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話を終えた僕を、千夜子は呆然とした目で見つめていた。……当然だろう。自分が死ぬ話なのだ。自分が成人したその年に、息絶えると言われたのだ。
これが彼女単体の自殺か何かであったなら。事は簡単に変わっただろう。何故なら彼女は実像だから。運命論に従わない、生きている人だったから。
けれど、通り魔の方は――ほとんどの確率で残像だろう。少なくともあの一瞬、『誰かを殺すために存在していた』ような人間が、日々を懸命に生きていたわけがない。残像は運命論に逆らえない。ならば、この残像の世界が、彼女が死ぬポイントにたどり着く場合も、あの男は同じ行動をするだろう。
そう考えると、話してよかったのかもしれない。
そうだ、そう言えば。
彼女は、この時間軸上で『チョコ』、と、残像たちに呼ばれていた。それは、僕の知らない事だった。1度目に時間軸を辿ったときも同じように呼ばれていたのかもしれない。でも、もしそれが違うとするなら。
生きている人間が残像に干渉して、運命論を適用されなくなったのなら。
ならば、彼女には話すべきかも知れない。彼女が生きるために。
そこまで考えて、僕は口をつぐんだ。
もしそれが、生きている人間の干渉によって残像が運命論を逃れると言う事が真実だとして、それを今千夜子に言ったら彼女は一体どんな行動をとるだろう。
相手は通り魔だ。身内でもなんでもない。顔も知らない。そんな人間を探し出して、説き伏せるなどと言う事ができるはずもない。
残像に干渉するとしたら――――――。
いやな想像が背筋を抜け、僕は震えた。
「私、君のこと守って死んだんだね」
しばらく呆然としていた千夜子が、青い瞳を瞼の向こうに隠して、自嘲気味に笑った。
「自己満足も、いい所だよね。そのせいでクーは、ひとりぼっちになって今ここにいて……苦しんでるんだもんね」
僕はその言葉に反論しようとした。
でも、何と言えばいいのか分からなかった。
僕は、僕の身代わりになって死んだ人に、笑ってありがとうと言えるほど強い人間じゃなかった。むしろ、余計な事をしてと思ってしまうような、最低な人間だった。
だからと言って、彼女を責めるのが、それが正解なのか?
そもそもひとりぼっちになったのだって、僕が頼り切っていたのが悪かったのに。ここにいるのだって、僕が目の前で起きた事に耐えられなかっただけなのに。
彼女のあの死は。
自己満足な偽善などではなくて、自己犠牲的な愉悦の為の行動でもなくて、空想への憧れでもなくて。
彼女の死に顔は、ただ愛にあふれていて。
とても、綺麗だった。
だから、反論したかった。
それでもやっぱり、言葉は出てこなかった。
いろんな感情が――哀愁が、郷愁が、憧憬が、謝意が、感謝が、ない交ぜになって、卑小な心の中に蟠る。
「でもクー。私さ、思うんだけど」
千夜子は急に穏やかな笑みを浮かべて、僕の手をとった。
「それね、もしかしたらさ。んーん、きっと」
そのまま僕の手を持ち上げて、自分の頬に当てる。温かで、優しくて、僕は辛くなった。
千夜子が何を言おうとしているのか、分かってしまったから。
先ほど背筋を撫でた想像が、真実なのだと、彼女は伝えようとしていたから。
「もう一度、同じことをしちゃうと思うんだ」
※この小説(ノベル)"青い音符"の著作権は人間とマナブさんに属します。
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深いよ、これは!!
終わり方とか、なんか本当に見事だなぁーーと
しかも、小説に歌詞を使うとか、なんか自分の能力を
最大限にーー という感じがして凄く好感も持てました!!
大切だからこそ、の行動
人は の辺とか
なんか、凄いみごとだなぁーと思いました!!
次回作も期待してますよんっ!!
オトシキ
返事送れて申し訳ないです;
>しかも、小説に歌詞を使うとか、なんか自分の能力を
>最大限にーー という感じがして凄く好感も持てました!!
でもあそこはちょっと苦肉の策だったんですよね;
もう少し上手いやり方できたらよかったのですが。
次回作、がんばります!
がんばってますw;;
……終わりが見えねーw
※ここでは2018年5月17日のデイリー表示回数ランキングを表示しています。※同順位者が多すぎる場合はすべてを表示しきれない場合があります。