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小説(ノベル)

そうだ! 短編集を書こう! (完結作品)

作:鬼怒 / カテゴリ:ショートショート / 投稿日:'10年2月8日 14:56
ページ数:9ページ / 表示回数:回 / 総合評価:4 / コメント:8件

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廃墟の姫

ある所に病院の廃墟に住んでいる女性が居た。
名前は霞崎文恵(かすみざき ふみえ)

その文恵は不本意ながらホームレスの中でトップに立ち、彼女の住む廃墟はホームレス界の憩いの場となった。
さらに文恵は謎の権力というか金の力でホームレスの地位を上げ、
皆からは『お嬢』と呼び慕われているが本人は嫌がっていた。



「どうしたんだいお嬢? そんな考え込んで」

廃墟の近くにあるラーメン屋で30代前半のホームレス男が隣の席に座って「う~ん」と唸っている文恵に尋ねる。
彼の名は厳一(げんいち)、ごつい名前とは裏腹に気さくな人柄で文恵とも仲が良かった。

「あたしね、学校に行こうと思うんだ」

暫し時が止まる。
そして気付いた様に動き出す。


「学校ぅ!? お嬢まだそんな年頃だったのか!?」

「え、一応まだ16なんだけど……」

暫し時が止まる。
そして気付いた様に動き出す。

「そいつぁ驚いた! 俺はてっきり20代中盤くらいかと思…グハァッ!!」

厳一が科白を言い切る前に文恵のこぶしが厳一の腹へドスンという鈍い音を立てて深々と沈み込んだ。

「全く、ゲンさんが私をそんな目で見ていたとは」

「………………」(ダウン


厳一の目が覚めた時、
二人が注文したラーメンが目前に運ばれてきていて、
文恵は既に美味そうにラーメンを食べていた。


「俺の身に一体何が……?」
厳一は痛む腹を押さえながら搾り出す様な声で聞いた。

「あたしからの愛の鞭」

「…ありがとう」
恍惚の表情。

「このドMが!!」

そう吐き捨てた後に軽く溜息をついた文恵だった。



文恵はいつまでも働かず学校にも行かず他に住む場所を探すでもなくにこの近辺のホームレスの長っぽい事をやっているのはどうかと思っていたのだった。

ちなみに文恵が何故病院の廃墟なんかに居るのかというと
中学を卒業してすぐに一人暮らしすると言って家を出たはいいが、
住む当てもなく流れ着いた先で気まぐれに人助けのつもりで取り壊される予定だったホームレスの住む廃墟を金の力で買い取ってしまっただけなのだ。
更に居心地が良かったため居座っているだけで特に深い事情はない。

文恵の実家は超を付けても良いほど金持ちである。

お金はある、しかし満たされない物もある。
文恵は普通に高校に進学した同級生に対して憧れを持ってしまっているのだ。



ラーメン屋を出た二人は行く当てがなく廃墟(いえ)に帰る。

「「おかえりなさいませお嬢様!!!!」」

廃墟に住むホームレス達の声が響く。

「…………メイド喫茶みたいで気色悪いからやめて!!」

その当然の反論にみんなは笑う、
みんな文恵よりも年上の人ばかりだがそんな事はあまり関係ない、
文恵によって助かった事により文恵に懐いてしまっているのだ。




それから文恵は彩実(あやみ)の部屋へと行った、部屋と言っても病室の中の一室だ。
彩実というのはこの建物に住むホームレスの一人であり、
文恵を除いた中でもっとも若い女性である。
そしてこの建物の中で文恵のことを文恵と呼ぶ唯一の存在だ。


「あやみん、あたし学校に行こうと思うんだけど、大丈夫かな?」

愛称:あやみん

「大丈夫よ、第一何で文恵がそんな心配を?」

「あたしが居ないと みんな何しでかすか分からないじゃん」

「アンタは私達の保護者か……!?」

彩実はあきれた顔をした。
文恵はそれを受けても真面目に答える。

「だって、初めて此処で食事した時、ザリガニと雑草と謎の肉入りのスープが出てきたけど普通あんなの食べない」

「…………まあそうだろうけどねえ」

「そういえばあの謎の肉って何の肉?」

「あれね、、ピッコロ大魔王よりは可愛いもんさ」

「(食べなくて良かった……)」



どうやら大丈夫らしい事が判明し一週間後、文恵は親に電話して了承を得て遠い学校に行く事になった、この近辺にはぞんざいな校則を掲げた様な高校しかなかったのである。
ちなみに編入とかは余裕らしい。

そしてその朝、文恵は出発した。


廃墟にて、


「はぁ、行っちまったか……、何だかんだでお嬢がいねえと寂しくなりそうだ」
厳一が零した。

送り出す時こそ空元気で笑顔を貼り付けていた面々だが今となっては
どんよりと浮かない顔をしたホームレス達は厳一の言葉に共鳴する様に頷いたり肯定したりした。


しかしその無気力感は実は元々の物である。
文恵がこの廃墟を訪れる前は毎日この有様が広がっていたのだ。


「あぁ、ビッグなスターになりてぇ」
「まあ、そんな哀しい事言うなよ…」
「ちょっと気晴らしにゴミ捨て場漁りにいってくる」
「俺は食料とってくるわ、夕食はピッコロ大魔王的な奴でいいよな」
「ザリガニと雑草も忘れないように」
「じゃあ私は公園の水道で水汲んでくる」
「普通に働けよ…………俺は嫌だけど」


