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夏の停止線 (執筆中)

作:第1回みんなのライトノベルコンテスト作品 / カテゴリ:みんなのライトノベルコンテスト(フリー) / 投稿日:'08年1月11日 10:53
ページ数:107ページ / 表示回数:1703回 / 総合評価:1 / コメント:1件

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 そのうちに、なぜか眠ってしまったようだ。
 緊張感のない自分に呆れたりもする。
「きちんと目を覚ましてください」
 父の担当医がコーヒーカップを運んできて、ライティングテーブルの上にコトリと置いた。
「はい……すみません」
 そう言いながらもまだわたしはどこか頭が働いていなくて、カップには触れない。
 担当医はそのまま奥のテーブルに戻っていく。
 何か重要な夢を見ていたような気がする。なんだったのだろう。
 いつも夢と現実の境目があいまいで、わたしはその境界線をふらふらと漂っているような気がする。
 こんな大きなお邸に引き取られて生活していること自体が、やはり夢のようなことだから。
 だからわたしはこれは現実ではないかもしれないと、心のどこかでずっと考えているのかもしれなかった。
 ふいに、この担当医はどこから現れたのだろうと思った。
 わたしは廊下に面した扉の間近まで、椅子を引き出して坐っている。この扉は内側に開くのだから、担当医が廊下から入ろうとしても、椅子につかえてしまったはずだ。
 ……なんだろう。何かがおかしい。
 やはりまだわたしは半分眠っているのだろうか。
 ふいに父のベッドよりも奥の壁に、別の扉があることに気がついた。室内の暗さにまぎれて、今まで気づかなかったようだ。
 では担当医は、あちら側のドアから入ってきたのだろう。
 なんという単純なこと。わたしは一人、苦笑いした。
 わたしはライティングテーブルの上の、コーヒーカップを手にした。
「あの、先生。あちらの部屋は、何なのですか」
 この邸の住人であるわたしが尋ねるのもおかしな話だと思いながら、担当医に訊いた。
 こんなに朝早く担当医がこの部屋に出入りしているということは、仮眠室でもあるのだろうと予想する。
「……どの部屋のことでしょう」
 担当医は自分用のコーヒーを煎れるために、視線を落とし、自分の手元だけを見ていた。
「え……? どの部屋って。あの扉の向こう側のことですけど」
「どの扉ですか」
「あの、だから」
 わたしは担当医から視線を外すと、ベッドの向こう側を指し示そうとした。
 けれどその指は途中で行き場を失った。目を凝らしてみても、そこにあるのはただの壁だった。
 暗くてよく見えないわけではなく、最初から何もなかったような、そんなただの壁。
 そんなばかな、と思う。
 けれど実際には何も見えない。扉など存在しない。
「どの扉ですか」
 担当医がもう一度同じことを言い、顔を上げてうっすらと笑った。端正な顔と、低く響く声。わたしは胸の中の何かを掴まれたような気持ちになる。
「あの……勘違いだったみたいです」
「そうですか。まだ眠り足りないのではありませんか」
 心の底が、一瞬だけひやりと冷たくなったように感じた。……わたしは震えている? なぜ。
 これはたぶん、わたしが夢の中に半分浸っているせいだ。わたしはきちんとまだ目覚めていないせいなのだ……。
「コーヒーが冷めてしまいますよ」
 担当医の言葉を聞きながら、わたしは自分の指先を、ぬくもりのかすかに残るコーヒーカップで温め続けていた。


※この小説(ノベル)"夏の停止線"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。

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この小説(ノベル)へのコメント (1件)

Fey

'16年1月4日 21:36

この小説(ノベル)を評価しました:素敵

章のタイトルを拝見すると、すごく好きな項目がいくつか、あります。
嬉しいです。

参考までに、ちょこっと知ってることを・・
気を悪くなさらないでくださいね。木々を描くのは好きなので(というか、直線の建物とか逆に描けないです、池とかまるいものや、木々などの自然を描いたり、ガラスや陶器のポットとかコーヒーカップとかお花とかを描いたりしてきました)

木々の描き方は、メインに描き込む枝をじっくりみて、それを目で追いながら、神にトレースすると描けますよ。ただ、木立の枝などは自分でも参りますが・・^^;そういうときは、美しいところだけピックアップして、つぎはぎにしてよいそうです(わからないように)。

以上、画家が本職の家族に教わったアドヴァイスでした。もしもよかったら、参考にしてみてください

ながながとごめんなさい。。とても、絵を描くところがリアルでよかったです。
ほかのところもゆっくり、読ませていただきたいと思います^^。
エントリ作品、今アップしても構わないのでしょうか?(受賞昨が決まるまえにオンラインにアップすると、エントリの資格がなくなることもありますね)。そういうときはいったん削除するか、非公開にするとよいですよ。今回のアップ、ありがとうございます。

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