながら、言葉を頭の中で組み立てた。
手にしていた絵を、鴇田くんに差し出す準備をする。
「その絵、マウンテンバイクの絵だろ」
背後から聞き覚えのある声がした。
菫崎くんの声。
わたしはぎょっとして立ち止まる。鴇田くんが自転車の鍵から視線を外して、こちらを見るのがわかった。
菫崎くんが渡り廊下から上履きのまま、こちらに小走りにやってきた。
「よかった、間に合って。さっき美術室行ったら、藍沢は校庭に向かったみたいだって言われちゃってさ。絵をキャンプファイアーで燃やしちまう人も多いって話聞いて、びっくりしたんだよね」
「菫崎くん……」
※この小説(ノベル)"夏の停止線"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。
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