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マリンマーリン (執筆中)

作:第1回みんなのライトノベルコンテスト作品 / カテゴリ:みんなのライトノベルコンテスト(フリー) / 投稿日:'08年1月10日 12:00
ページ数:46ページ / 表示回数:回 / 総合評価:0 / コメント:0件

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第二章 アクアまりん

 日曜日で、お昼時で、太陽は今日も燦々と輝いていて、雲などプロ野球チップスのポテチくらいの存在でしかなく、すこぶる良い天気なのに二枚も三枚も服を着込まなければいけないのは、きっと今が十一月の下旬だからだろう。街は秋風、寂しくなるばかりである。
 俺は駅前のコンビニの前に突っ立ってそんなことを考えながら、ふと思い立ったかのように腕時計を見る。十三時二十分。約束した時間から、もう二十分も経っていることになる。ちなみに俺は集合時間の五分の五分の五分前行動を心がけている人間だ。
「……」
 なにしてるんだろう俺、と思わなくもない。
 本当なら俺は今日、ドッジボール部が練習試合をするために隣の町まで行かなければいけなかった。ケガをしている俺だって、それは例外ではないはずだ。が、
「杉浦三朗太! 貴様は既に神である!」
 あの後、保健室から体育館に直行した俺に、顧問の鬼殺河原(おにごろしがわら)先生がズカズカ足音を立て近付いてきて開口一番そう言った。ジャージに竹刀というベタな組み合わせと名前に恥じない鬼教官っぷりで評判の教師だったが、この時の先生の目にはなぜかジンワリと涙が。
「貴様、昨日屋上で一人の女生徒の命を救ったそうだな!?」
「え……は、はぁ。……いや、サー!」
 救ったというニュアンスにはなにかやるせなさを感じてしまうが、とりあえず俺は敬礼をしておくことにした。教師に対してサーと答えるのはドッジ部の常識である。
「貴様、漢の中の漢ぞ!」
 鬼殺河原先生はその岩石のような顔を涙で歪ませながら、
「クラスメイトのイジメに絶えかね、自殺を決意する女生徒。だが運命はそれを許さぬ。貴様が現れたからだ! 貴様は自分の身の危険など微塵も考えず勇猛果敢に女生徒に接近し、説得し、接吻し、女生徒を抱きかかえ屋上から飛び降り見事着地したそうじゃないか! 貴様の右腕は、その時に負傷したものであろう? 名誉の負傷、尊敬に値する!」
「……ええと、サーありがとうございますサー!」
 意味を呑み込めない俺だったが、その場の流れに従ってお礼を言う。すると鬼殺河原先生が突然うしろを振り向き、普通に練習していたドッジ部員に向かって怒号を上げた。
「貴様ら、なにを素知らぬ顔で練習しとるか! 全員杉浦三朗太に、敬礼ッ!」
「いや、なにもそんな」
「敬ッ礼ッ!!」
 だが鬼殺河原先生の命令は絶対なのだった。怒号を聞いた部員は一瞬で今まで行っていた練習を止め、駆け足で列を作りビシッと音が聞こえてきそうなほどに一斉に敬礼をしてきた。まるで独裁国家の兵隊だ。見ると山田や渡辺までもが敬礼していて、しかも嫌ぁな感じの笑顔を向けてきていて、敬礼をされている立場なのにすごく気分が悪い。
「いやですね、あのですね、」
 俺は必死でなにか喋ろうとするが、うまく言葉が出てこない。本当はそんなに勇猛でもなかったのに、接近はなんとかできたけど説得も接吻もできなかったのに。
「なにも言うな、今は言葉など必要ではない」
 鬼殺河原先生は勝手に話を進めていく。
「貴様の勇気ある行動に敬意を表し、骨折が癒えるまでの部活動の休暇を言い渡す!」
 そして鬼殺河原先生は、いやいらないですいらないですと言おうとしてでも口には出なくて必死に手を振りジェスチャーで伝えようとする俺を見下ろし、入学してからの半年間で一度も目にすることのなかった笑顔でこう言うのだった。
「杉浦三朗太、存分に命を救った女生徒と愛を育むがいい! 補欠のことは気にしなくていいぞ、代役を任せるに値する男を入れておくからな!」
「……」
