自作の歌詞・詩(ポエム)・小説(ノベル)等のクリエイティブ系コミュニティサイト

ようこそ ゲスト さん

投稿した小説(ノベル)にコメントがもらえるコミュニティ

小説(ノベル)

青い音符 (完結作品)

作:人間とマナブ / カテゴリ:SF / 投稿日:'08年1月15日 02:50
ページ数:26ページ / 表示回数:回 / 総合評価:0 / コメント:2件

[広告]

青を染める

 夕暮れには妙な力がある。特に、夏の夕暮れには。僕はそう信仰していた。境界を甘くする。赤い世界は容易に人の感覚を狂わせて、本能を紐解いて、弄繰り回してしまう。だから僕のような人間は気をつけなければいけなかった。満月の夜、ある男が狼になるというのなら、僕は夕焼けに陰となってしまうから。
 意識して、歩行する。アスファルトを蹴り歩く。心を強く持ち、自らの意思で以って前へと進み出る。残像の世界は余りにも曖昧だ。強い意志を持たぬ限り、すぐに新たな残像へと移されてしまう。
 田舎かと言えばそうではなく、ならば栄えているかと言えばそうでもない。町は橙色に沈み、道沿いに植えられたプラタナスは緩い風にかさかさと揺れた。
「ね、羽元君……んーん、クー」
 隣を歩く千夜子が俯き加減に呟く。学校からの帰り道。克雄、瞬貴、真茶の3人とはついさっきの分かれ道で離れた。
 2人きりで、自転車を引いて歩く。家につく頃には、もうきっと夜だろう。
「どうしても、駄目なの?」
「駄目だよ」
 顔を上げて、僕の目を見て彼女が言い、僕が応えた。単純な、付け込みようのない言葉で。
「でも、さ」
 それでも状況がそれを許さなかった。言葉には一切付け込みようがなくとも、一度間違えてしまったものはどうしようもない。守る手段から既にない。
「私のこと、好きなんでしょ?」
 随分前に、僕は間違えてしまった。許されることではなかったのに。あの時の僕には、それが分かっていなかった。本当なら、今でさえ分かっていなかった。とにかく、過ちは行われた。夕暮れの中で、真摯な目で、思いを伝えた千夜子に、僕は頷いてしまったのだ。
「そう、だった、かな」
 余りにもぎこちなくて歯噛みした。鈍いフリはこの数年間で随分と腕を上げたはずなのに、肝心の所で役に立たない。瞬貴を笑わせるネタにしかならない。
「何で、嫌われようとするの? 何で離れようとするの? 私のことが好きなんでしょ? 私は、君に触れていたいのに」
 千夜子が、自転車を2台挟んだ向こう側で身じろぎした。何を迷ったのか――考えようとして、やめた。
 伝えて、理解できるものなのだろうか。僕にすら余りにも曖昧にもたらされたその論理を、心の離れた人に理解できるのだろうか。0距離に居る僕が発した理論を、0距離に居る僕が理解できないのに。
「今日、音楽の授業の時、皆適当に聞き流してるのに君だけ真剣に聞いてくれて嬉しかったんだよ?」
 ……気付かれていたのか。次からは気をつけなければ。
「お弁当だって、わざわざ遠出してサフラン買ってきたんだよ? 長い髪が好きって言うから伸ばしたんだよ? 友達と離れたくないって言うから二人っきりでお弁当食べたいの我慢してるんだよ? 私服も、パジャマも、君の好みに合わせてるのに。早く――」
 尻すぼみに消えていく呟きを、しかし僕の耳は不都合な事に全て拾ってしまった。
 そして更に不都合な事に、僕の口は動き始めてしまった。
「……恋が実るのと、潰えるのと、どちらが幸せだと、君は――千夜子は、思う?」
 千夜子、と。あえて強調した。
「実る方に、決まってるでしょ」
「そう、だね。普通はそうなのかもしれない。でも」
 僕は違うんだよ、と。言った声が自分に聞こえなかった。声は頭蓋を揺らす事すらできなかったらしい。けれど、千夜子は僕が言おうとした事を憶測したようだった。
「何で? 分からないよ」
「恋愛、はね」
 そんな単語を口にする事自体苦痛で、僕は顔を顰めた。


※この小説(ノベル)"青い音符"の著作権は人間とマナブさんに属します。

この小説(ノベル)の評価
評価項目評価数
合計 0
[広告]

この小説(ノベル)のURLとリンクタグ

この小説(ノベル)のURL:
この小説(ノベル)のリンクタグ:

この小説(ノベル)へのコメント (2件)

莉遠

'08年2月12日 00:49

深いよ、これは!!

終わり方とか、なんか本当に見事だなぁーーと
しかも、小説に歌詞を使うとか、なんか自分の能力を
最大限にーー という感じがして凄く好感も持てました!!
大切だからこそ、の行動
人は  の辺とか
なんか、凄いみごとだなぁーと思いました!!
次回作も期待してますよんっ!!

人間とマナブ

'08年3月1日 22:13

オトシキ

返事送れて申し訳ないです;

>しかも、小説に歌詞を使うとか、なんか自分の能力を
>最大限にーー という感じがして凄く好感も持てました!!
でもあそこはちょっと苦肉の策だったんですよね;
もう少し上手いやり方できたらよかったのですが。

次回作、がんばります!
がんばってますw;;

……終わりが見えねーw

コメントを書く

登録済みのユーザーは ログイン してください。
登録済みでない方は 新規登録 してください。

新規メンバー登録(無料)
第4回みんなのライトノベルコンテスト「しまのわライトノベルコンテスト」
広島で開催!コスプレをはじめとするジャパンカルチャーイベント「コスカレード」
  • 公式サークル みんなの歌詞
  • 公式サークル みんなの詩(ポエム)
  • 公式サークル みんなの小説(ノベル)
  • 公式サークル みんなのイラスト
  • 公式サークル みんなの写真(フォト)

ランキング

※ここでは2018年5月17日のデイリー表示回数ランキングを表示しています。※同順位者が多すぎる場合はすべてを表示しきれない場合があります。

サポートサイト

J@P