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夏の停止線 (執筆中)

作:第1回みんなのライトノベルコンテスト作品 / カテゴリ:みんなのライトノベルコンテスト(フリー) / 投稿日:'08年1月11日 10:53
ページ数:107ページ / 表示回数:5994回 / 総合評価:1 / コメント:1件

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6 コーヒー3

 車が断崖を落下する直前に、母が怒鳴った。
「飛び出してっ」
 と。
 わたしは慌ててシートベルトを外し、車のドアを開けて飛び出した。勢いよく地面に叩きつけられ、そのままごろごろと転がっていく。
 紫の奇妙な雲が頭の上を流れていくのが見えた。
 落下した場所は下り坂の坂道だった。少し先にあの裂け目が口を開けている。わたしは地面に爪を立てるようにして、勢いを何とか落とす。
 身体の回転が止まった。崖の縁でわたしはなんとか落下を防ぐことができたようだった。
 すぐ間近に深い深淵が見えて、ぞっとした。
 体中が痛い。身体がうまく動かせない。肋骨にひびが入ったのかもしれない。呼吸するたびに胸が苦しい。
 ふいに、崖の縁に母がかろうじて掴まっていることに気がついた。
 大変だと思った。母を助けなくては。このままでは崖下に落下してしまう。アスファルトの道が火の玉によって抉られてできた、大きな深淵に。
 乗っていた車は既に深淵に呑み込まれてしまった。
 かすかに母の両足のつま先が岩棚らしきでっぱりに触れている。けれどしっかりと足を踏ん張れるほどの大きさがないようだった。
 わたしは身体の痛みに耐えながらずるずると移動し、母の手首を握る。
 崖の縁のとがった岩が、わたしの手を傷つける。痛い。
「おかあさん。おかあさん、しっかりして」
「逃げなさい……鈴菜。わたしはいいから」
「そんなわけにいかないでしょ。おかあさん、わたしの手をしっかり握って」
 母の手がわたしの左手を握り返してこない。わたしは母を落とさないようにいっそう強く母の手首を握るしかない。
 と、岩の端が少し崩れた。母の掌が崖から離れる。勢いでずるっとわたしの身体が半分くらいひきずられた。
 わたしの上半身が崖を少し乗り出して、なんとか止まった。
「鈴菜。手を離しなさい。あなたまで落ちる」
「嫌っ。おかあさん。おかあさんっ」
「鈴菜っ、あなたは死んではだめ。だから放すのよ」
「だめ。誰か……誰か助けてっ」
 わたしは叫ぶ。
 紫の空が怪しく光る。ごうごうと風が吹いている。どこからか黒ずんだ煙が流れてきた。
 嫌な匂いがする。わたしは少し咳き込んだ。
 誰も来ない。奇妙な振動が相変わらず続いていた。

「お嬢さま」
 その声に反応して、わたしは勢いよく身体を起こした。
 とたんに上下感覚を失ってぐらつき、すさまじい音をたてて落下する。
 何が起こったのか、すぐにわからなかった。
 落下した場所に、毛足の長い上質なじゅうたんの感触があった。
「お嬢さま」
 再びわたしを呼ぶ声がした。
 ……ええと、ここは。
 眼をこらして周囲を見る。
 深い色の猫脚のテーブルが、上品なつやを放っている。
 反対側には布張りのソファー。
 わたしはソファーとテーブルの間に、たった今、転がり落ちたらしい。
 声の主がわたしの許に屈み込んで、そっと手を差し伸べた。白い手袋をした指だった。
 わたしはまだはっきりしない頭を少し横に振ったあと、手を差し出した相手をまじまじと凝視した。  端正な顔だちの執事が、真面目な表情を崩さないままわたしをみつめていた。
「浅葱さん……」
「どうぞ、お手を。お嬢さま」
 落ち着きのある低めの声が、わたしの耳の中に響く。身体の奥がずうんと揺れるような感覚を味わう。
 いつ聴いても、魅力的な声だと思う。

※この小説(ノベル)"夏の停止線"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。

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この小説(ノベル)へのコメント (1件)

Fey

'16年1月4日 21:36

この小説(ノベル)を評価しました:素敵

章のタイトルを拝見すると、すごく好きな項目がいくつか、あります。
嬉しいです。

参考までに、ちょこっと知ってることを・・
気を悪くなさらないでくださいね。木々を描くのは好きなので(というか、直線の建物とか逆に描けないです、池とかまるいものや、木々などの自然を描いたり、ガラスや陶器のポットとかコーヒーカップとかお花とかを描いたりしてきました)

木々の描き方は、メインに描き込む枝をじっくりみて、それを目で追いながら、神にトレースすると描けますよ。ただ、木立の枝などは自分でも参りますが・・^^;そういうときは、美しいところだけピックアップして、つぎはぎにしてよいそうです(わからないように)。

以上、画家が本職の家族に教わったアドヴァイスでした。もしもよかったら、参考にしてみてください

ながながとごめんなさい。。とても、絵を描くところがリアルでよかったです。
ほかのところもゆっくり、読ませていただきたいと思います^^。
エントリ作品、今アップしても構わないのでしょうか?(受賞昨が決まるまえにオンラインにアップすると、エントリの資格がなくなることもありますね)。そういうときはいったん削除するか、非公開にするとよいですよ。今回のアップ、ありがとうございます。

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