- 2011/11/22
- [お知らせ]
ランキングデータの調整について
- 2011/9/30
- [お知らせ]
[追記]みんなの詩のランキング不具合について
- 2011/7/26
- [お知らせ]
メッセージ下書き後送信の不具合について
- 2011/1/11
- [お知らせ]
メンテナンス延期のお知らせ
- 2011/1/6
- [お知らせ]
放課後、原野台公園に行ったけれど、鴇田くんの姿はなかった。
わたしは公園内をスケッチする気分になれなくて、学園に戻ることにした。
歩きながら携帯のメールをチェックしたけれど、深森先輩からの返事は何もない。
3日前に、水彩絵の具の件でちょっとした質問をしてみた。もちろん急ぐ内容じゃない。
すぐに返事は書けないと、深森先輩は言っていたのだし。
ただ、わたしが勝手にため息をついているだけだ。
何かが動くといいと、勝手に期待していただけ。
がっかりしている自分を恥じるように、わたしは携帯を制服のポケットに戻した。
ひとまず今日は気分を変えて、学園内の風景をスケッチしてみようと思った。
特別教室のある棟の前の庭には、ほかよりも手入れの行き届いた花壇がある。植物を描くのは苦手だけれど、ここから見た光景は絵になりそうな気がする。
校舎のデザインがそこだけ旧式で、どこか大正ロマン的な雰囲気がして好きだった。
丸いドームになった屋根がかわいらしい。
絵の題材としては申し分ないような気がした。
隅の花壇の煉瓦に腰掛けて、校舎を見上げ、少し下がり気味だったメガネを直す。
――うん、なかなかいいアングルかもしれない。
とりあえず校舎の外観だけ、ラフに線を入れてみる。
右側にいくつかにょきにょきと枝を描いてみる。変な形になった。枝というよりも、蜘蛛の巣みたいだ。
直線で絵を描くのは得意なのに、こういう立体的な曲線は、どう描いたらいいのかがわからない。
特に、手前に伸びている枝。これの構造って、どうなっているんだろう。
色を塗ってごまかすしかないだろうか。
そんなことを考えながら、更にぐちゃぐちゃと木の部分を描き足していく。
よけいにひどくなった。
木はもうだめだから、やめよう。
わたしはスケッチブックを一枚めくり、校舎の窓を描き始めた。直線が交錯する絵は、簡単に見栄えのするスケッチになっていく。
と。ふいにわたしの手が止まった。
――ピアノの音だ。
柔らかな癒される響きを感じる。きれいな音。
わたしは顔を上げる。
どこから聴こえてくるんだろう。あの窓……? 音楽室のようだった。
誰が弾いているのだろう。音楽の先生かな。
でももう放課後だから、生徒かもしれない。
ピアノのことはよくわからないのだけれど、たぶんかなり技術がある人間なのだろうと思えた。
春の日差しを感じる。
流れるような音は、水のせせらぎのようだ。小川の上に落ちる、一枚の花びら。それがゆるやかにくるりと回りながら、川を下っていく。
※この小説(ノベル)"夏の停止線"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。
| この小説(ノベル)のURL: | |
|---|---|
| この小説(ノベル)のリンクタグ: |
※ここでは2012年5月18日のデイリー表示回数ランキングを表示しています。