そんな虚ろで無気力な声が飛び交う中で新しい日常は動き出すのだった。


おわり





























というわけではない。



その後、夕方になった。

そこには死んだ様に生体が横たわる廃墟というホラーな劇場が出来上がっていた。

もはや生気はない、しかし実は文恵が出て行ってから十数時間しか経っていない。

「…………」


誰も喋る気力すら無い様だった。

その中で一人動き出す、彩実だ。

まだ比較的若い彩実は中年から老人のホームレスを労わって食事を用意しようとしたのだ。

「雑草と、、ザリガニと、、、○○○○(自主規制)の肉、、、」

食材を確認する。

文恵が置いていったガスコンロに火を付け調理を開始する。

ちなみに以前は火おこしからやっていた、原始である。


その悪臭に目を覚ました他のホームレス達が熱を帯びた鰹節の様に蠢く、地獄絵図である。



しかしその地獄絵図の中で扉の無い扉を通過する足音がする。

ホームレス達はそっちの方向を振り向いた。

「……ただいま」

不審な顔でそう言った文恵の事をまるで天使のように見上げるホームレス達の瞳はこれまでに無いほど希望に溢れていた。

「「うおおおおおおおぉぉお嬢ぉぉ!!!!」」

と叫んで人の山が文恵に群がる。

「ちょっと待ってみんな!! え?何が起こってんのこれ!? うわっ変な所触んなこの変態共!!」

その声と共に放たれた強烈な右ストレートが顔面に当たったのは例の如く厳一だった。
倒れこんだその表情はとても幸せそうだったという。



それから暫くは涙を流しながら喜んでいたホームレス達だったが少し一段落した時に彩実が訊いた。

「どうして戻ってきたんだい?」

「いや、あたしはみんなが寂しがる心配ばかりしてたんだけど、いざ離れてみるとあたしの方が寂しくなっちゃって、無理言って戻ってきたんだ」

「それは助かったよ、私達やっぱりアンタが居ないと駄目そうだ」

「…………うん」

文恵は嬉しそうに微笑んだ。


歓声や歌声が飛び交う廃墟で、今まで通り日常は動き出すのだった。






おわり

※この小説(ノベル)"そうだ! 短編集を書こう!"の著作権は鬼怒さんに属します。

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この小説(ノベル)へのコメント (8件)

Techthrone

'10年2月15日 13:26

この小説(ノベル)を評価しました:おもしろい

ドラゴンハンターだけ見ました(時間あったら他のも読みます。)
すごいキャラ設定がおもしろい。
オッサン出てきたとき、吹きましたw
これは良いですね。短く正確に纏められていて。
ただ、1つ僕の個人的な意見としては

100000000000000000000000円
を例えば一千万円などの漢字表記にしたらインパクトあったと思います(桁数が多すぎて、数えていませんがw)

今後にも期待しております。
自分は第二作目を執筆中なので是非よろしくです

では

鬼怒

'10年2月15日 21:45

Techthroneさん、コメント有難うございます。

無茶な設定でも短ければゴリ押しでいけます(笑
長いとぼろぼろとぼろが出てしまいます、文章は苦手なのでOTL

『100000000000000000000000円』については0の数がランダムだったのは言うまでもありません(死
でもやっぱり読みやすさ的にも漢字表記の方が把握しやすいですね。

sugar

'10年2月25日 10:52

この小説(ノベル)を評価しました:おもしろい

とりあえず完結らしいのでコメントw

素晴らしいセンスでした。

僕から君に、私から君に の前後篇はずっとにやにやして読みました。
……学校で。。。

魔王の話は、素直に良いと思ってしまいました。

白魔導師の前後篇は、下手な作家よりよっぽど分かりやすい
バトルシーンだったと思います。

短編集だから良い感じに暴走してて、好きでした。
ではー。

鬼怒

'10年2月28日 13:47

すがたにさん、コメント有難うございます。

>僕から君に、私から君に の前後篇はずっとにやにやして読みました。
……学校で。。。

よりにもよって学校でww
下手すれば僕の公開処刑が始まってしまうw

魔王の話は即興でハートフルストーリーを目指してみました、
書き方があらすじっぽいけども、まあこれはSSという事で(笑

白魔導士の話はたぶん一番ノリノリでした(笑
長編でこのテンションが保てればたぶん楽に書けるんだけどなぁ。

'10年3月10日 14:27

この小説(ノベル)を評価しました:おもしろい

ちょwww「名前がある限り無限ループ」www
この発想はなかったわw

うん、やっぱり魔王の話は感動的だった。うん。

鬼怒

'10年3月12日 20:33

虹風さんコメント有難うございます。

>「名前がある限り無限ループ」

これは名前を考えるのとコピー&ペースト作業で忙しかった(嘘
大まかな流れはノリ以外の何物でもないw

やっぱり、よく見たらこの短編集、魔王だけ浮いている(笑

RIRUKU

'10年3月24日 19:25

この小説(ノベル)を評価しました:共感

僕から君に 私から君に が特にすばらしかったです。

今年一番のニヤニヤ小説ですw
目線を変える事で完結する話、、ここが単に共感しただけではなく、文学的にも素敵だなと感じました。

愛コンタクトを私から君への主題歌にしたいです。。いやまじで。。どう?ww←

鬼怒

'10年3月30日 15:48

リルクさん、コメント有難うございます。

恋愛特化小説は僕にとっては中学生の頃に書いたポエム朗読くらい暴挙でした(笑

>今年一番のニヤニヤ小説ですw

予言w


もしも片方だけの目線だったらバッドエンドの可能性がありますが、手軽にハッピーエンドに変貌する構成にしてみました。
後編が杞憂のおかげでそのまま物語が進むのよりも遥かにニヤニヤ率が上がる結果になりました(死

そしてなんだかもう主題歌でも良い気がしてきた(死

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