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姉と私 (執筆中)

作:u-my / カテゴリ:ショートショート / 投稿日:'09年12月28日 18:31
ページ数:4ページ / 表示回数:回 / 総合評価:1 / コメント:4件

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マネキン

「ねぇ、しぃちゃん」
「なに?」

晩酌をしているなか、姉が口を開いた。

「わたし、マネキンになりたい」
「……え?」

言っている意味が分からなかったので、聞き返す。

「マネキンって、あのマネキン?」
「そう。そのマネキンよ」

マネキンかぁ、とぼんやり思いながら、グラスを空ける。
すかさず、姉がボトルを差し出して中身を注いでくれた。

「マネキンは、動けないから不便よ」
「でも、ずっと若いままでいられるじゃなぁい?」

ふふっ、と少し楽しそうに笑って言った。
ああ、そういうことかとほんの少し理解した。

「若いままのが、いいの?」
「そりゃそうよ」

即答された。

「でも、私たちまだまだ若いじゃないの」
「やっだぁしぃちゃん! 女なんて30過ぎたらどんどんオバサンになっていくんだから!」

そんなことないと思うけど、と喉まで出かけた言葉は言わないでおいた。
姉は、今でもじゅうぶん実年齢より若く見えるし、綺麗だと私は思う。

「あぁ、いいなぁマネキン」

そう言って、姉もグラスを空けた。
注いであげようとしたら、一歩早く姉が自分で注いでしまった。

「そんなに若いのがいいの?」
「うん。いい」
「私は、早く大人になりたいわ」
「もう大人じゃない」
「年だけ取ったって、大人とは呼べないわよ」

少し言葉を荒げながら、私は酒を一気に飲み干した。
そして自分で注いで、また一口を含む。

「もうちょっと若ければねぇ、って」
「ん?」
「言われたの」
「誰に?」
「男の人」
「年上?」
「年下」
「…好きだったの?」

そう言うと、姉は一瞬固まったあと、うん、と小さく頷いた。

「言ったの」
「?」
「好きなの、って」
「うん」
「そしたら、年上はちょっと、って」
「ちょっと」
「ちょっと、なんだって」

何が「ちょっと」なんだろう。
見たこともないその男に、私は少し苛立った。

「だから、マネキンなの」
「マネキン」
「マネキン、年取らないもの」
「…そうね」

マネキンなんてものになって、姉はどうするんだろう。
何も食べずに、何も見えずに、どこにも行けずに。
着たいものも着られないし、住みたいところにも住めない。
そんなものになって、どうするんだろう。
そんな男の言葉に乗せられて。
「ちょっと」なんて言いはぐらかす男にふられたくらいで。

「私は」
「うん?」

言いかけて、しばらく言葉が出てこなかった。たぶん酔いが回ったのだと思う。
それでも姉は、何も言わずに私の次の言葉を待った。

「姉さんには、そのままでいてもらいたいわ」
「このまま、オバサンになっていくのに?」
「それでもいいじゃない」
「……」
「いいじゃない」

そんな男のせいで、姉がただの人形になってしまうだなんて。
なんだかとても、許せない気がした。

「こうして、お酒も飲めなくなるじゃない」
「…それもそうね」

言うと、姉はグラスを空にして突っ伏した。
しばらく独りで飲んでいると、やがて静かな寝息が聞こえてきた。
毛布をかけてあげた後、一人での晩酌をしばし続けた。

夜は、静かに更けていった。




※この小説(ノベル)"姉と私"の著作権はu-myさんに属します。

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この小説(ノベル)へのコメント (4件)

mAsAo

'10年4月16日 00:47

この小説(ノベル)を評価しました:深い

だいぶ前からこのノベルに投稿しようと思ってました。
受験が終わるまでは登録してもあんまり参加できそうになかったので、こんなに遅くなってしまいました。スミマセン。

三つとも不思議なストーリーでなんとも言えないんですが、なぜか心にこびりつく様に長いこと気になってたんです。
日常と空想がなぜか自然に混じり合っていて、読んでいると心が静かになる、というかノベルの世界観が寸分足りとも完結に創られているように感じました。
だいぶ前の投稿に対してですが、コメント見てもらえたら光栄です。

u-my

'10年4月16日 18:21

こんにちわ。受験勉強お疲れさまでした。
前から気にかけてくださったようで、ありがとうございます。

非日常な出来事が、世間で当たり前な光景になったらいいなあ、という妄想の産物ですね。(笑
「何故か気になる」ものを作れたらなと日々思っているので、そう言っていただけるのは本当に嬉しいことです。ありがとうございます!

これは短編を気が向いたときに書いてつらつらupしていこう、というつもりで書いているものなので、今後も増えていく予定です。
また機会があったら気にかけてくださると嬉しいです。
コメントありがとうございました!

mAsAo

'11年6月13日 02:30

更新されてたんだ!

ノベルは最初の投稿日しか表示されないので覗かないと分からないんですよ〜
いっそ連絡くださいω‐笑


姉と私、この微妙な距離感と絆みたいなのが男やってると分からないので羨ましくも感じました。(姉はいますが姉と弟はまた違います)


u-myさんは人やモノの形と心の間にある摩擦みたいなものを伝えようとしているのでしょうか。鹿や手の話にも感じたことだけど。
あるべき形、理想の形、みたいなのが現実には存在していて、知らず知らずに心や人との繋がりまでも浸食されかねない、みたいなことを言っているような気もします。
って、つらつら書いていることが実は感想でなくて自分が日頃思っていることだったりもして(笑)


>そんな男のせいで、姉がただの人形になってしまうだなんて。
なんだかとても、許せない気がした。

ここがなんとなく象徴的に感じました。
そんな男のせいで、何気ない一言で姉がただの人形になってしまう。
なんだか妙にリアルでぎゅっと締め付けられます。
本当に些細な一言で自らのあり方や形を不自然に歪めてしまう人が実際にいるから。
ラスト、姉がマネキンにならずにすんでよかったです。
私は姉の安定剤みたいですね♪

u-my

'11年6月16日 23:34

すみません、ひっそりこっそり、追加してました。(笑
この仕様、ショートショートには向かないんですね・・・悲しい。。。

「伝える」どうこうより、ただ書きたいものを書いて公開しているだけなのですが。。。(^^;
非日常的な物事を、日常の中に出来るかぎり溶け込ませて表現したい、というコンセプトで今は書いております。だってただの作り話だから!
少し不思議で、不気味で、だけど人物が思うことは普段の私たちと同じ。みたいな?
ちょっと言葉にできないんですが、不思議なお話として読んでくれればそれでいいです。
「マネキン」に至っては、ふつうのお話になってしまったので、自分でもちょっとびっくりしてます。ふつうのお話書ける! と大発見でございました。

ああ。
ちなみに、わたしに姉はおりません。(笑

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