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僕と千夜子は、高校生の時から交際の続く、同級生が言う所の「熱々カップル」だった。わざわざ死語を持ってきているのは、まるで昔の和やかな時代の男女交際のようだったからだそうだ。
独りよがりなど全くない、思いの食い違いもない、まるで割れたグラスをあわせたような。
それが、僕らに対する周囲の感想だった。
「食い違い、たくさんあるのにね」
薄い唇を尖らせて、千夜子は言った。
「……あるかな?」
僕は茹りそうな身体を千夜子の手を使ってぶらぶらと扇ぎながら訊いた。
「私が髪形変えても気付かないし」
「髪型がどうであっても、僕は君が君であるなら構わないからね」
そう言うと、千夜子は僕の手を振りほどいて、その手で前髪を慌しく梳いた。
千夜子は照れるとすぐこうなる。分かりやすい。
「手を繋ごうとすると嫌がるし」
「僕は手に汗をかきやすいんだ。汚いだろう?」
人々が行き交う街の脇で、僕たちはそんな風に、仲良く喧嘩しながら、日々を過ごしていた。
20歳。成人。僕らは漸く、人に成った。
それでも、特に変わる事なんてなくて。……それは多分、僕は専門学校生で、千夜子は大学生で、社会に出ていなかったからなのだろうけど。
「ね、何か弾いてよ」
千夜子が急に僕の目を見て言う。
その青い目に、飲み込まれそうになりながら、
「……もうしまっちゃったよ」
嫌そうなポーズをする。
「いいじゃない、ホラホラ」
千夜子が黒いそれを僕に押し付ける。……ギターケースだ。3年の付き合いになるそれは、アスファルトで引き摺ったのか、傷まみれだ。中にはクッションが入っているのでギター自体には問題はないが。
「弾いた所で君以外聴かないじゃないか」
「何、それは私が悪いの?」
「……いや、僕が悪いんだけど」
音楽の専門学校でギターテクニックや、作曲、音楽理論について勉強している以上、僕の目指すべき所はプロミュージシャンだ。だが正直な話、希望は少ない。僕程度の腕前の人間ならそれこそ星の数だけいる。下手をすれば、千夜子のほうが優秀だ。でもまぁ、腕前についてなら努力次第でどうかなるのかもしれない。
だが問題は才能の方だ。
これに関しては生まれ持ったものを磨き上げるしかない。いくら磨き上げても、アルミはアルミな訳で。
今まで僕が作った曲の中で、この街の人間に受け入れられたものは一つもない。学校帰りの学生達が暇つぶしに立ち止まって聴いていく程度。今のところ、僕の音楽にダイヤモンドのような才能は見当たらない。
だから最近は、音楽自体がコンプレックスになり始めていた。
それをどうにか押し留めていたのが、僕の音楽が好きだと言う、千夜子だった。
※この小説(ノベル)"青い音符"の著作権は人間とマナブさんに属します。
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深いよ、これは!!
終わり方とか、なんか本当に見事だなぁーーと
しかも、小説に歌詞を使うとか、なんか自分の能力を
最大限にーー という感じがして凄く好感も持てました!!
大切だからこそ、の行動
人は の辺とか
なんか、凄いみごとだなぁーと思いました!!
次回作も期待してますよんっ!!
オトシキ
返事送れて申し訳ないです;
>しかも、小説に歌詞を使うとか、なんか自分の能力を
>最大限にーー という感じがして凄く好感も持てました!!
でもあそこはちょっと苦肉の策だったんですよね;
もう少し上手いやり方できたらよかったのですが。
次回作、がんばります!
がんばってますw;;
……終わりが見えねーw
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