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わたしたちは小走りに、国道を西に向かっていた。
鴇田くんはマウンテンバイクにまたがって、右足だけ地面につくような状態でこぎながら、前に進んでいる。
「おい。どうしてこっちに向かうんだ。西は安全なのか」
深森先輩……兄さんは、足を止めないままちらっと鴇田くんの方を見た。
「いや。西もたぶん崩壊を始めている。崩壊を止めることはできないと思うよ。鈴菜がこの世界の矛盾に気づいてしまった以上は」
「わたしのせい……? どうしよう。どうしたらいいの」
「リセットできないと菫崎くんは言っていたからね。だからどうにもならないよ。たぶん桜本の邸に侵入して、眠っていた父の身体を壊したんだと思う」
「壊した……? それって」
ゾクリと背筋が寒くなった。
「文字通り、壊したんだと思うよ。でもそれはまだ死ではない。こちら側の世界で死んでも、『あちら側』では、まだ生きている。こちら側の端末が壊されて、コントロールできない状態になったと考えればいいよ。でもたぶんこちら側の死は向こう側の生命を脅かす」
鴇田くんが納得できていないような顔をする。
「俺、全然理解できない。だいたい、こちらとかあちらって、何だ。深森さん。あんたが、鈴菜の兄貴って、そもそもどういうことなんだ」
「桜本の現当主、桜本浅葱が俺と鈴菜の本当の父親なんだ。母親は違うけどね」
わたしは早足で歩くのに疲れ果ててしまっていて、呼吸が苦しくてあまりしゃべることができない。黙って二人の話を聞いている。
「桜本の血筋には特殊な力を発動させる可能性が秘められている。この『こちら側』の世界は、その『力』で桜本浅葱が作ったんだ」
「世界を作るか」
このような、周囲が崩壊し始めている状態を見てしまうと、もう、信じたくなくても信じるしかない、鴇田くんの目はそう言っているような気がした。
「……で、この世界を作ったのは何のためなんだ」
※この小説(ノベル)"夏の停止線"の著作権は第1回みんなのライトノベルコンテスト作品さんに属します。
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