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夏の停止線 (執筆中)

作:第1回みんなのライトノベルコンテスト作品 / カテゴリ:みんなのライトノベルコンテスト(フリー) / 投稿日:'08年1月11日 10:53
ページ数:107ページ / 表示回数:58023回 / 総合評価:0 / コメント:0件

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2 コーヒー1

「藍沢鈴菜さま。到着しましたので、起きていただけますか」
 低い声を耳元に感じて、はっとする。
 あわてて顔を上げ、周囲を見回した。車は大きな洋館の玄関脇に横付けになっていた。
 いけない、いつの間にか後部座席で眠ってしまっていたようだ。
 後部座席?
 母の車ではない。もっと高級な自動車だ。皮張りの手触りだし、車内が広い。
 これ、誰の車……?
 頭がなんだかぼうっとしている。
 奇妙な夢を見ていた気がする。
 紫に歪む空と、揺れる大地、降り注ぐ火の玉。まるでこの世の終わりのような。
 わたしの額に汗がうっすらたまっているのがわかった。
 夢の中に母が出てきたような気がするけれど、そのあたりはよく覚えていない。
 ただ、心臓を掴まれるような恐怖が、形のないままわたしの内部に残っている。
 夢なのに、少し手が震えている。恥ずかしいと思った。
 わたしは深呼吸して呼吸を整えた。
 スーツ姿の男性が車の扉を開けて、わたしに外に出るようにと促している。
「ごめんなさい」
 わたしはスカートの裾を直しながら、車から降り立つ。
 ええと、ここはどこだっただろう。
 眠っていたせいで、記憶があいまいになっている。
 わたしはずれたメガネの位置を直す。焦点が先ほどよりもはっきり合う。
「桜本家に到着いたしました」
「あ、はい。ありがとうございます、弁護士さん」
 弁護士。そうだ、目の前にいるこの男の人は、弁護士さんだった。
 母の葬儀のあと、わたしの父親の件で訪ねてきた人。
 この街の高台に瀟洒な洋館が建っていたことは知っていたけれど、そこがわたしと関わりのある場所だなんて、今まで考えたこともなかった。
 もちろん母も何も教えてくれなかった。
 弁護士さんは慣れた様子でわたしを邸内に案内する。
 数名のメイドさんが玄関の脇に並んでいて、わたしの姿に向かってお辞儀をした。
 ……信じられない。本物のメイドさんがいるお邸って、日本国内に存在したんだ。
 靴のまま入っていいのだろうか。
 そんなことを考えながら、おずおずと柔らかいじゅうたんを踏みしめながら足を進める。

※この小説(ノベル)"夏の停止線"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。

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