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三つの言葉が織りなす物語 (執筆中)

作:たっぺい / カテゴリ:ショートショート / 投稿日:'11年9月24日 22:18
ページ数:12ページ / 表示回数:回 / 総合評価:0 / コメント:0件

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【メロン、木の葉隠れ、ランデブー】 ※大織田優の学園記 番外編

 厳しい寒さのつのった大晦日。電車やバスは特別なダイヤ、床屋や自営業の店舗などはシャッターを下ろしている。
 華やかなのは、門松やしめ縄が彩っている玄関先だけ。ほとんどの家庭が年末に追い込まれて大掃除をしているのか、もしくはテレビで年末年始の特番でも観ているのだろう。そのお陰で通りはいつもより悲しい雰囲気を醸し出している。

「あー、めちゃくちゃ寒いやん」
「ああ、そうだな」
 人気のない通りに現れた二つの人影。びゅう、と風が吹く度に道端にたまっている落ち葉が舞い上がる。そのせいもあって、二つの人影がさらに確認しにくくなる。

「ぅ~、ホンマに寒いねんけど。ちょ、おっさん。アンタのその上着貸して」
 モコモコとしたダウンジャケットのポケットに手袋をした手を突っ込み、首にぐるぐると巻いたマフラーに顔を埋めた少女――品口 南(しなぐち みなみ)が並行して歩く人物にせびる。
「いや、普通に考えて無理だろ。俺だって寒いし……てか、今のお前完全防寒じゃねぇか!」
 俺を凍死させるつもりかッ、と多少大袈裟な返事の後に、これまた大袈裟に肩を落としてから片手で顔を覆う。
「それと、何度も言わせるんじゃねぇ。おっさん言うな」
 苛立たしげというよりも言われ慣れたせいか、むしろ呆れながら大織田 優(おおおだ すぐる)が南に言う。
おっさん――南が初対面だった頃の優に対して付けたニックネームだ。かといって優が中年男性であるわけでも老け顔であるわけでもない。純然たる高校男児である。



「はぁ……トラの野郎、なんで客人に買い出し頼むんだよ」
「ホンマや! リンリンとかシャナリーとかも居(お)んのに、なんでうちらやねん」
 つらつらと並べられる友人たちのニックネーム。そのどれもがどこか恨みのこもったものばかりだ。

「あ~あ、なんで年の締めくくりにこんなガキンチョと一緒に寒空の下にいるのかねぇ」
 そう言いながら優はちらっ、と南を横目で一瞥する。
 だが、南がその言葉を聞き逃すわけもなく、
「はァ!? 誰がガキンチョや誰が!」
 南が二つの大きな――怒りでぎらぎらと燃えたぎる――瞳で優を睨みつける。しかし、元々目つきが鋭いわけではないため、睨みつけるといってもあまり恐怖というものがなく、これならカラスに近くで鳴かれる方がまだ恐い。
 すると、小さく鼻で息を吐き、
「まぁええわ。おっさんがそんな事いってられるんも今のうちやからな」
 煮えたぎった熱湯が急にぬるま湯になるかのように南の機嫌があっさり変容した。なぜか得意げな様子だ。
「うちは後何年かしたらボン☆キュッ☆ボンなナイスバディになるんやからな、今のうちに好きなだけ言わせといたるわ」
「……………………はぃ?」
 言っている意味が分からない。
 その一言で全てが片付いた――が、それで終わらせるにもいかないわけで。
「いや、いやいや、いやいやいや。……え? どゆこと?」
 目元をひくひくと小さく痙攣させながら、優は南の謎の暗号の解決に取り組む。
「どゆこと、て……そのまんまの意味やけど?」
「いや、だからね、お前の言うそのまんまがよく分かんねぇの」
 南の体つきは確かに華奢だ。おまけに背も低く、これといって目立つ部分は見受けられない。てか、華奢って言い方だとまだ良い方である。単刀直入に言うと――胸がない。以上。
 そんな人間が数年足らずで理想的な女性の体つきになれるだろうか? まず無理だろう。例外はあるだろうが南を見るとそれはない。同年代の女子と比べるだけでその差は歴然である。



「……もう一度訊こう。何がどうなるって?」
「せやから、ボン☆キュッ☆ボンなナイスバディに」
「ボンってどこが?」
「胸がメロンみたいに」

 その会話の後に優の暫しのシンキングタイム。

 ――胸がメロンみたい?
 ――巨乳?
 ――いやいや、何かの聞き間違えだろう。
 ――メロンみたいな胸?
 ――メロンを胸に?

「虚乳ってことか」
 ごきぃ
 それは驚くべき速さだった。
 トン、と地を蹴り、跳ね上がったかと思ったら、そのまま体をひねらせ、宙で何度か回転するとその勢いのまま優の脇腹目がけて鋭い蹴りを喰らわせた。
「ぉぐぶァあっハぁあ!?」
 優は最初、何が起きたのか分からなかったが、自分が宙に浮いていることを確認すると「あ、ヤバイ」と実感した。蹴飛ばされた先には用意でもしていたのかと思わせるほどぴったりな位置に立つ電柱が一本。かわそうにもかわせないのが悲しい事実。そのまま優の体は鈍い音をたててコンクリートの塊に激突した。



「ありえねぇ……」
 優は腕をさすりながら誰に言うでもなく呟く。
「その言葉、そっくりそのまま返したるわ」
 頬を膨らませた南が不機嫌な態度のまま優を平手で叩く。
「ちょ、ごめっ……マジで悪かったって! だからどんなに弱くても叩くのはやめて。ホントに痛いから」
 じんじんと痛む全身をかばうように肩を抱く。流石にここまで言っている相手にさらに手を挙げるなんてまねは手が引けると思い、南は怒り任せな攻撃の手を止めた。が、まだ納得は仕切ってはいないよだ。
「おっさんが悪いねんで? あんな事言うから」
「ああ、悪かったって。俺も流石に言い過ぎたと思ってる」
 こうでも言っておかないと大きな一撃がもう一発は確実にくる、と察し、渋々ながらも優は自分の負けだと認める。

 そんなぎすぎすした空気の中、優と南とは反対側からおばさんが三人買い物袋を携えて歩いてきた。世間話で華を咲かせており、自分たちとはまるで正反対のおばさん達を二人は無意識のうちに眺めていた。

『あら、若い人が二人で。いいわね~』
『デートかしらね?』
『今夜は二人で年越し? でも、不祥事はダメよ~』

 ほほほほほ~、と初対面の相手にしてはかなりお節介だったおばさん達が嵐のようにさると、優と南の間にはまた沈黙が続いた。

「な、なぁ」
「……何?」
 最初に口を開いたのは優だった。
「さっき寒いから貸せって言ってたよな、俺の上着。俺、なんか暑くなってきたから着てろよ」
「ええわ。……うちも暑ぅなってきた」
「……そうか」
「……そうや」

優と南は頬を沈む夕陽よりも真っ赤に染めあげ、買い出しの為に目指している店を目指し、人なき道を突き進む。
 二人の間にはまたも沈黙が続いた。今度はお互いの顔を見ることもかなわない。

((ああ、もう……早く買い物終わらせて帰りたい……ッ!))

 沈黙の道はまだまだ先が長そうだ。

※この小説(ノベル)"三つの言葉が織りなす物語"の著作権はたっぺいさんに属します。

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