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放課後、原野台公園へ行くと、今日は鴇田くんがテニスボールを追っていた。リズムよく、ボールが弾む音が響いている。
わたしはなんとなく安堵して、いつもどおりベンチに腰掛けようとする。
「なあ、鈴菜」
「えっ?」
突然話しかけられて、わたしは坐る前に鴇田くんの方を見た。
珍しいと思った。いつもは互いに自分の作業に集中していて、会話を優先したりはしないのに。
「おまえ、ボール、打てない?」
「ボールって、テニスの? 無理だよ。ラケット握ったことないもの」
「ちょっとやってみろよ。打ちやすいところに打ってやるから」
鴇田くんがつかつか近づいてきて、マウンテンバイクのハンドルにかかっていたケースから予備のラケットを取り出した。
そのままグリップをわたしの方に向ける。
「そのまま、握手するように握ってみろ」
わたしはスケッチブックをベンチに置くと、おずおずとグリップを右手で握った。
「こう?」
あれ。今までよくわからなかったんだけど、このラケット、木製なんだ。鴇田くんが今持っているのも木製。それでなんとなくレトロな印象だったんだ。
木製のラケットって、なんだか珍しい。
「うん、OKだ。じゃ、いくぞ」
鴇田くんはそのまま下がっていき、コンクリートの壁の前でボールを何度かバウンドさせる。
わたしは驚いて少しベンチから離れた。見よう見まねで、少し腰を落として構えてみる。
あの、勢いのあるサーブを打たれたらどうしよう。絶対に打ち返せない。
わたしがガチガチに緊張しているのが伝わったのか、鴇田くんの口元が笑みを形作った。
「ほらよ」
気の抜けたような、スパコン、という音とともに、鴇田くんはゆるやかなアンダーサーブを打った。
少しほっとしながら、わたしの眼はボールの軌跡を追う。
動かなくても、真正面だった。打てる……かも。
まったくの初心者なのに、いきなりスパーンと打ち返せたら、ひょっとしてわたし、かっこよく見えるかな。鴇田くん、ほめてくれるかな。
ボールがバウンドするのを見てから、わたしは思い切ってラケットを振った。
がつん、と振動が手に伝わる。
ボールはおかしな方向へ飛んでいった。
※この小説(ノベル)"夏の停止線"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。
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