 冗談じゃなかった。
 だが、気が付くと俺は部の練習試合を見学せずに不破駅前で浜風さんを待っている俺がいる。本当は部活に参加したかった。今だって、浜風さんの命令をキャンセルしたい。
「……」
 それにしても遅いな浜風さん、と俺は思う。自分から日曜の午後一時に駅前に来いと言っておいて、自分が来てないとはどういうことだ。こっちはあの時言われた言葉の意味さえわかってないのに……。あの時聞いた、浜風さんの言葉はいったいなんだったのだろう。
「日曜に説明するの」
 保健室でひとしきり俺に怒った後、やけにスッキリした表情で浜風さんは言った。
「魔法はやっぱ複雑だから、きっと杉浦くんのような一般人の頭じゃ理解できないと思うの。だから詳しいことは、日曜までの、お・た・の・し・み♪」
 浜風さんは一方的に俺にそう言い渡し、じゃあねと手を振りながら保健室からとっとといなくなった。かと思いきやまた保健室に戻ってきて、
「まりん、堅苦しいことは嫌いなの。だから今から杉浦くんのことをサブくんって呼ぶね? サブくんも、まりんのことをまりんって呼んでいいよ?」
「……わかったよ、は・ま・か・ぜ・さんっ!」
 絶対まりんなどと呼ぶものかと心に誓った日だった。
「…………まぁそれは、いいとして」
 と考えている間にも時間は経ち、もう十三時三十分になっている。浜風さんは俺をいつまで待たせる気なのか。まさか約束を忘れているんじゃあ……そう考えていたその時、
「サブくぅ~ん!」
 やっときたか、小さいため息をひとつ吐く。そしておそらくこちらに向かって息を切らしながら走ってきているであろう浜風さんに文句のひとつでも言おうと、大きく息を吸ってから顔を上げまっすぐ浜風さんを見た。
「サブくんサッブくぅ~~ん!」
「……」
 俺が見ているのは、こっちに息を切らしながら走ってきているのは、確かに浜風まりんその人だった。パッチリした瞳も小さな鼻も口元からチラリと覗く八重歯もうしろでユラユラ揺れているポニーテールも浜風さんとよく似てる。けれど、浜風さんが着ているあの服はなんだ? それこそ魔法少女モノのアニメに出てくるような、服というより衣装と表現した方ががが正しい全身ピンクの衣服を身に纏っているではないか。もうすぐ冬になるこの季節にはちょっと肌寒いのではないのかと思えるほどに丈の短いスカート、そのスカートにも肩の部分にも付いているフリフリしたなにか、服と同じピンク色の手袋とロングブーツ。頭頂部にはこれまたピンク色の山高帽。そして走りつつブンブン振り回している右手に持っている、プラスチック製の魔法ステッキと思われるモノ。
 浜風さんに集まる、周囲の人々からの変人を見るかのような冷たい視線。
 俺にも集まる、その視線。
「……」
 取るべき行動はひとつだけだった。
「あ、ちょっとサブくん! なんで逃げるのぉ~!?」
 うしろから浜風さんの声が聞こえるが知ったことではなかい。俺はためらいなく身体を反転させ全力でダッシュしたのだ。息が切れようが肺が悲鳴を上げようがお構いなしだ。なんで俺まで可愛そうな人を見るかのような目で見られなければいけないのか。なんで子供に「お母さぁん、なにあれぇ?」と指を差され、人々はさっきから俺の半径三m以内に近付いてこないのか。こんな仕打ちを受ける覚えは、俺にはない。
「死ね死ね死ね死ねみんな死ね!」
 自分でもなにがなんだかわからなくなりそう叫びながら、俺はコンビニの前を後にし自転車置き場を横切り交番の前では普通に歩きまた走り踏み切りを渡ろうとして電車が来て畜生みんな死ねと思いながら線路沿いに走り浜風さんはどうしたかなとうしろを振り返り、
「こら待てぇぇえええぇぇぇぇぇ! なんで逃げるのサブくぅぅぅぅうううぅぅん!!」
 五mうしろにピッタリ張り付きもの凄い勢いで足を動かしながら俺を追いかけていた。

※この小説(ノベル)"マリンマーリン"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。

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