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学園祭が近づいてきた。深森先輩は相変わらず美術部に不在の状態が続いている。
展示会用の絵を、そろそろ仕上げなくてはならない。
わたしは迷った末、自転車の絵を出品することに決めた。
原野台公園で、鴇田くんがよく手入れしていたマウンテンバイク。あの場所でスケッチしたものをもとに、水彩画で仕上げることにした。
頭の中で構図を思い浮かべる。
煉瓦風の敷石の上に、片足スタンドのマウンテンバイクがぽつんと置かれている。
首を傾げるように前輪とハンドルが少し傾き、夕暮れの金色の光の中に長い影を落としているぼ……。
こんな感じでどうだろう。いけそうな気がする。
後ろは公園だから、小さく緑の木々を入れる必要はある。でも遠景だから、細かく描き込まなくてもごまかせるような気がする。
将来画家でも目指すのなら、苦手なものも克服して描けるようになった方がいいけれど。
わたしは得意なものだけを楽しみながら描いていければそれでいい。そんな風に思う。
普通の人は、スケッチした場所にイーゼルを立てて、そのまま水彩絵の具を塗っていくのだろう。
けれどわたしはそういう方法は使わなかった。縦にした絵に、色を塗るのは苦手だったから。
わたしはスケッチを元に、別の画用紙に下描きの線画を入れていく。定規で、風景が集約していく点に向けて、何本も補助線を薄く引いていく。
絵としては、たぶん邪道な描き方かもしれない。
そうして出来上がった線画の上に、色をのせていく。無機物が多いので、不規則な影はほとんど必要なかった。
光の方向さえ間違えず、事務的に影を入れてさえいけば、それなりに見栄えのする絵にはなる。
だからわたしは色を塗るときには室内で仕上げることが多い。
その方が直線からはみ出さないように、色をきちんと塗ることができる。
わたしは画家にはなれないなと、改めて苦笑いした。
透明水彩の絵の具は、乾かないうちに隣の面に別の色をのせると、境界線が互いに侵食し合って混ざり合ってしまう。
※この小説(ノベル)"夏の停止線"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。
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