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↑デュアルライフ↓ (完結作品)

作:鬼怒 / カテゴリ:未分類 / 投稿日:'10年1月7日 01:11
ページ数:11ページ / 表示回数:回 / 総合評価:1 / コメント:2件

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第7話 相対性メロス



今、私に流れる時間は明らかに早い。
経って欲しくない時に限って 瞬く間に時間は経つ事を実感する。

そして私はこの体ではどんなにか頑張っても0時までに病院に辿り着けない事を悟った。

しかも飽くまで体はペンギンのぬいぐるみ 人に見られたらいけない、
その制約も当然 重く圧し掛かった。

昼間は小さな町にも人通りは絶えないから
人の目に晒されない様に普通に辿り着く事すら 想像以上に難しい。

そして私は今 白いビニール袋を被って一軒家の屋根の上に居る。
下手すると窒息するから生身ではできないけれども
見つからない為に今はこれが必要だ。


今から屋根の上から 車に飛び乗る。間に合う為にはそれしかない。
ここから見える景色はまるで高いビルから遥かな地を見据えるようだった。 

怖気づき悴む心を振り切り体へと意思を伝道させ、
私は通りかかったトラックに向かって飛んだ。


タイミングと飛ぶ力が合わずに トラックの側面に弾かれ地面に叩き付けられる。
痛みは無い、磨り減るのは精神面と体破壊による体の自由、
そして衝撃による強い眩暈とその余韻を感じる。

目を覚ましまた屋根に登る。
屋根に登るのは人目を気にせずにすむし幸いこの家の壁はザラザラで
手が引っかかってくれるからそこまで長時間はかからないけれども何度も飛べるほどの余裕は無い。
そのプレッシャーも重い。


5度目で乗用車の上に張り付く事に成功。
この段階で1時間もかかってしまったが上手くいけばまだ余裕だ。


ビニール袋を被っている事はここから生きてくる。

ぬいぐるみの姿で動く事は許されない、世界的に一大事になってしまう。
しかしビニール袋を被っていれば多少不自然には見えるが正体がばれずに済む。

そして当然ながら車というのは人が何処かに向かう為の道具だ。
生憎人が同じ場所に向かうほど世の中はつまらなくはできていない。
つまり一つの車に乗っただけではいずれ病院と正反対の方向に向かう可能性しかないのだ。

そこで使うのが信号待ちで車が止まる時のジャンプによる飛び移るという荒業。
スライドパズルのように病院の方向へと向かうのだ。

ここから先は失敗できない、 1秒も気を抜けない。


でも真弓を、いや真波を助ける為にはそれくらいどうという事ない。
しかし辿り着いた時に全て上手くいく打開策なんて無い。
タイムリミット直前で入れ替わるしかない、
それによって私は積み上げてきた全てを失うだろう。
それでも 誰かに何かを失わせるよりは随分マシなもんだ。


境遇的に昔教科書で読んだ『走れメロス』を思い出す。

馬鹿みたいだと思ったけど今なら解ってしまう、 
私は死ぬ為に急ぐ。
死ぬのは 私だ。



しかしなかなか辿り着けない。

病院方面に向かう様な車はあっても 病院に行く車は滅多に無い。

逆方向へ進んだり、振り落とされそうになったりでビニール袋は所々破けてぬいぐるみの外装も度重なる衝撃によって脆くなってきた。

流れる時間に追われる。

車の上から窓うを覗き時計を見る。
タイムリミットはあと30分、病院まではあと5キロ。
その距離がどうしようもなく広く感じられた。

そしてやっぱりこのままでは間に合わない。
よぎってはいけないはずの諦めを消すために
私は首を大きく振る
そして覚めた視界で慎重に辺りを見回した。



救急車がサイレンを撒き散らして後ろから迫っている事に気付く。 

あれだ、あれしかない。
しかし今は走行中、
成功率は低い上にチャンスは一回限り、この車と救急車がすれ違う時に
側面にしがみ付くしかない。

意を決して私は飛んだ。掴まるべき所はバックミラー。
運転席側でない事が幸いだ。

滞空時間、 私の世界はスローモーションになる。
そしてその世界で私は掴み取った。
ぐっと身を引き寄せてしがみ付く。

しかしそれでも安心する暇は無く、
その直後に強い風圧を身に受ける。

この状態で病院まで行かねばならない。


もしかしたら もう間に合わないかもしれない。
それでも絶対に諦められるはずがない。



病院に辿り着いた時、残り時間はあとどれ程だろう。
運ばれる患者と共にこっそりと中に忍び込む。

勝負はここからだ。


病室の場所を確認すると直ちに走る。

外では隠れながらひっそりとしていなければいけないが
夜の病院は人が全く居ないからありがたい。
堂々と全力で風に流させる心配も無く走れる。
普段は恐怖を感じるのだろうがそんなもの感じてるほど暇じゃない。


元の体なら一瞬で辿り着けるのに。
私は内心歯噛みしながら間に合うか間に合わないかの瀬戸際を彷徨う。


そしてついに病室の前に辿り着いた。

ドアが開かない。
この小さな体では開けられない。 
もう直ぐそばまで来ているのに

私はここまで 来たのに。

渾身の力でドアを叩く。


「開け、開け、開け!!
開いてよ!!!!」

開かない。
そして時間は無情。


虚しくなって頭の中が白くなる。
一種の無我の境地とでも言うのだろうか。

そのさなかで一筋、光が見えた。
会話できる距離が思いの他 広かったのを思い出す。
だったら体のチェンジができても全くおかしくないはず。


「替われ!!」

そう強く願った。


その予測は正しかったのだろうか。



私の意識が不意に落t

※この小説(ノベル)"↑デュアルライフ↓"の著作権は鬼怒さんに属します。

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この小説(ノベル)へのコメント (2件)

如月 玲慈

'10年2月6日 00:56

この小説(ノベル)を評価しました:深い

作品、読ませていただきました。
序盤の伏線から、最終回の展開まで、よく考えられていて、とても楽しい作品と思います。
小ネタも満載ですね(笑)
また、かなり壮大な世界観がある様子、いずれか別の物語も読んでみたいと思いました。
                         如月

鬼怒

'10年2月8日 14:23

如月玲慈さん、コメント有難うございます。

無視しても大丈夫な何気ない伏線を張ってみました。
緩やかなコメディーの中に一筋流れる核心を多少荒々しくも綴った物語っです。
小ネタは書いていて面白いです(笑

これの続編として書く予定の物語の構成がありますが、
まずは多少のレベルアップが必要だと感じる今日この頃です。

恐らく僕は人を感動させるような凄い話は書けませんし、
人を圧巻させるようなハイレベルな文章も書けませんが、
このような稚拙な文章をマトモに読んで頂ければそれだけで冥利に尽きます。

しかし少しずつ質を高めて行ければと思いますね。

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